シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

桐朋中学校

2018年01月掲載

桐朋中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.独自の教科書と問題集を使い、クオリティの高い授業を行っている。

インタビュー2/3

数学が好きな子は多い

数学が好きな子が入ってきていますか。

矢島先生 そうですね。数学が好きな子は多いと思います。

千馬先生 教員が数学をすごく楽しんでいるので、そういう思いが少しでも生徒に伝わればいいと思っています。

矢島先生 少数ですが、夏休みの自由研究(中1~中3)でパズルを考える子がいます。

千馬先生 教員が授業中に言ったなにげない一言を研究テーマにする子もいます。こちらが内容を理解するのに時間を必要とする、レベルの高いものもあります。

矢島先生 中学生ができる研究は限られていますが、実証を試みる、パズルを作るなどの研究に取り組む生徒がいます。サイコロをひたすら振って、どのくらいの割合で入るのかを確かめるような研究は毎年あります。

数学教諭/千馬 隆志先生

数学教諭/千馬 隆志先生

6年間オリジナルの教科書を使用

授業では、同校の数学科で作成した教科書や問題集が使われていると思いますが、どのようなものですか。

矢島先生 中学の数学は「代数」と「幾何」に分かれています。検定教科書は中1の最初しか使いません。中高を通してオリジナルの教科書と、その教科書にそったA級問題集を併用して授業を進めています。専任の教員だけでなく講師の方も含めて、誰が受け持ってもできるだけ同じ内容を生徒に伝えられるよう、オリジナルの教科書を使ってどう教えるかということを共有しています。

千馬先生 オリジナルの教科書はかなり専門書に近いです。数学を体系的に学べます。

矢島先生 イラストもありません(笑)。

千馬先生 「定理○○より」「ここからただちに導かれる」などという文言が頻繁に出てきます。

桐朋中学校 教科書と問題集

桐朋中学校 教科書と問題集

中学生の間に論理的な思考力をつけたい

矢島先生 たとえば「幾何」では、ユークリッドの定理の仮定→結論という証明の流れを大切にしています。中1の2学期から中2の終わりくらいまで、幾何ではほとんど証明に時間を費やします。高校生になって、途中式を書く、あるいは考え方を書く時にも困らないように、中学生の間に論理的な思考力をつけることを意識しています。

矢島先生 証明が嫌いな子は過程の式が書けなくて苦労します。問題を見て、仮定と結論だけを書き、あとは白紙で提出する子もいます。過程の式を書けるようになるには勉強するしかありません。

補習などを設けているのでしょうか。

矢島先生 中学生はA級問題集をノートにやらせて提出させているので、あまりできていなければ呼び出しをかけます。

千馬先生 居残りで勉強している人もいます。

家庭学習はA級問題集が中心

矢島先生 「代数」のほうはほぼ計算になりますので、小テストなどをして、できなければ追試を積み重ねています。なるべく積み残しのないような形で進めています。数学と英語は勉強がしやすいようです。保護者会などで「家で勉強していますか」と聞くと、「英語と数学しかしない」という答えが多く聞かれます。彼らの家庭学習は問題を解くことが中心なので、ある程度中間、期末テストに合わせて試験範囲の問題を中心に学習していると思います。

千馬先生 私も本校の卒業生ですがA級問題集にはかなりお世話になりました。高校時代は試験前に問題集を繰り返し行いました。3周くらいやると、問題を見た瞬間にやり方がわかるくらいにはなるので、生徒には「そういう使い方をするといい」と話しています。みんなクラブ活動が忙しくてなかなか進まないのですが、中には頑張って2周くらいしてくれる子もいます。

桐朋中学校 掲示物

桐朋中学校 掲示物

算数から数学に変わって楽しくなった

千馬先生はいつ頃から数学が好きになったのですか。

千馬先生 中3になってからだと思います。「幾何」で円に入ってから楽しくなりました。僕は算数がちょっと…。個別の解き方がありすぎて難しく感じていました。中学に入ると、それらがすべて方程式で解けるようになったので、ずぼらな私にとってはありがたかったです。

矢島先生 逆の子もいるんですよね。方程式を教えてもつるかめ算で解こうとするので、数学は抽象化を学ぶ学問なので理解するように促しています。中には高校の数学もつるかめ算で通り抜けようとする子もいます。

千馬先生 つるかめ算で解いている子がいるというのが信じられなくて、「新しいやり方だと全部に対応できるよ」「そこが数学のいいところなんだよ」ということは伝えています。ただ、小学校の算数も中学校の数学も、頭の使い方、論理の積み上げ方は一緒だと思います。論理をどれだけ我慢して積み上げられるかが数学力になる。スタートとゴールを見て、こういうふうに積み上げていくという階段を作る作業だと思います。

インタビュー2/3

桐朋中学校
桐朋中学校1941(昭和16)年、財団法人・山水育英会(山下汽船社長の山下亀三郎の基金を基に設立)を母体に第一山水中学校を創立。戦後、山水育英会を解散して桐朋学園を組織、47年桐朋第一中学校とする。翌年に高校が発足し、桐朋中・高等学校と改称した。現在は同じ敷地に小学校から高校までがある。
一人ひとりの生徒を、豊かな心と高い知性をもつ創造的人間として育成することに力を注いでいる。真に有為な良き社会人になるために、地球的視野に立ち、自立した人間として、自己を生かすとともに他者を生かす、このような人間形成を目指しているのが21世紀の桐朋教育。よって教育目標は、「自主的態度を養う。他人を敬愛する。勤労を愛好する」である。
一橋大学を中心とした国立の文教地区にある。自然林の緑に囲まれた2万3千坪の敷地に、2016年、新校舎が完成した。本物に触れるための天文ドーム、各種実験室、プラネタリウム等の専門用途の施設が充実している。6万5千冊の蔵書をもつ図書館は、DVD500本も揃え、生徒の利用頻度が高い。総合体育館は、種目に合った床ダンパーにより運動ストレスからの障害を予防する配慮がされ、視聴覚設備の整った保健教室も備えている。
オリジナル教材やプリントを使いながら系統的に理解し、思考力と表現力を伸ばす指導が特徴。英語は『ニュートレジャー』を使う。英語は外国人教師による会話練習や海外とのEメール交換、理科は実験・観察、社会は社会科見学などで理解を深めている。選択制の段階別授業は高校の英語総合、数学などで実施。中1から、夏休みや平常時に指名制補習もある。テーマ選びから始める夏休みの自由研究も大きな成果を上げている。高校からの入学生とは高1で混合。高2からも文系・理系のクラス分けはぜず、選択科目で自分に合った学習をする。
「行事は生徒が創る」という方針で、修学旅行、遠足、運動会、学園祭など多くが生徒の企画・運営で行われている。自主性尊重は進路指導にも生かされ、在卒懇と呼ばれる懇談会で、卒業生に仕事選択の動機などを聞く。高2の在卒懇では大学で教鞭を執る先輩から学部の内容やその選定のアドバイスを聞き、高3での大学選択につなげる。クラブ活動も盛んで中学生は9割以上の生徒が加入。サッカー、バスケットボール部などの活躍は有名。特にサッカー部・バスケットボール部は中高とも都内トップレベル。陸上競技、野球、オリエンテーリング、囲碁・将棋なども優秀な成績を収めている。高校は制服なし。