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親と子の栄冠ドラマ -中学入試体験記-

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晴れた空、子どもはいつ伸びるかわからない。

  • 年度:2024
  • 性別:男子
  • 執筆者:
我が家は、共働き。長男も次男も学童に3年生まで通った。進級を控えた1月、それぞれに学童がない放課後の過ごし方を相談する。習い事や塾通いを増やす提案をすると、長男は書道教室とサッカークラブに通うことにした。元々、習い事を含め週3日を大人のいるところに居場所を用意した。

次男が2年生から3年生に進級するタイミングで、コロナ禍に見舞われた。休校中は、兄と自宅で過ごしながら、学校からの課題や家庭で購入したドリルに取り組んだ。
お留守番ができる自信が否応なくもてたので、学童に通うのをやめた。兄と同様習い事や塾について提案してもよかったが、世間がまだうまく機能しているとはいえず、既存の習い事以外に屋外実施のサッカークラブのみ追加して通い始めた。

結局、次男に塾通いをどうしたいか尋ねたのは4年生の2学期、兄は中学3年生で高校受験に向けて四苦八苦する姿をちょうど目の当たりにしているころに重なった。

「大学まである中学に行きたい。」

全く予想していなかった。兄の様子を見て、自分なりに考えての発言だったらしい。ちょうど、12月の日能研全国テストに申し込みできる時期だったので、試しに受けてみることにした。日能研とのご縁のキッカケとなった。

しばらくして、志望校を3つ書いて提出しなくてはならないという場面があった。本人の頭の中には、まだ第一志望校は、・・・・・・うーむ、としばし悩んで、ふと頭に思い浮かんだ学校名を書いて提出したという。憧れた志望校とは別に、実質的な第一志望校となるとは思いもよらなかった。

入試本番当日が近づくにつれて、模試の偏差値はじわじわと下がっていった。12月末の最後の模試の偏差値は、本人史上最低値を更新した。そんな中、1月の受験は点数開示のある学校を選んだ。
幸いにも合格したが、合格基準点スレスレだった。それでも、合格は合格。続けて、12月に受けていた漢字検定5級も合格した。
うん、いい流れ。

1月中旬、来週あたりから学校を休んで備えようとしていた矢先に、塾からスマホに着信があった。体調が悪く微熱があるとのこと。あまり熱は出さない次男。職場から直接、迎えに行った。次の日、38度、39度と熱が上がっていった。月曜日の受診予約を済ませ、父親と受診できるようにと準備して。
月曜日の朝、出勤まであと30分。スマホに着信があった。北の大地にある、実家からだった。

父の訃報だった。

とにかく一度出勤し、休暇が何日まで取れるか確認。替えのきかない会議をこなしながら、合間にスマホで飛行機のチケットを予約。会議の途中で、次男のインフルエンザが確定。あら、学校にも連絡しなきゃと、アプリをさらに開く。次男と父親を自宅に残し、長男を連れて実家へ飛んだ。
実家にて、葬儀やら役所の手続きやら、相続に関する確認やらひととおりを終えて、やっと少し気が緩んだ。

頭が痛いな。
ヤバっと思い、高齢の母と距離をとり、食事も別にして対策。熱が上がって、約20年ぶりにかかりつけの耳鼻科を受診した。旧姓でカルテのデータが残っていた。
「コロナがバッチリ出たよ、どっかでもらったんだねー。」
相変わらず、サバサバした女医さんの言葉に、苦笑。てっきり次男のインフルエンザかと思っていたが、それでもないし。
母に感染させてはまずいからと、すぐに翌日の飛行機のチケット予約を確定させた。自宅には、インフルエンザの受験生が待っているが、こればかりはどうしようもない。

次男が感染することは無かったが、行動を共にしていた長男がバッチリ発症してしまった。本番まで、あと2週間を切っていた。
なんとか、次男の体調は保ちつつ、本番当日を迎えることができた。

2月1日、午前と午後それぞれ別の学校を受験した。結果は、即日オンライン発表で、両方とも不合格。
これには親子共々動揺した。苦手の科目も、空欄なく記入できており、手ごたえは悪くなかったので、なおさら。
解答速報のデータを見ながら確認しても、正答しているはずだった。可能性があるのは、乱雑な文字で正答と判断されていないか、単位の書き方等の観点で誤答となったか。
それはあり得る。
次男と解答の仕方、解答欄に書き写す時は、落ち着いて丁寧に
「置いてくる」
と、意識させた。

2月2日、午前に第一志望校と、午後に本人の希望する部活動のある中高一貫校を受験した。午後の学校は、偏差値的にだいぶ低めに設定したつもりが、結果的にはほぼジャストラインになってしまった。
結果は、即日オンライン発表だったが、二校とも明日の朝に確認することとした。親だけ確認する事もできたが、あえて本人と一緒に受け止めようと思った。

2月3日、朝から合否確認。本人の希望で、まずは午後の学校からホームページを開いた。めずらしく、画面に番号のみ羅列されたPDFだ。
スマホの画面を、先に次男に向けて確認させる。

