今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
桐朋中学校
2018年01月掲載
2017年 桐朋中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
黒くぬった合同な正方形がいくつかあります。これらの正方形を、辺と辺がぴったり重なるように並べて1つにつながった図形をつくります。つくった図形のそれぞれの正方形には、その正方形がほかの正方形と重なった辺の本数を書きます。
たとえば、〈図1〉では、正方形(え)は3つの正方形(う)、(お)、(き)と辺が重なるので、〈図2〉のように(え)には3を書きます。
このように、すべての正方形に数を書き、これらの数の和をPとします。
〈図2〉では、Pは1+1+4+3+1+2+2で14になります。
(問)下の図形にあと2つの正方形をつけ加え、Pが26になるようにします。2つの正方形を図の㋐~㋪のどことどこにつけ加えますか。すべて求めなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この桐朋中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
[㋜、㋗][㋜、㋟][㋜、㋘][㋣、㋗][㋣、㋟]
解説
つけ加える前のPの値は、1+1+3+1+3+2+3+1+1=16です。
ですから、2つの正方形をつけ加えることで、Pの値を26-16=10増えるようにすることを考えます。
辺が1本重なるとPの値は2増えるので、新たに重なる辺は10÷2=5(本)とわかります。
正方形の辺の本数は4本なので、1つの正方形をつけ加えることで、増やせるPの値は1か2か3か4ですが、㋐~㋪の中に、4辺すべてが黒くぬった正方形で囲まれているものはありません。5=3+2より、つけ加える2つの正方形は、「①3本の辺が重なるもの」、「②2本の辺が重なるもの」の組み合わせであることがわかります。
①3本の辺が重なるようにつけ加える
下の図のように、黒くぬった正方形と3本の辺が重なる正方形は、㋜と㋣です。
②2本の辺が重なるようにつけ加える
下の図のように、黒くぬった正方形と2本の辺が重なる正方形は、㋗と㋟です。
また、①の㋜に正方形をつけ加えた場合は、㋘も2本の辺が重なることになります。
①と②を組み合わせると、[㋜、㋗][㋜、㋟][㋜、㋘][㋣、㋗][㋣、㋟]の5通りあることがわかります。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
敷き詰められた正方形の中に数字が書いてあるのを見て、マインスイーパー(パソコンのゲーム)を連想した人もいるかもしれませんね。見ての通り、条件設定はシンプルで、取り組むのに特殊な知識・技術を必要としません。しかし、いざやってみると、その奥深さを味わうことができます。
この問題では、2つの正方形のつけ加え方を問うていますが、「2つを同時につけ加える」という状況で考えていては、最後の1つを見つけることができません。正方形を1つつけ加えることでその周りの状況が一斉に変化します。この問題では、その一斉に変化する状況を踏まえて、もう1つの正方形をつけ加える場所を探す必要があります。正方形が1つつけ加わっただけという“ほんの一部の変化”ですが、その一部分の変化が周りに及ぼす影響を考慮しなければなりません。世の中にも、“ほんの一部の変化”が、周りに大きな影響を及ぼすことがたくさんあるでしょう。子ども達に、そのような“ほんの一部の変化”が周りに与える影響に気を配り、状況を正確に把握する力をつけてほしいという思いが、この問題に込められているのではないでしょうか。
このように、子ども達が取り組みやすい題材を用いて、これからの世の中で活躍するために身につけていきたい力の一つを示した問題として、□○シリーズに選ぶことに致しました。