市街地再開発により、4年間の「仮設」教室での生活を送ることになった日能研大船校。
子どもたちが日能研で熟達させていくのは、未知と出会う度にずっと使い続けることができる「持続可能な学び」です。その学びに「環境」からアプローチしようと、日能研では教室内装の木質化を進めてきました。
「木質」が生み出す学習効果はもちろん、「木の命」と子どもが出会って生まれる「学び」を大切にしたい。変化するもの同士が出会うことから生まれる「持続可能な学び」を大切にしたい。そう考えているからです。
再利用を前提としていながらも、仮設期間終了と同時に鉄骨フレームおよび副資材以外のほとんどが廃棄される「プレハブ」は、どうしても「学び」とはつながりません。「仮設」という状況をなんとかして「学び」とつなげたい日能研では、「板倉造り」を選択しました。当然、素材の「質」にも徹底してこだわる「健康住宅」です。
子どもが、仲間と共に、自分で自分を育て、私学に進学する場=日能研。
「木」という環境が、「持続可能な学び」にアプローチするカタチ=木質化プロジェクト。
その最新にして、エポック的な建物が「大船校仮設の学び舎」なのです。
壁材に厚板を用い、壁塗りなどを行わず、構造と仕上げを兼ねたシンプルな木造建築の伝統構法です。施工の作業内容から「落とし板倉」「落とし込み板壁工法」とも呼ばれています。
近年、安藤邦廣筑波大学名誉教授が開発した板倉構法を提唱し、全国的に施工例が増えつつあります。
板倉構法は、「粘り強い耐震性」「防火性」に優れるとともに、「保温性・通気性・調湿性」が優れているので結露がおこりにくく、冬場の過乾燥の心配もありません。また板倉構法は木を太く厚く使っているので、比較的防音性があります。ほとんど無垢の木材で構築できるので、シックハウスの心配もありません。
この板倉構法は伝統的な継手仕口で組まれているので組みたて・解体が容易にできます。そのため仮設建築にも適しているので、短期間で建設でき、使用後はそっくりそのまま解体・再利用が可能です。廃棄物の処理の心配もありません。東日本大震災の応急仮設住宅に採用され、福島県に200戸建設され、その優れた特性が注目されました。
数多くの文化財を有し、密集した住宅地も多い鎌倉市は、防火基準が厳しいことで知られています。その鎌倉市内の準防火地域(*)において、大船校仮設教室は接着剤などを使わない構造・内外の仕上げとも総木造の防火建築物として建築申請、認可されました。この画期的とも言える認可の背景には、筑波大学の安藤邦廣名誉教授によって規格化され、国土交通大臣の耐震・防火認定を取得した木造建築の伝統構法「板倉構法」の採用があります。今回は、安藤邦廣筑波大学名誉教授が主宰する「里山建築研究所」が確認申請を行いました。「板倉造り」と「子どもたちの学び」のコラボレーションに想いをもって積極的に取り組んでくれたのです。
大船校仮設教室に使われる木材は、宮城県大崎市にあるエコラの森の間伐材。エコラの森は、約20年前にリゾート開発に失敗したのち、乱伐され放置された約260haの荒廃した森林です。そのエコラの森で、乱伐されずに残った場所の間伐をして間伐材を出荷したり、雑草を片付けて整地して植林したり、少しずつ昔の豊かな美しい森に甦らせる活動をしている「NPO法人しんりん」の協力で、大量の木材を調達することができました。
板倉構法は日本の豊富な森林資源の保全・活用するために開発された構法で、木造の在来工法に比べて3倍程度の木材を用いますが、間伐材を活用することでコストを抑え、森林の保全にもつなげることができるのです。
囲炉裏のある古民家の柱や梁が、ススで真っ黒になり、虫にも食害されず、腐りや反り、曲がりも起こらず、何百年も長持ちするほど強いのはなぜか。それは囲炉裏の煙に燻されているからです。燻煙時の煙には防虫・防カビおよび防腐効果のある物質が含まれているため、アトピーやぜん息の原因となる有害な化学薬品で処理する必要がありません。大船校仮設教室に使われる木材も、この昔からの経験を活かした「燻煙(くんえん)」により乾燥させているのです。
