出題校にインタビュー!
桐朋中学校
2018年01月掲載
桐朋中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.「算数っておもしろいな」と思える問題づくりにこだわっている。
インタビュー1/3
受験生におもしろがってもらえる問題を提供したい
まずはこの問題の作成意図からお話ください。
矢島先生 すべての問題がそうとは言い切れませんが、私たちが入試問題を作成する時に心がけているのは、受験生におもしろがってもらえる問題を提供したいということです。型にはまらず、(受験生が)考えているうちに「おもしろいな」と食いつける。その結果、得るものがあるような問題を出したいと考えていて、毎年、少しでもそういう問題を増やしたいと思って取り組んでいます。
この問題も、そういう意図をもって作った問題の1つです。おそらく受験生は(1)(2)(3)と解き進めるうちに、「こんな仕組があったのか」と驚き、徐々に「おもしろいな」と。場合によっては「(自分でも)作ってみたい」と思ってくれたのではないでしょうか。(3)の形も、小学生が取っ付きやすいようなものということを意識し、イヌにしました。
千馬先生 掲載していただいた問題は(3)だけですが、(1)(2)で手を動かしてもらい、そこで法則性を探し出してもらうよう工夫しています。問題の本質が見えるということはとても嬉しいことなので、入試という厳しい状況の中でも楽しんで解いてもらえたのではないかと思います。
数学教諭/矢島 弘先生
初見の問題への対応力や地頭のよさも見られる問題になった
この問題を見た時に、マインスイーパー(パソコンのゲーム)を連想したのですが…。
千馬先生 結果的にマインスイーパに似ていておもしろいですよね。1つの図形に対して1つの値が決まるなど、問題の構造を見つけることができるかという、地頭の部分も見られる問題になったと思います。また、この問題は典型的な問題ではありません。初めて見る問題に対してどのように対処していくか。その力も見られる問題になったと思います。
矢島先生 入試問題にはどれだけ練習してきているか、どれだけ頭がキレるか、ということがわかる問題も必要ですが、それにプラスして「算数っておもしろいじゃない」という問題を少し入れて、私たちの姿勢を汲み取っていただきたいという思いがあります。「1個ずらしたらどうなるの?」という感覚を、入学した生徒の多くがもっていて、おもしろがってくれればありがたいというのは、常日頃から思っていることです。
試験当日は子どもらしく解く様子が見られた
受験生の出来はいかがでしたか。
矢島先生 (1)は、問題文を読めばわかる問題なので大概できていました。(2)は、ミスもありましたが、手を動かすことがきれば解ける範疇だと思います。(3)は、1つつけ加えると正方形に加算されますよね。できなかった子は、片方にしか加算していなかったのかなと思います。
千馬先生 奇数を書いている子も中にはいましたね。
矢島先生 入試当日に受験生の様子を見ていると、速さの問題などは訓練されているので、問題を見てパッとパターンを当てはめることが多いのですが、こういう問題は子どもらしさが出ます。書き並べたり、計算したり、図の中に○を書き込んだり、マスを塗ったりしていました。
この問題は知識が必要ないというところで、誰でも楽しめますよね。
千馬先生 この問題は発展させやすい問題なので、枝問をもっとつけようと思えばつけられたので、当初は難しい問題もありました。
矢島先生 できれば「あなたが作ってみなさい」という問題を出したかったです。
千馬先生 そうですね。「おもしろい」と思ってくれた子が自分で問題づくりをしてくれていたら嬉しいです。
桐朋中学校 生徒作成の展示物(多面体)
最後の問題も解いてほしかったので難易度を検討した
結果は予想どおりでしたか。
千馬先生 そうですね。
矢島先生 この後の問題(大問7)が難しかったので、それと比べるとわりとできていました。この問題を飛ばして次の問題に行くと、たぶん戻ってくる時間はなかったのではないかと思います。
受かるためには、この問題(大問6)の(1)(2)は取りたいところですよね。
矢島先生 そうですね。最後の問題(大問7)も解いてほしかったので、ここで止まらないことを心がけました。最後の問題で留まっても、そこまでは流れよく、ということを共有して難易度を検討しました。
問題文で「すべて」としたのも、答えが「5つ」ある中で「4つ」しか出てこなかったとしても、そこで止まらずに先の問題に進んでほしかったからです。「すべて」と言われると、答えの数がわからないので不安ですよね。「5つあります」と言ってあげればうんと簡単になると思いますが、5つあるのに4つしか見つからない、となると、「あと1つ」を見つけたいと思うじゃないですか。もちろんできたほうがいいのですが、できなくても、執着せずに次に進んでほしい問題の1つでした。
入試問題は16名の教員で検討する
入試問題はどのようにして作っていますか。
矢島先生 入試問題はみんなで作るということを基本としています。着想は個人であることもありますが、こういう問題はみんなで練りに練ります。
問題の検討は何名くらいで行うのですか。
千馬先生 数学科の専任の教員、全員(16名)で検討しています。
矢島先生 たとえば速さなど、定型的な問題を作る場合もあれば、この問題のように日常的なものから発想して作る場合もあります。本校の場合は、日常的なものからヒントを得ることが多いと思います。
千馬先生 「これは使えるんじゃないかな」「小学生にもわかる話だろう」と、日常の中で思いついた時にストックしている方もいると思います。
矢島先生 (3)のイヌも最初からいたわけではないんですよ。いろいろな形が考えられる中で、小学生に適したものを選んだ結果、このような形になりました。
千馬先生 周の長さとPの値とが関係しているなど、性質についても会議ではいろいろなアイデアや意見が出ましたが、入試問題なのでこのような難易度になりました。
桐朋中学校 図書館
文章題が多いのは考え方を重視しているから
入試問題は文章題が中心だと思いますが、その理由を教えてください。
矢島先生 受験生がどう考えたかを重視しているからです。ただ、書くことに時間がかかってしまい、ほかの問題を解く時間がなくなってしまってはいけないので、小学生でも取り組みやすい問題を作ろうと意識しています。
千馬先生 途中の式や図を書くことを求めているのは、本当はわかっていたけれど、途中で計算間違いをして間違えてしまった場合、答えだけを求める形だと×になってしまいますよね。少しでも点数をあげたいという思いを込めて、途中を見る問題を出しています。
矢島先生 現在は諸事情により1問しか出すことができていませんが、増やしたいという気持ちはあります。
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