シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

日本大学三島中学校

2017年08月掲載

日本大学三島中学校【国語】

2017年 日本大学三島中学校入試問題より

(問)表から読み取れることと、その読み取ったことが起きる理由や原因を答えなさい。

父母と子どもたちとの会話時間(1週間当たり)(平成21年)(%)
  父親 母親
~ 4時間 31.8 11.7
5 ~ 9時間 18.7 13.5
10 ~ 19時間 20.5 20.2
20 ~ 29時間 15.6 16.5
30 ~ 39時間 5.4 10.1
40 ~ 49時間 2.7 8.2
50 ~ 59時間 0.7 6.3
60 ~ 69時間 0.3 3.4
70時間以上 0.1 7.1
不詳(ふしょう) 4.3 3.1

(出典)厚生労働省「全国家庭児童調査」

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この日本大学三島中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

一週間のうち、父親が子どもたちと会話を交わしている時間は29時間以内であることが多い。それに対して、母親は39時間以内であることが多いが、70時間以上子どもと会話している母親もいる。よって、父親よりも母親の方が、子どもとの会話時間は多く持てる傾向にあることがわかる。父親は子どもとの会話時間が短いという現象が起きる原因のひとつとしては、会社に勤めている父親の率が高く、家に不在となる時間が多いことが考えられる。一方、母親の方が子どもとの会話時間が長いことの理由は、在宅時間が長いこと、また、子どもたちの世話を母親がしている率が高いことも考えられる。

解説

表の中に書かれている数値のうち、共通する数値、大きな差のある数値に着目すると、表に書かれていることがらの特徴をとらえやすくなります。また、読み取ったことが起きる理由や原因については、現代の日本の家庭状況を背景にして考えることもできれば、受験生の身近にある家庭環境をもとに考えたり、母親や父親といった性別的な部分をもとにして考えたりするなどして、多様な視点で表をとらえることができそうです。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題では、表にまとめられている数値をとらえたうえで、その数値が示している意味合いを子どもなりに考え、記述することが求められています。表の中のどの数値に着目するかは、受験生によって異なるでしょう。表のどこに目を向けるかという、切り口となる点を受験生にまかせている問題であるため、この問題に取り組む受験生は、自分の内側にある考え、価値観、思いを表から読み取れることと重ねて自由に表現することができます。また、「父親」「母親」別に会話時間がカウントされていることに着目すれば「男性」「女性」というジェンダーの側面に焦点をあてることもできます。この表をきっかけに、未来を生きていく受験生が、ジェンダーの平等について考えることもできるのではないでしょうか。

今回は、受験生の目の付けどころに自由度がある記述問題を出題された意図、また、ジェンダーに目を向けるきっかけとなる表を出題された意図をぜひ伺ってみたいと考えました。以上のことから、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ばせていただきました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 5 ジェンダー平等を実現しよう

子どもたちとの会話時間が「父親は少なく母親が多い」傾向は、「父親は家庭の外で働き、母親は家庭の中で家事や子育てをするもの」という日本の「仕事の状況」を反映していると言えそうです。自分の身の回りにある“今の”「仕事の状況」や「働く環境」に目を向けたとき、それは本当に未来につながる男女平等なのでしょうか。そんな視点から見れば、目標5「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」につなげることもできます。その他にも、「働き方」改革(長時間労働などの労働環境の改善や在宅勤務などの勤務スタイルの多様化……)、「親子関係」のあり方(「子育ては母親の役目」などの固定観念……)などなど、日本の社会が抱えるさまざまな問題とのつながりが見えてきます。

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日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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