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親と子の栄冠ドラマ -中学入試体験記-

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受験を子どものものにするために

  • 年度:2024
  • 性別:男子
  • 執筆者:
我が家の受験は、現在中学2年生の、上の子の存在なくしては語れません。
2歳差で、同じく日能研でお世話になっていた姉。我が家での初めての中学受験だったため、塾や学校、勉強法など入念に調べて臨みましたが、コロナで対面授業がなくなったことや反抗期などもあいまって、親の声は子どもに届かなくなり、受験期のお悩みすべてを網羅した百貨店状態に。できうる限りの対処法を模索して試行錯誤し、日能研の先生方とも連日ご相談させて頂き、様々に策を講じて頂きましたが、先生にも予想のつかない行動をとるため功を奏さず・・・
親としてこうでなくてはという結果は特に求めておらず、自分なりにがんばったという経験ができれば、というスタンスだったのですが、それすら本人には響くことなく、効かなかった対処法のコレクションばかりがただただ充実していく、殺伐とした状況でした。
結局第一志望には届かず、いくつか合格を頂いた中から本人が進学先として選んだのは、その一校だけまったく下調べをしていなかったところで、他の受験校とは校風も真逆、別学/共学も違う学校。正直入学してからもとまどうことが多く、最初の1年間は、何かマイナス風味の事象が起こるたび、本人に合った学校へうまく導いてあげられなかったという申し訳なさで胸が締めつけられていました。

しかし、本人はとまどいをねじふせて適応してゆき、運動会や合唱コンクールなどのクラス対抗行事で活躍したり、所属している部活で全国大会に出て泊まり掛けで遠征に行ったりとこの学校でしかできない体験を積み、皆勤賞も獲得。
この頃には、受験生の時期に必死で教えようとしてはうまくいかなかった物事の見方や考え方、表現などもあっさりと身につけていました。
そして、その頃になってやっと、私は「受験生」を育てていたのではない、ただ12歳の子供を育てていただけだったんだな、と気づきました。
同時に、「なんで私の受験なのにママが泣いたり私に謝ったりするの」と笑われたことが、本当の意味で腑に落ちました。


そして今年、下の子の受験。
「たまたまご縁のあった学校が、その子に一番合っている」という言葉、中学受験においてよく耳にするものですが、当初の希望とは異なる結果に終わってしまったご家庭に向けた詭弁、ととらえる向きもあるかと思います。
しかし、思いもよらぬ進学先で充実した生活を送る、この言葉の生き証人が家族にいてくれることで、「どこへ行くことになっても、それがその子にとってベストな環境」と、本人も私たち両親も心から信じていられたので、本当に穏やかでした。

今回私が心がけたのは、

◆情報を集めすぎないこと

◆受験を子どものものにすること

でした。

本人がじっくり課題や勉強と向き合えるよう、サポートに徹するのはもちろん、求められるまで手や口を出さないようにしました。
テストの点数も、本人が最初に見て、言いたくなったら報告してくる形式にしていました。ちなみに点数や偏差値は、私自身はほとんど見ていませんでした。本人がそれを分析して、次の試験や志望校選定などにどう反映させたいか、考えてくれればよいと思っていたためです。本気で私が気にしていないのが判っているため、良し悪しに関わらず、気楽に、どうしてその結果になったのか話してくれましたし、報告してくる頃には本人の中で振り返りができているので、ここで直して次に備えようというところから、手伝うようにしていました。
覚えたいものは単語カードを使ったり、クイズレットというアプリに打ち込んでゲーム感覚でやったり、寝る前に反復したり。その日新しく覚えた語彙を無理やりねじこんだ例文で日記を書いたり。お弁当には豆知識や過去問をミニクイズにしたものを付箋でつけていました。(クラスの皆で解きあっていたそうです)
勉強法やタイムマネジメントなど、上の子の時に調べたり作ったりしたものがそのまま使えることもありました。使っているものやしている作業は同じでも、親の心持ちが変わると、効果も違ってくることを実感しました。

そのうち、どんな小さな演習でも、何かしらの課題意識をもって取り組むようになり、どの先生から聞いた何をどんなふうに試してみたかなども話してくれるようになりました。
6年生の後半には、とにかくたくさん、ずっと話を聴いていた覚えががあります。
それだけ多くのことを考えながら臨んでいたのでしょう。

受験本番の期間、ここまで穏やかに過ごしてきた私ですが、書類関連・当日の送迎・健康管理に関しては大変気が張って、2月3日の試験まで無事に受けることができ、本人が、「どの学校の試験も楽しかった!」と言ってくれたとき、安堵のあまりどっと涙が出てきました。
試験結果はおまけのように後からついてきたものでした。

本番も、どの学校でも、本人は自分で合否を見てから、私や父親、姉に報告に来ました。
結果、自分で選んで出願した学校すべてに合格することができました。

本番、自分の身一つで大きな舞台に挑まなければならない子供が、傍に連れて行ける唯一の味方である自分自身。
それをどれだけ頼もしく、信じられる存在に、自分で育てられるかが大切なのだと思います。
親にできるのは、敬意をもって見守り、たくさん話を聴くこと。
それはやっぱり、受験生如何ではなく、ふつうに子供を育てることと変わりはないのです。

最後になりましたが、お世話になった先生方やクラスのお友達に、心より感謝申し上げます。心許せる皆様との信頼関係があったからこそ、のびのびと自分を試すことができたのだと思います。

(「ご縁があった学校が自分にとってのベストな環境」を体現する姉のエピソードは、我が家の外へも伝わって、今年の受験生にも勇気を与えて、良い結果へ導いていたそうです。これをご覧になった方も、ぜひ、詭弁ではない本当のエピソードを、心の片隅においていただければと存じます。)
今後も寄せられたドラマを、各カテゴリーに随時アップしていきます。
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