シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

芝浦工業大学柏中学校

2016年10月掲載

芝浦工業大学柏中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3. 課題研究を通して失敗からとことん学ぶ

インタビュー3/3

生物のテイカカズラが古典や日本史の知識とつながる

相馬先生 学んでいて「楽しい!」と思う瞬間は、いろいろな知識が結びついたときです。別々に「点」で蓄えられた知識が、「線」につながる経験、「そういうことだったのか!」という喜びを、できるだけたくさんつくってあげたいと思っています。

知識のつながりについては、理科の分野でのつながりに限らず、授業の中で折に触れて話しています。高3はセンター試験対策で日本の代表的な植生を押さえます。例えば、「テイカカズラ(和名)」の名称は、つる植物の別名「カズラ」と、歌人・藤原定家に由来します。

なぜ「テイカ」なのか。藤原定家が、亡くなった恋人の式子内親王の墓前で毎日泣き暮らすうちに、カズラになって彼女の墓に絡みついたという能の演目『定家』があります。まず「藤原定家は、知っているよね?」と確認して、逸話を織り交ぜると生徒も関心を持ってくれます。名称を丸暗記するよりも、古典と日本史の知識とつながれば、生物の知識としても定着しやすいと思います。

生物科/相馬融先生

生物科/相馬融先生

学外のコンテストにも積極的に応募

相馬先生 高校では、自由選択で、自分の興味・関心のあるテーマについて1年間取り組む課題研究を行っています。木曜日の7時間目だけでなく、曜日に関係なく、昼休みや朝礼前に取り組んでいる熱心な生徒もいます(サイエンスクラスは必修)。

課題研究はプレゼンテーションまで行います。実験室が並ぶフロアの廊下には生徒が制作した課題研究のポスターを掲示しています。

学外のコンテストにも積極的に応募しています。今年春の卒業生の中には、アメリカで開催された国際学生科学技術フェアに18名の日本代表の一員として参加した生徒(科学部)もいます。この大会は75以上の国と地域から約1700人の高校生が集まり、自らの科学研究を発表し合います。研究発表や質疑応答はすべて英語です。本校でも可能な生徒は英語でプレゼンテーションします。

課題研究は結果より過程を重視

相馬先生 課題研究はテーマの選定も実験計画も生徒が自分で組み立てます。安全上、あるいは設備上の問題がなければ、基本的には「やってごらん」と言います。一貫生は中学で数多くの実験を行っているので、高校から入学した生徒に比べるとテーマの選定などがスムーズではないかと思います。

生徒が1年間かけて行う実験は、教員が指導すれば1カ月でできてしまう内容です。とかく、生徒が失敗しそうになると教員が手を差し伸べてしまいますが、それは生徒のためになりません。課題研究のねらいは、失敗してもいいからやってみて、失敗の原因を自分で考え、解決策を見つけることにあります。過程重視で取り組めるのも、高校生だからできることだと思います。

取り組みの成果は、卒業して大学に進学したときに、きちんと実験計画を立てて進められるようになればいいという長期的なスタンスです。1年間じっくり取り組むことで、チャレンジ精神や、試行錯誤できる、粘り強く取り組む姿勢を養います。

研究の過程でうまくいかないこともたくさんあります。失敗が予想されても教員はすぐに口を出さず、生徒自身に気づかせます。考えが行き詰まった場合はアドバイスしますが、できるだけ自分で考えて解決策を探るように促します。

課題研究に取り組んでいる生徒から、「失敗する前に教えてくれればよかったのに」と言われたことはありません。むしろ「自由にやらせてくれてよかった」という声が多いですね。

芝浦工業大学柏中学校 Intel ISEFでの研究発表

芝浦工業大学柏中学校 Intel ISEFでの研究発表

じっくり考え、取り組んだ経験は将来生きてくる

相馬先生 高校生は将来を具体的に考え始めるので、高校で取り組んだ課題研究のテーマに関連した進学先や職業に就く傾向があります。大学の研究室に入っても案外、時間的な余裕はないものです。高校でじっくり考え、取り組むことができた経験は、学者や研究者になったときに生きてくると思います。

一般に、高校までに基礎をしっかり固めて、大学や大学院で研究に取り組むと思われていますが、高校までに、所々でじっくり考え、取り組める自由な時間をつくるといいと思います。小学校の夏休みの自由研究なども、やり方によっては将来につながるものになるのではないでしょうか。

中高一貫生は、高校受験のために興味・関心のあることを一時中断せずに取り組むことができます。比較的時間に余裕がある中学の時期に、のびのびと、じっくり打ち込めるものに出会えると、将来力を伸ばすことができるのではないかと思います。

インタビュー3/3

芝浦工業大学柏中学校
芝浦工業大学柏中学校芝浦工業大学は、1927(昭和2)年に有元史郎が創設した東京高等工商学校が前身。80年には芝浦工業大学柏高等学校(男子校)が、新しい高校教育を目指して創立。創立10周年には男女共学に。創立20周年を迎える99(平成11)年に中学校を新設した。大学は06年に豊洲へ移転した。04年に文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクールに指定された。
増尾城址公園に隣接し、自然環境が豊か。全校舎にLANを整備するなど施設面の充実も素晴らしい。
なかでも人工芝グラウンド、グリーンホール、ソーラーハウスプールは自慢の施設。そのほかグラウンド、カフェテリア、売店などを備えている。コモンスペースではインターネットに自由アクセス可。
「創造性の教育」「主体性の教育」「生きる力の教育」「感性の教育」「健康と安全の教育」の5つを教育方針の柱とする。
探究活動に力を入れており、生徒自らが課題を設定し、様々な困難を乗り越え、粘り強く取り組む経験を大切にしている。豊洲の芝浦工業大学中学・高校とは兄弟校。
きめ細かな指導と基礎学力の徹底が特色。一日の始まりは25分のモーニングレッスンで、読書、計算、英読の学習などにあてている。外進生とは高1まで別クラス。放課後は補習や上位者講習などを実施。付属校だが難関大学現役合格を目指したカリキュラム編成で様々な進路に応じたコースを選択することができる。
高校で20年以上の実績をもつ独自教科「総合学習」をさらに充実・発展させるため、中1から「ワールドデイ」を実施。環境・国際などをテーマに自ら問題を発見し、自分なりの答えを出す力を養う。高杖での中1グリーンスクール、中2の京都・奈良研修、中3のニュージーランドホームステイなど、体験学習の機会も多い。1人1台のノートパソコンをもち、中2からは全員が教材Webページ作りのコンテスト「Webコンテスト」に参加するのは、中学校開校時から続く特色の1つ。クラブ活動は、原則として月・水・金・土曜日の活動。野球、サッカー、吹奏楽、演劇、鉄道研究など18のクラブ・サークルがあり、一部を除き中高別に活動する。ノーチャイム制。