シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

開智中学校

2015年07月掲載

開智中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.中学・高校で社会で役立つ課題解決のプロセスを習得できる

インタビュー3/3

学び合いの授業が自主性を育む

中沢先生 今年、先端クラスの1期生が高校を卒業しました。6年間先端クラスを運営してみて、「自分で考える」姿勢が定着してきたと感じます。そうした先端クラスの主体性は一貫クラスにも徐々に波及しています。

小野先生 主体性を育むシカケの1つがグループワークなどによる「学び合い」の授業です。

私は現在高2を教えていますが、問題演習では最初にポイントを解説すると、あとは生徒が4〜6人のグループをつくり、一緒に考え、教え合いながら協力して問題を解きます。教員の解説を聞いているだけの受け身の授業と違って、自分で考えなければならない環境に置かれることで主体的に学ぶ姿勢が身につきます。また、周りの友達の様子を見て「自分もやらなければ」と思うようで、生徒は意欲的に取り組んでくれています。

中沢先生 高3の放課後の特別講座を見ても、教員が最初から最後まで講義することはありませんね。大学入試問題を自分たちで考え、教え合って解いており、教員はサポート役に徹しています。こうしたスタイルは低学年でも意識してできるようになりました。

教頭/中沢千洋先生

教頭/中沢千洋先生

疑問を放っておけないタイプは『自分で考える』から伸びる

中沢先生 「自分で考える」姿勢は数学や理科で顕著な印象です。低学年のときに「おもしろいなあ!」と理科に夢中になっていた生徒は、高学年になって大きく力を伸ばしているように思います。

鈴木先生 そうした生徒は好奇心旺盛で「なぜ」を放っておけないので、難しい問題も「自分で考えたい」という思いが強い。それが自分で学び進める原動力になるのではないでしょうか。

子どもの興味はとんでもないところへ向かってしまうと時間を費やしかねませんが、授業という時間の制約がある中で、生徒さんの興味とどのようにバランスをとっていらっしゃいますか。

鈴木先生 実験プリントに、個々に気づいたことや質問などを書いて教員とやり取りできるスペースを設けています。実験の次の授業は、実験のまとめや確認のほかに、プリントに書かれた生徒の疑問を紹介してクラス全体で共有したり、社会でどのように役に立っているのかを話しています。

探究テーマは、仲間や専門家の助言を受けられる仕組み

鈴木先生 中には、実験で生まれた興味を「探究テーマ」として取り組む生徒もいます。

探究テーマは各自が興味のあるテーマを見つけて、疑問→仮説→検証を実践します。ある生徒は、まずLEDについて調べると、さらにLEDの未来の新製品を自分なりに予測していました。テーマを広げたり、とことん突き詰めたり、テーマ展開は自由です。興味の方向が途中で変わってテーマを変更しても、担当教員がうまくサポートします。

中沢先生 そのために「探究テーマ室」を設置して、探究テーマ室長と各学年の代表教員が中心になって、今年度の方針や学年の探究活動について定期的に話し合っています。教員自身もこの探究プロセスの研修を受けて勉強しています。

すぐに身につくものではありませんが、学校行事やクラブ活動など授業以外でもこの手法によるアプローチを何度も繰り返して定着を目指しています。

小野先生 探究テーマは基本的には自分で取り組むのですが、専門家や仲間から助言を受けることができる仕組みになっています。探究テーマが生物系や化学系などテーマが近い生徒同士で「ユニット」をつくり、発表したり議論したり学び合っています。

また高1の「首都圏フィールドワーク」では、各分野の専門家に生徒が自分でアポイントメントを取って話を聞きに行くこともしています。自分の探究テーマの仮説の方向性について専門家のアドバイスを受けるよい機会になっています。

開智中学校

開智中学校

探究プロセスは外国人へのプレゼンにも通用

鈴木先生 疑問→仮説→検証の探究プロセスを踏まえて説明されると、聞き手も理解しやすいものです。探究プロセスは、本校の探究テーマ・フィールドワークの集大成である高2の「英国フィールドワーク」でのコミュニケーションで大いに役立っています。