大安吉日の8月2日(火)、地鎮祭を執り行いました。
地鎮祭とは、建築などの工事を始める前に行う、その土地の神様を鎮め、土地を利用させてもらうことの許しを得る儀式です。3か月に渡る工事の安全を祈願いたしました。
8月28日(日)、上棟式を行いました。
上棟式は、棟が上がったことを喜び、竣工後も建物が無事であるよう願って行われます。
法被(はっぴ)を纏ったNPO法人しんりんの木こりさんがまさかりを担いで式に参加する皆さんを案内し木材を大工さんへ引き渡す儀式や、式に参加する皆さんの掛け声とともに、大工さんたちが棟木を棟に打ちつける「槌打の儀」、そしてお餅を撒く「散餅の儀」も行われました。
式には大船校の生徒たちも参加し、餅まきはご近所の方も交えて盛り上がりました。
9月11日(日)、板倉造りの仮設教室の建築現場で、自分たちの学び舎を大工さんと一緒に造る、セルフビルドワークショップを開催しました。
9時から15時までの間に、大船校の生徒や兄弟姉妹の子どもたちが30人以上参加して、2階の床板を張り付ける作業を行いました。練習用の木材で工具の使い方を練習してから本番の作業に臨み、思い切りよく作業する子、慎重に丁寧に作業する子、コツをつかんで20枚以上の床板をどんどん張り付ける子…とそれぞれのやり方で自分たちの学び舎の床を張り付けました。今回、張り付ける床板の裏側に自分の名前やメッセージを書き込みました。見えない場所ですが、自分もこの学び舎建築に関わった証です。
電動工具を使うのも床板を張り付けるのもみんな初めての体験でしたが、「自分たちの学び舎を自分たちの手で作る」というのも初めての体験。自分たちも建築に関わった学び舎で学ぶ日がもうすぐやってきます。
10月21日(金)、開校に先立ちプレス関係者・学校関係者向けの内覧会を開催いたしました。
鎌倉市準防火地域で延べ床面積約250m2におよぶオール木造建築として竣工直前の「日能研大船校仮設の学び舎」は、木枠の黒板、木の机や椅子、手作りの部屋番号ボードが並び、建物だけでなく随所にふんだんに木が使われており、木の香り、手触り、歩いたときの音や感覚…と視覚のみならず五感を心地よく刺激する学び舎となりました。見学に訪れた方々からも「木に包まれているみたい」「触ってみたくなる壁」「林間学校に来ているみたい」というような声が随所であがり、子どもだけでなく大人にとっても心地よい空間になったようです。
子どもたちがこの仮設の学び舎で過ごす4年間はまもなくスタートです。
すべてが「子どもの学び中心」。そして「持続可能な未来を-」。
日能研で進めている〈教室内装木質化計画〉の最新プロジェクト「大船校仮設の学び舎」について「日能研大船校通信」でも詳しくお伝えしています。ご希望の方はお問い合わせください。
お問い合わせ 日能研本部イベント企画推進本部 日能研総合受付(代)045-473-2311
市街地再開発により、4年間の「仮設」教室での生活を送ることになった日能研大船校。
「仮設」という状況を「学び」につなげたい。木に触れることから生まれる「持続可能な学び」を大切にしたい。
そんな思いから木の学び舎をつくることに挑戦しました。
日本古来の神社や穀物倉庫を造ってきた木造建築技術「板倉造り」
必要最小限の機械と馬や牛などの動物の力を使う、山を壊さない「ハイブリッド林業」
木、森、自然とつながる「持続可能な暮らし」
単に一時的な仮の教室ではなく、限られた期間が創り出してくれるすべて木でできた教室は
子どもたちが「木の命」と出会う特別な学びの場。
子どもたちが日能研で熟達させていくのは、未知と出会う度にずっと使い続けることができる「持続可能な学び」。
「環境さえそこにあれば、何を学ぶかはこども一人ひとり別々かもしれないけれどなにかをきっと学んでくれる」
子どもが、仲間と共に、自分で自分を育て、私学に進学する場=日能研。
「木」という環境が、「持続可能な学び」にアプローチするカタチ=木質化プロジェクト。
その最新にして、エポック的な建物が「大船校仮設の学び舎」です。