シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

日本大学三島中学校

2017年08月掲載

日本大学三島中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.自分の考えを、わかりやすく人に伝える力をつけよう。

インタビュー1/3

小学生に身近なデータと出会った

この問題の出題意図からお話ください。

堀先生 これまでにもデータを読み取る問題を出題していたので、いいデータはないかと探しているときに見つけたのが「父母と子どもたちの会話時間」でした。これは使えると思いました。
「父母との会話時間」は受験生にとって非常に身近なデータです。誰もが自分の体験をもとに考えることができます。自分の家庭とは違うと思っても、なんらかの答えを引き出すことができる問題です。
女性の働き方が変わりつつある今、「将来はこう変化するのでは?」など、社会の変化を考えるきっかけになるデータであることも採用に至った理由です。

国語科内では異論なく採用されたのでしょうか。

澤先生 特に異論なく採用されました。毎年、こういう問題を出したいと思って探しているので、(データを見て)「おもしろいな」と思いました。シンプルでわかりやすいですよね。なおかつ、いろいろなところに着眼点を持てます。受験生の個性も出やすいので、いいと思いました。

堀 雅英先生

堀 雅英先生

自分で考えわかりやすく伝えることが大切

採点のポイントを教えてください。

堀先生 採点のポイントは、大きく3つありました。1つはデータを読み取れているか。1つは読み取ったデータ(原因)と結果がつながっているか(筋道立てて考えられているか)。1つは正しい言葉や文章で考えを伝えることができているか。以上の3点です。正答に欠かせないキーワードなどはありません。シンプルに答えてくれればいい問題でした。

毎年こういう問題を出題されているのですか。

小川先生 はい。2016年2期の問題では、「山の日(祝日)が誕生したが、あなたが日本らしい祝日をつくるとしたら、どんな祝日をつくるか」という問題を出しました。なぜその祝日なのかを、日本らしさも含めて書けていれば正解としました。

小川 高明先生

小川 高明先生

自分と他者とのかかわりに着目してほしかった

印象に残っている答えはありましたか。

堀先生 きちんと読み取れている子は、父親、母親、両方に目を向けて書いていました。「母親は家にいて、子どもとかかわる時間がそもそも長いから会話時間が長くなるのだろう。父親は外に働きに出ている人が多い。だから会話時間が自ずと少なくなるのだろう」ということですね。
そういうことがきちんと書けている子がいる一方で、「自分自身がゲームやスマートフォンに夢中になりすぎている」という解答がありました。自分本位と言いますか、それだけを書かれても、それが父母との会話時間を示したデータの読み取りにつながるのかどうか、わかりません。それは本当のことかもしれませんが、自分と他者とのかかわりではなく、自分のことだけで収めてしまっている、ということが印象に残りました。
この問題には、子どもと会話してほしいという、本校からのメッセージも含んでいるので、受験生のみならず、保護者の方にも受けとめていただけると嬉しいです。

自分のことではないところにも触れることが大切

大問2では、「<自分らしさ>って何だろう?」という、日本人の人との接し方が綴られた文章を使っていました。大問1から3を通して、今年の入試問題はコミュニケーションがキーワードのような印象を受けましたが、意図していましたか。

澤先生 中学校を担当している教員の間で最近意識しているのが「自己と他者との関係」です。小学校までは自分を中心に生きていますが、中学校に上がるとそうはいきません。中学生と接していると、他者とのかかわりが重要であることを感じるので、自然と「自己と他者」に目が向いてしまったのかもしれません。

堀先生 僕も自己と他者は意識していました。(この問題も)自分のことと置き換えて考えられるので、自分のことから考えていいけれど、自分のことではないところにも触れてほしいと思っていました。

社会全体をとらえて、意見を述べるような解答はありましたか。

堀先生 そこまでの解答はなかったです。データから読み取れることを、シンプルに書いていました。もう少し新しいデータがあるとよかったのですが、平成21年以降の統計は見当たりませんでした。新しいデータがあれば、このデータと比較してもおもしろい問題になったと思います。

日本大学三島高校中学校 沿革略史

日本大学三島高校中学校 沿革略史

考えたことを表現する力をみたい

書かせる問題が多いですよね。

澤先生 受験生は学習するだけでなく、さまざまな体験を通して「考える」「感じる」ことはたくさん練習をしていると思います。本も読んでいるので、「読み取る」こともできると思いますが、「表現する」ことは難しいと思います。特に正解を導こうとする場面で、どういう表現が望ましいのかを考え、伝わりやすく書くことは、大人でも難しいことです。だからこそ、自分で考えたことを簡潔に相手に伝わる文章を書く力を見たいと思い、書かせる問題を出題しています。ただ、問題に答えるというよりも、自分の日常に置き換えて答える形式の問題を出しているのが本校の特徴です。できれば毎年出したいと思っています。

日本大学三島高校中学校 図書館

日本大学三島高校中学校 図書館

インタビュー1/3

日本大学三島中学校
日本大学三島中学校2003年に中学校が開校。日本大学の付属校であり、国際関係学部の併設校で、大学の先生の授業も受けられる。豊かな自然環境と恵まれた教育環境の中で、自主創造の精神を育み、世界の進展に適応し、「自由と規律」を重んじ、世界の平和と人類の福祉に貢献する人間を育成することが教育方針である。
数学・英語は、習熟度別少人数制授業で、きめ細やかな学習指導を行う。さらに英語では、ネイティブ講師と日本人英語教師によるチーム・ティーチングで、すべて英語で行う「英会話」の授業を設定している。「21世紀型の学び」として、平成29年度からは、全生徒にiPadが配付され、ICT教育による「能動的な学び」を実現。また、「総合的な学習の時間」や特別活動、学校行事を積極的に活用し、教科学習で学んだものと結びつけ、コミュニケーション力や問題発見・解決力、プレゼンテーション力、批判的な思考などを育み、これからの社会で活用する力を育てる。
中高共同の文化祭・体育祭の他、中学のみの体育祭も実施している。中3の海外修学旅行、日本大学が主催するケンブリッジ大学の「高校生のためのイースター・プログラム」「高校生のためのサマー・プログラム」など、中高を通して国際交流にも積極的である。
大学・高校・中学が交わる三島キャンパスの中央部には、大規模総合体育館「桜アリーナ」が誕生した。1階には約800席の食堂、2階アリーナにはバスケットコート4面や会議室・事務室など、3階には観客席と1周245メートルのランニングコースが設置されている。