シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

芝浦工業大学柏中学校

2016年10月掲載

芝浦工業大学柏中学校【理科】

2016年 芝浦工業大学柏中学校入試問題より

温帯地域にある日本においては、アブラナの花は春に咲(さ)き、イネの花は夏に、キクの花は秋に咲きます。このような開花の時期を決めているものについて考えてみると、以下にあげるようにさまざまな可能性が考えられます。

  • ア. 一定の温度(低温または高温)
  • イ. 一定の日長時間(昼または夜の長さ)
  • ウ. 土の中の水分の量
  • 工. 土の中の養分の量
  • オ. 温度の変化(上がる、または下がる)
  • カ. 日長時間の変化(長くなる、または短くなる)
  • (問1)開花の季節が毎年ほぼ決まっているということから見て、アブラナ・イネ・キクの開花の時期を決めている可能性のあるものを、枠(わく)内のア~カの中から4つ選んで、記号で答えなさい。
  • (問2)アブラナもキクも、春と秋に年2回咲くことはありません。そのことを合わせて考え、前問の解答4つのうち、可能性のあるものを2つにしぼって、記号で答えなさい。
  • (問3)イネはもともと熱帯の植物ですが、どんなに気温の高い年でも、夏至(げし)より前に花が咲くことはありません。このことを合わせて考え、前問の解答2つのうち、決定的なものを1つにしぼって、記号で答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この芝浦工業大学柏中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答
  • (問1)ア、イ、オ、カ
  • (問2)オ、カ
  • (問3)カ
解説
  • (問1)問題に「開花の季節がほぼ毎年決まっているということから見て」とあります。ア~カのうち、ア「一定の温度」、イ「一定の日長時間」、オ「温度の変化」、カ「日長時間の変化」の4つの条件は、ほぼ毎年同じように周期的に変化するものととらえることができるので、アブラナ、イネ、キクの開花を決めている可能性があると考えられます。しかし、ウ「土の中の水分の量」とエ「土の中の養分の量」は、ほぼ毎年決まった季節に同じ量になるとは限らないので、ふさわしくありません。
  • (問2)問題に「アブラナもキクも、春と秋に年に2回咲くことはありません」とあります。春と秋で、気温が同じになったり、日長時間が同じになることがあるので、もしも、ア「一定の温度」や、イ「一定の日長時間」がアブラナやキクの開花の時期を決めているとすると、春と秋に年2回花が咲くことになり、実際の状況と矛盾します。したがって、オ「温度の変化」、カ「日長時間の変化」のどちらかが開花の時期を決めていることになります。
  • (問3)イネの開花の時期について、問題に「どんなに気温の高い年でも、夏至より前に花が咲くことはありません」とあることから、夏至の日の特ちょうに目を向けます。夏至の日は、一年で、もっとも日長時間が長いので、イネは日長時間の変化を感じ取って開花の時期を決めていることになります。
日能研がこの問題を選んだ理由

植物の開花の時期を決める条件を、いくつか考えられる条件の中から、実際の状況と照らし合わせながら検証し、決定する問題です。

問題からの刺激を受けた子どもたちは、無意識のうちに当たり前としてとらえていた植物が決まった季節に花をさかせることに目を向けます。設問に取り組むことによって、開花の時期を決める可能性のある複数の条件を、実際の状況と照らし合わせながら検証し、ひとつに絞り込むプロセスを体験することができます。また、この問題をきっかけに、日常生活の中でさまざまな可能性が考えられることがらに出あったときに、子どもたちは、状況と照らし合わせながら検証していくことによって行動をひとつに決めたり、検証する過程でさまざまな関係に気づくことができるでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。