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親と子の栄冠ドラマ -中学入試体験記-

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「1ミリでも、入っていれば、ゴールだ!」

  • 年度:2023
  • 性別:女子
  • 執筆者:
「最後まであきらめなくてよかった」

ありきたりですが、「中学受験」という経験を親子で乗り越えた後の私自身の心中です。
わが子の場合、ちょうど4年生に入ってから何度か不登校を繰り返しており、学校の教室にも、塾の教室にも通えない日が何日も続いておりました。コロナのおかげで、オンライン授業が受けられる体制がありましたが、自宅で授業を受けても内容についていけず、テストもまともに受けられません。正直言って、「受験するしない以前の状態」が2年近く続いたまま、6年生の夏が過ぎていきました。

夏休み明けに個人面談をしていただいた時、あるアドバイスを頂いたことがきっかけで、状況を好転させることができたのです。実は、それまで、「うちの子のような成績が振るわない生徒は、先生も苦慮されているに違ない」と、塾の先生方に対して何となく後ろめたい気持ちを持っておりました。それが、面談を通して、「どんな成績の子どもでも、その子に合わせて『なんとか合格を勝ち取ってほしい』という思いで接してくださっているのだ」と感じ取ることができ、私自身が親として、そのサポートを受け取る気持ちになることができたのです。

面談時のアドバイスをもとに、それまで視野に入れていなかった学校に見学に行くことにしました。私自身が土曜日も含めてフルタイムで働いているため、一般の学校見学や説明会に全く参加できずにいました。思い切って「個人的な見学はできませんでしょうか?」と問い合わせたところ、学校側からご快諾いただけたのです。在校生の授業風景や、校内を隅々まで案内していただいたおかげか、子どもが初めて「あの学校に行きたい!」と自分から言ってきたのです。

塾の教室に行けない、テストも受けられないと言うたびに、「だったら受験をやめてもいいんだよ」「無理はしなくてもいいんだからね」と伝えていました。でも、そのたびに本人は「受験はする!」と言うのです。おそらく、この学校見学まで、本人の中でも「何のために受験をするのか?」「何のために私立の学校に行くのか?」が明確になっていなかったのだと思われます。

何かにトライする時、最も重要なのは「何のために」それを行うのかの設定です。学校見学を機に、「何のために」が明確になったのは、子どもだけではありませんでした。私自身も、「特に偏差値が高い学校を受けるわけではないのに、わざわざ受験するのは何のためなのか?」を、ずっと自問自答している状態でした。それが、実際の学校の様子を拝見したり、教頭先生から教育理念を伺ったり、在校生のお話を伺うことで、「偏差値では語れない、中学受験をする意味」が明確になりました。

親子で、「何のために」を明確にし、やっとスタートラインに立てたのは、6年生の10月に入ってからでした。周りの生徒さんからは、大幅に遅れに遅れたスタートです。頑張ると決めてからも、中々結果(点数)には結びつかず、本人的にも「こんなに頑張ってるのに、何でよ~!!」と悔しがっている様子が何度もありました。12月に入っても、点数の伸びは思わしくありませんでした。「今はまだ、根を張っている時期。表には見えなくても、着実に力はついてきているはず」そう思いながらも、「間に合うのか?」という焦りは、正直ありました。私自身が、気持ち的にくじけそうになった時に、何度も胸の内でつぶやいた言葉がこれです。

「1ミリでも、入っていれば、ゴールだ!」
これは、サッカーのワールドカップで、日本チームを勝利に導いた決定的瞬間をとらえた写真を見た時に、飛び込んできた言葉です。キックを繰り出した選手が、「無理だと思って足を蹴りださなければあの1点は入らなかった。判定が出るまでは、『絶対アウトだよな』って言ってましたけどね」と語っているのを聞いて、「親として、最後の最後までできるサポートをしよう」と決めたのです。

合格に導くために、私が子どもにしていったことは、「目標達成のために必要な5つのステップ」の実践でした。
1)ゴールを明確にして具体的なイメージを持つ=その学校のどの組み合わせの制服が期待か?その学校でどの部活に入りたいか?その学校で学んだことを「将来なりたいもの」にどうやって活かすのか?などを、日常的に話していました。
2)ゴールの先を見る=中学・高校を卒業した後に何がしたいのか?を何度かインタビューしていきました。
3)ゴールの先にご褒美を用意する=「合格したらスキー旅行に行こう」「合格したら6年間好きなことに集中できるよ(高校受験しなくていいよ)」といった「エサ」をことあるごとにまいていきました。
4)達成までのステップを細分化する=入試直前の2週間は本人のレベルに合わせた特製プリントで算数の強化をしました。
5)「前に進んでいる」という感覚を持たせる=「前はできなかったのに解けるようになった問題」を明確にして、どれだけ成長できているかを自覚してもらえるように仕掛けていきました。

今回、合格を頂いた学校以外にも受けた学校はありますが、その学校は不合格でした。不合格の結果を見て、悔し涙を流している本人を見た時が、親として一番子どもの成長を感じた瞬間でした。

「合格」という成功体験は、もちろん、本人のこれからの人生にとって、とても大きな励みになると思います。そして、それ以上に、「不合格」という結果をどのように捉えて、その悔しさを活かすのかが、人生の幅を広げることにつながると確信しております。

私が子育てで大事にしていることのひとつが、「受援力と失敗力を身に着けさせる」ことです。「中学受験」という経験は、多くの人に支えられ、数々の悔しい思いを乗り越えるという、貴重な体験を子どもにもたらしてくれました。

最後まで支えてくださった先生方に、改めて感謝申し上げます。
今後も寄せられたドラマを、各カテゴリーに随時アップしていきます。
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