今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
本郷中学校
2016年02月掲載
2015年 本郷中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
消防庁防災情報室から発表された「平成25年(1月~12月)における火災の状況(確定版)」という資料によると、平成25年に起きた建物火災25053件中の約2%にあたる498件の火災原因が「灯火(とうか)」によるものとされています。「灯火」による建物火災には、仏壇(ぶつだん)・神棚(かみだな)・祭壇(さいだん)などに使用されているロウソクが原因となっている火災が多数あります。このようなロウソクによる火災のほとんどは、
- ◆ロウソクやロウソク立て(燭台(しょくだい))が転倒したり落下したりする
- ◆ロウソクの火に燃えやすいもの(供(そな)え物やお札(ふだ)など)が接触する
ということが直接的な原因だと考えられてきました。
ところが、上記のどちらにもあてはまらない火災原因が考えられることが大阪府の枚方寝屋川(ひらかたねやがわ)消防組合の調査でわかりました。次の 内の文章は、平成25年2月に発生したある火災についてのものです。
本件火災は、一般住宅内において整理ダンス上でロウソクを使用中、家人の前で障子戸(しょうじど)の一部が燃え上がったものです。燃えている状況を調べると、
- ❶ ロウソク、ロウソク立てに異常(転倒等(など))がないこと。
- ❷ 障子の燃え始まりは、ロウソクの火が届(とど)かない場所であること。
- ❸ ロウソク立ては前日に洗っていること。
- ❹ ロウソクを使用中、家人は室内に居たこと。
- ❺ 家人が火災に気付いた時、ロウソクの火は消えていたこと。
この5つの状況が確認できました。
枚方寝屋川消防組合ホームページより
そこで、この消防組合では、ロウソク立て(燭台)に水が残っている状態でロウソクを燃やし続ける実験をくりかえし行い、 内の文章にあてはまるような火災を再現することに成功しました。
ロウソク立て(燭台)に水が残っていると、ロウソクが燃えて短くなってロウソクが燃えつきる直前に火がついたままのロウソクの芯がロウソク立て(燭台)から数cmから数十cm先に飛んでいってしまうことが、600回の実験のうち20回起こったことが報告されました。
(問)このようにロウソクの芯が飛んでいってしまうのはなぜでしょうか。理由を考えてわかりやすく説明しなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この本郷中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
とけたロウに包まれた水滴が炎によって加熱されると、水蒸気に変化するときに体積が急激に大きくなるから。
解説
問題文に目を向け、どのような状況で火災が起きたのかを確かめます。❶、❷より、ロウソクやロウソク立てが倒れたり、ロウソクが直接燃えるものに触れたりしていなかったことがわかります。また、❸やその後の問題文より、ロウソク立てを洗った後の水がロウソク立てについていたことがわかります。
次に、ロウソクが燃えているときのようすや、水があたためられたときの変化に目を向けます。ロウソクが燃えているときには、炎で熱せられたロウがとけて液体となり、ロウソク立てに流れ落ちていきます。流れ落ちたロウは冷やされると再び固体になります。また、水はあたためられると水蒸気に変化し、このときに体積がおよそ1700倍に膨張します。
これらのことがらを結び付けて、ロウソクの芯が勢いよく飛び、火災が発生する現象を筋道立てて説明します。まず、ロウソクから流れ落ちたロウが冷えて固体になるときに、ロウソク立てに残っていた水がロウによって閉じ込められます。そして、ロウソクが短くなって、炎がロウに閉じ込められた水に近づくと、水があたためられて水蒸気に変化します。その結果、急激に膨張した水蒸気によってロウが破裂するので、ロウソクの芯を飛ばすと推測されます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
問題文に示された情報や関連する知識をもとに、いくつかの条件がそろったときに、ロウソクの芯が飛んでいってしまう現象が起こる理由を説明する問題です。この問題では、問題文に示された情報から火災が起きたときの条件を読み取り、ロウソクの燃焼や水の三態変化に関連する知識を結び付けながら、課題の解決に向かって考えを筋道立てていきます。ロウソクという身近な素材をもとに、学びが日常とつながっていることに気づき、今まで学んだことを使うと、いろいろな発見ができることに気づくことにもつながります。
この問題を通して、学びと日常とのつながりに気づくことにつながると考え、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。