中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

本郷中学校

2016年02月掲載

本郷中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.“名探偵”になり現象のナゾを推理しよう

インタビュー1/3

百発百中ではない現象を探る大人目線の実験

宇佐美先生 2015年入試の化学分野の問題は、実験に沿った出題です。どの実験もロウソクという身近な素材を使っていますが、初見の実験もあったでしょう。この条件で結果がどうなるか、どんな現象が見られるか、予測力が試されます。

この問題の前に出した5つの実験はどれも百発百中で起こる現象ですが、この問題の実験の再現性は600回中20回と低い。ですが、火災という重大事故につながる可能性がある現象の原因を解明しようという大人目線の研究です。受験生には、日常生活で特殊な条件が揃ったときに起こる現象だととらえてくれればと思います。

理科/宇佐美豪士先生

理科/宇佐美豪士先生

体積が1700倍になる状況を想像する

宇佐美先生 リード文の「ロウソク立てに水が残っていること」から、この現象に水の状態変化が関係していると考えられます。受験生は状態変化の知識は持っているでしょう。中1の授業で、水が水蒸気になると体積が約1700倍になることはかなりの生徒が口にします。ただ、気体は目に見えないので1700倍の実感は持てていないと思います。

知識を単なる知識にしておかず、1700倍になるとどうなるか想像してみましょう。「ゆっくり」ではなく、少量の液体が「急激」に気体に変わると、ものを飛ばすエネルギーを生み出すことに考えが及ぶといいですね。

ポイントは、温度変化、状態変化、体積変化の3つ

宇佐美先生 この問題の正答率は、満点が受験生398名中53名、部分点が23名でした。部分点を含め得点できた受験生は2割に達しませんでした。

採点基準は、「温度変化」と「状態変化」、「体積変化」の3つについて触れていることです。水がロウソクの火で温められて水蒸気に変わるとき、急激に体積が大きくなります。急激な体積変化と、「ロウソクの芯(火種)が飛ぶ」現象の因果関係がわかるように説明できていれば、文章の上手下手や細かな表現までは問わないことにしました。

温度変化は「ロウソクの火で水が温められて」と書いていれば、加熱で水の温度が高くなることがわかっていると解釈しました。状態変化を表すのに「沸騰」という用語を使ってもいいでしょう。体積変化については、「一気に」あるいは「ピュンと」といった小学生らしい表現でも、火種が飛ぶ様子がイメージできればよしとしました。

模範解答にある「水が溶けたロウで包まれる」ところまで触れている受験生はほとんどいなかったと思います。現象として密閉空間になっていることが表記されていなくても、採点基準に含めませんでした。

本郷中学校

本郷中学校

手が出なかった一方、的確な解答もあった

宇佐美先生 理科の入試では例年、文章記述の問題を出題しています。受験生に自由に考え表現してもらおう、的外れの解答があってもいいと思って出しました。

答案を見ると無答が結構多く、現象を思い描くことができず文章として表現できなかったようですね。自由に発想して自由に書いてもらおうと思ったのですが、ユニークな発想の答案はこちらが期待していたほどありませんでした。

何かしら書いたけれど得点できなかった受験生は、「ロウソクの火で化学反応が起きて、何かが爆発した」というように、想像だけをたよりに書いていました。また、「水があって、熱が加わって水蒸気になった」ということは書いていても、体積変化に触れていない解答もありました。火種を飛ばすエネルギーが状態変化に起因することがわかっていなかったということでしょう。

一方、3つのポイントをきちんととらえ、筋道を立てて説明できていた受験生もいました。「水が温められて水蒸気になるときに体積が急に大きくなった」というように、かなり的確に現象をとらえていて感心しました。小学生だからもっと長々と書くのではと予想していましたが、理路整然とコンパクトにまとめた“大人な”文章の答案があったことに驚きました。

リード文の誘導にうまく乗って類推力を働かせる

宇佐美先生 ここで取り上げた火災の原因は、ロウソクやロウソク立てが倒れたわけではなく、ロウソクの火に燃えやすいものが接触したわけでもありません。ロウソクを使っている状況と、「ロウソクの芯が飛ぶ」現象があまりにかけ離れているので、小学生に自由に書かせると正解が出ない可能性があるため、   内の文章のあとに、どこに着目すればよいか、何が通常の使い方と違うのか、受験生の思考を誘導するような文章を入れました。

   内の文章にある条件の1つ「ロウソク立ては前日に洗っていること」から、「水が残っている」と推測できれば“名探偵”ですが、そこまで推理するのは厳しいと判断しました。受験生には、「ロウソク立てに水が残っている」「ロウソクが燃えて短くなって」というネタバレ覚悟で提示した情報を基に類推してもらうことにしました。

この問題は、長文のリード文を読み、情報を読み取って整理した上で、何が起きているのか、なぜそうなるのか、筋道を立てて説明しなければなりません。受験生にとっては難しいだろうというのは承知した上で、受験生がどれくらい挑戦してくれるか試してみたいと思って出しました。本郷は、手強そうな問題でもチャレンジする意欲を見せてくれる受験生を歓迎します。

本郷中学校

本郷中学校

インタビュー1/3

本郷中学校
本郷中学校旧高松藩松平家第十二代当主、松平賴壽により「個性を尊重した教育を通して国家有為の人材を育成する」という建学の精神のもと、1922年に創立された。巣鴨駅から3分、駒込駅から7分という山手線内においては屈指の好立地である。
教育方針は、「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」。教科学習だけでなく、部活動や行事においても、理念や教育方針が浸透している。6年後の大学実績だけではなく、大学卒業後に、どんな道を歩み、どう生きていきたいのかを見据えて、各自が目標に向かって自分で自分を高めていけるためのサポートとして進路指導が行われている。高い大学合格実績は、あくまでもそのプロセス段階での一つの結果である。
文武両道が、教育方針の一つの柱であるが、全国レベルの部活動であっても、中学は週3日で1日2時間以内、高校では週5日1で日3時間以内と活動時間が決められている。いかに質の高い準備が活動の中で行われているかを感じさせる。先輩後輩という縦のつながりの中で様々な経験をすることにより、自分の役割を見出し、自主的に行動する力が育まれる。
一人で集中したい場合は図書室や自習室、仲間とのグループ学習やディスカッションはラーニング・コモンズ、というように様々な学習形態に合った施設が設置されている。生徒は、自分で目標を定め学習していく姿勢が強く求められている。自学自習が尊重される本郷の教育で、生徒は自分の道を自分で切り開く力を培っていく。