「あ、ある。番号〇〇番、ある。」
どれどれ、と確認した。確かに次男の番号だ。ホッとした。では次に、と第一志望校の方は、ミライコンパス。やはり、背景色はグレーだった。
「とりあえず行き先は確保できたね」と励まして、午前の都立と午後の1日に受けた学校を再度受験した。
例の、うーむと悩んで書いた、あの学校だ。

帰宅後、今日は結果次第で明日からの出願をどうするか、決めなくてはならない。結果は即日確認せざるを得ないわけだ。次男も気になるのか、まだ起きている。
今回の発表も、ミライコンパス。入力を終えると、背景色は淡いピンク。白のグラデーションで花びらまであしらわれていた。
「あ、受かってると背景の色、ちがうんだね。」
やっぱりそこは気になるよねー、なんて言いながら。1月受験を含めて3校に合格でき、うち1校は次男の希望どおり大学付属校へとご縁を繋ぐことができた。
都立の結果は、数日先になる。明日の受験は取りやめて、結果待ちをすることにした。

我が家の初めての中学受験が、終わった。

この投稿を書き始めた時は、きっとお話はここでおしまい、と思っていた。うーむ、と困って、思いつきで書いた学校に入学して、伏線回収ってオチであろうと思って書き始めたわけで。

うれしい誤算というか、なんというか、続きがあった。
都立の結果は、オンラインと校内掲示の二本立てだった。平日の9時発表なので、あらかじめ上司にこう伝えた。
番号があれば、時間休暇で中抜けさせてください。無かったら、そのままいますので。

いつものように、まずは朝イチでこなすべき仕事を片付ける。ふと携帯に目をやると、9:02分の表示が見えた。お、時間だぞっと、イスに浅く腰掛けて携帯を手にとった。QRコードをよみこんで、専用サイトで受験番号とあらかじめ指定されたパスワードを入力する。
確定ボタンを押す前に、自然と両手を合わせて拝んでいる自分に、自分で少し驚いた。
それではと、入力を確定させる。画面には淡いピンクの背景に、やや濃い桃色と白の花びらに、赤い文字が表示された。
思わずスクショしたが、もう一度QRコードの読み取りからやり直した。結果は同じ。

受かってる!!

スクショを父親へ送って、上着と鞄を持ち、戸締りとドアに表示。"午前中のうちに戻ります"っと。何時までにとは、流石に書けなかった。
上司に報告、番号あったので出掛けます。なるべく早く戻りますね、と伝えると
「何時ごろ戻れそう?」
「いやぁ、こればっかりは手続きの混雑次第だと思うので。バスがなければタクシーを使って、なる早で戻りますから」としか言いようがなかった。

想定よりも、スムーズに学校には到着できた。掲示板の前も人はまばらで、手続きの窓口にも数人程度。所定の手続きを済ませて、掲示板は、引きで写真をとった。
すぐに職場へ引き返した。今日は人手が少ないから、早く戻らなくてはとの思いが勝っていた。
もう少し、ゆっくり喜びたかったなぁ。

職場へ戻る道すがら、改めて我が子の?伸びるタイミング?は唐突に訪れたものだ、と思いを馳せていた。1日目は確かに、最低偏差値のままだったから落ちたのだろう。
そこからの伸びは、偏差値に置き換えると約10ポイント近くになる。

実際に"不合格"宣告されることは、確かにものすごくインパクトがあった。そのパワーを、どう活かせたかがその後の伸びに繋がったのだろう。
我が子の場合は、確かに回答の数字は合っていた。抜き出した5文字も、漢字の書き・読みの問題も間違えていなかった。正答ができた自信がもてたからこそ、今度は点数をつけてもらえる回答を"置いてくる"んだ、と心を入れ替え実際の行動変容に繋がったに違いないと思わずにはいられない。

あんなに頑張った夏休みに、思うようには伸びなかった。
直前の模試まで、偏差値は落ち続けた。
本番直前にインフルエンザにかかった上に、母は側で看病が出来ず、さらにコロナに罹って帰ってくるし。
よくぞここまで、良くないことが重なったものだ。

ただ、子どもは常に成長し続けている。本番前日も、当日答案を解きながらも、結果に落胆しながらも。
諦めずに、我が子を信じて寄り添って、より良い姿勢で次に立ち向かえるよう励まして。簡単ではないし、正解もないけれど、親としてやれることをできる範囲でMAXやったつもり。あとは、ただ祈るのみだった。

ただ一つ、入試本番の3日間。もったいないくらいの晴天に恵まれた。
次男の学年は、遠足、卒園式、運動会、社会科見学、宿泊学習、移動教室。悉く、雨が降った。行事という行事に、雨での延期や内容変更、中止が絡んだ。
でも、今回の入試は雨や雪は降ってこなかった。
「卒業式は、きっと雨だね」
敢えて言わなかったのに、次男が言葉にしてしまった。きっと、ピンク色の花びらを散らす雨になるのだろう。
今後も寄せられたドラマを、各カテゴリーに随時アップしていきます。
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