このフィールドワークは生徒6人に現地の大学生1人のグループをつくり、生徒全員が各30分、自分の探究テーマをプレゼンテーションし、それについてディスカッションします。ロジカルに説明できるので外国人にもわかりやすいようで、「私ならこんな仮説を立てるよ」と意見を言ってもらうなどディスカッションはなかなか活発です。その様子を見ると、探究プロセスは世界でも通用すると感じます。

自分で立てた仮説の視点がオリジナルのアイデアになる

鈴木先生 社会で直面する課題の多くは“正解”がありません。したがって、自分なりに仮説を立て検証し、うまくいかなければ別の仮説を考える…というアプローチを繰り返します。通常は大学の研究室で初めて教わるような課題解決のプロセスを、本校の生徒は中学・高校で身につけることができるのは幸せなことですし、卒業生にとっては大きなアドバンテージになると思います。

中沢先生 教員としては、常に上を目指しているため、疑問→仮説→検証のプロセスがなかなか定着しない、調べ学習に終始していると感じてしまうのですが、卒業生から「役に立っている」と聞くと、教員が思っているより生徒に根付いているのかもしれません。

鈴木先生 疑問について調べる前に自分で仮説を立てることで、自分なりの視点が持てるようになります。それが課題解決策のオリジナリティーになります。自分が持っている知識や経験を総動員して仮説を考える作業を楽しんでほしいと思います。

開智中学校

開智中学校

インタビュー3/3

開智中学校
開智中学校心温かい21世紀のリーダーを育てるために環境・設備に最善を尽くし、研究を重ねた中高一貫の教育内容で、1997(平成9)年、現開智高校を設立母体として新設開校。綿密に練られた理念と教育計画は、開校当初より大きな注目と人気を集める。開智中高は一貫部、開智高校は高等部と区別改称。2004年、小学校(総合部)を開校。
5階までの中央の吹き抜けが、開放的な生活環境をつくる。質問コーナーを設置した開放的な職員室。ブース式で140席ほどある自習室。蔵書約4万冊の図書室。演劇発表や講演会ができる340席のホール。バスケ2面の体育館。広大なグラウンドなど施設に恵まれている。昼食は中1・2まで弁当持参。ただし希望者には給食弁当あり。中3から食堂などが利用可。
「創造型・発信型の心豊かな国際的リーダーの育成」を教育の目標に掲げ開智教育の3つの柱である「高質な知識と思考力を育てる教科の授業」「学ぶ力を育て探究力・発信力を養う探究テーマ・フィールドワーク」「行事・部活動・生徒会活動などによる自主性の育成」に取り組む。
難関大学を目指す徹底的な中高一貫進学校型カリキュラム。2年ごとに3つのステージに分類。I類・II類、文系・理系分けなど、目標や適性に合わせ複合的にコースを組みあげている。週2回の英会話はネイティブとのチームティーチング。『フォニックス』『トレジャー』を使い、英語で自分の意見を発信、ディスカッションできる高度な英語力を養成。英・数は習熟度別分割授業。補習・講習、プリント、小テストなどメニュー豊富できめ細やか。本(知識)を前提とせず体験から学ぶ「フィールドワーク」や、一人ひとりがもつ「探究テーマ」は、受験レベルを超えた創造的学力を養う同校ならでは。2009年に「先端創造クラス」を新設。自ら考え学ぶ創造的学力を高度に育成する。
フィールドワークは、中1は磯、中2は森林へ行く。中3で関西・広島、高1で首都圏、高2でイギリスへと活動範囲が広がる。クラスの枠を越え、探究テーマを深めながら、発表、取材、討論をとおして、国際的視野に高めていく。中2~高1の希望者対象にニュージーランド・オーストラリア語学研修もある。生徒会・部活動などに自主性が生かされ、THEグリーン委員会、ボランティア委員会など、生徒からの声で作られた委員会もある。高1・高2では「学部学科探究」を実施。いろいろな分野の大学の教授から講義を聞き、学問への興味付けをはかる。クラブは、運動部13、文化部9、同好会2あり、週4日活動。