シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

本郷中学校

2016年02月掲載

本郷中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.理科の学びは日常の中にある

インタビュー2/3

グラフをかくときはまず全体像をとらえる

貴校はグラフを使った問題もよく出題していますね。

小杉先生 グラフにすることで情報を視覚的にとらえることができます。比例・反比例の関係性を読み取るなど、グラフから得られた情報をどのようにして解答につなげていくかというところも試したいと思っています。

2015年第1回の物理の振り子の問題ではグラフをかかせています。おもりの重さと振れ幅は変えずに、振り子の長さを変えたとき、振り子の長さと1往復する時間の関係のグラフはなめらかな曲線になります。子どもはどうしても点と点を直線的につなごうとするので、曲線的にかくのが苦手です。

小杉先生 この場合、折れ線グラフのようにかいてしまうということは、表の数字しか見ていない、すなわち点と点の間を考えていないといえます。この場合のポイントは、解答例のような目盛りの振り方でなくても、表の数値をきちんとプロットできていること、曲線でかけていることですが、難しかったようですね。

全体像をつかめていないということですね。小学生は反比例の曲線はかいたことはありますが、このグラフのように平方根に比例するような形はなかなかイメージできないと思います。
しかも、縦軸(1往復する時間)の目盛りを自分で振らなければなりません。グラフ上の最大値をどこに置くか、グラフの1目盛りをいくつに換算するかなど、考えなければならないことがいくつもあります。

小杉先生 中学の授業でレポートにグラフをかいて提出してもらうことがありますが、B5縦のグラフ用紙に、1cmを1目盛りとしか置けなくて、本当に小さくかいてくる生徒がいます。柔軟に目盛りを置いて見やすいグラフをかけるように訓練していきます。

理科/小杉俊啓先生

理科/小杉俊啓先生

夜空を見上げ、道端の草花に目を向けてみよう

小杉先生 普段の生活の中に理科の学びがあります。何か特別なことをしなくても、身の回りのことに目を向けることをお勧めします。

塾の帰り道に夜空を見上げて、さっき習った星座を見つけてみましょう。道端に咲いているタンポポを見つけたら、花だけでなく葉の形や葉の裏側を見ることでいろいろな情報を得られます。匂いをかいだり触ったり、実体験が伴うことで印象が深くなり知識も定着しやすくなります。

お手伝いをするといろいろな発見があります。後片付けの洗い物は、油汚れは水だけでは落ちないけれど洗剤を使うときれいに落ちて、水が濁ります。それはなぜか。このような発見が学びを広げてくれます。

最近は仕組みがブラックボックス化されていますが、どうなっているか、いろいろな想像してみてほしいですね。「どうなっているのかな?」と疑問に思ったら自分で調べるようなお子さんであれば、入試問題を解く思考力が鍛えられると思います。

本校では、実験や観察を通してできるだけ実体験させるようにしています。金環日食など天体現象があるときは観察会を設けています。そのとき、ちょっと首を突っ込んでくれると、卒業後に「そういえば、中学であんな実験をやったな」だけでなく、「この現象はこういうことだ」と思い出してもらえるのではないかと思います。

見聞きした情報はその場限りにしない

小杉先生 受験生のみなさんは、身の回りを見渡して、不思議だな、おもしろいなと思えるものを見つけてください。習ったことを機械的に覚えるだけでなく、それが実生活とどのようにつながっているか探してみましょう。習っていないことでも、ニュースを見聞きして、「なぜ、今それが問題になっているんだろう?」と関心をもってほしいと思います。

宇佐美先生 見たことや聞いたこと、体験の豊富さが思考の幅広さにもつながっていくと思います。情報のアンテナをいろいろな方向に向けてほしいですね。今の小学生はインターネットでいろいろな情報に接しているでしょうから、「おもしろかった」で終わりにせず、あとでその情報を引き出せるようにストックしておきましょう。「その話、前に聞いたことがある」と思い返すことで次の行動につながるかもしれません。

北原先生 将来の夢を見つけるのも豊富な生活体験があればこそではないでしょうか。親御さんがご自身の体験をお子さんに語るのもいいでしょう。中学受験を、親子で話し合う機会にしていただければと思います。

本郷中学校 図書室

本郷中学校 図書室

インタビュー2/3

本郷中学校
本郷中学校旧高松藩松平家第十二代当主、松平賴壽により「個性を尊重した教育を通して国家有為の人材を育成する」という建学の精神のもと、1922年に創立された。巣鴨駅から3分、駒込駅から7分という山手線内においては屈指の好立地である。
教育方針は、「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」。教科学習だけでなく、部活動や行事においても、理念や教育方針が浸透している。6年後の大学実績だけではなく、大学卒業後に、どんな道を歩み、どう生きていきたいのかを見据えて、各自が目標に向かって自分で自分を高めていけるためのサポートとして進路指導が行われている。高い大学合格実績は、あくまでもそのプロセス段階での一つの結果である。
文武両道が、教育方針の一つの柱であるが、全国レベルの部活動であっても、中学は週3日で1日2時間以内、高校では週5日1で日3時間以内と活動時間が決められている。いかに質の高い準備が活動の中で行われているかを感じさせる。先輩後輩という縦のつながりの中で様々な経験をすることにより、自分の役割を見出し、自主的に行動する力が育まれる。
一人で集中したい場合は図書室や自習室、仲間とのグループ学習やディスカッションはラーニング・コモンズ、というように様々な学習形態に合った施設が設置されている。生徒は、自分で目標を定め学習していく姿勢が強く求められている。自学自習が尊重される本郷の教育で、生徒は自分の道を自分で切り開く力を培っていく。