シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

開智中学校

2015年07月掲載

開智中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.入試問題で「疑問→仮説→検証」のプロセスを体験する

インタビュー1/3

『花が咲く』という身近な現象に目を向けて考える

小野先生 本校では、(1)自分で疑問を見つけて、(2)仮説を立て、(3)実験や調査で検証する「探究テーマ」と「フィールドワーク」に力を入れています。そこで、受験生にも本校の「探究のプロセス」に沿って入試問題を解いてもらいたいと思い、この問題を含む大問を作問しました。

リード文の「多くの植物が毎年同じ季節の同じ時期に花を咲かせる」というK君の疑問を出発点に、花が咲くのに必要な光条件の仮説を立てて、いろいろな条件設定で実験を行い仮説を検証するという流れになっています。

疑問を見つけられないと、探究プロセスを経ることができません。受験生には「花が咲く」というような日常よく目にする現象を素通りせずに「なぜだろう?」と考える好奇心を大切にしてほしいと思います。

理科/小野正太先生

理科/小野正太先生

オナモミのデータをキクに当てはめて考えてみる

この問題がユニークなのは、実験結果はオナモミですが、キクについて聞いていることです。そうすることで「別の植物ならどうなるのか」という疑問がわき上がる様子が目に浮かぶようでした。

小野先生 ここでキクを取り上げたのは、オナモミの実験データを別の植物に当てはめて考えられるか、小学生の応用力を試してみようと思ったからです。

また、K君のおじさんは花を育てている農家、つまりは専門家として登場しています。本校のフィールドワークでは専門家を訪ねて自分が立てた仮説についてアドバイスを受けることもしており、それを模しています。農家ではオナモミを栽培していないのでキクを取り上げた次第です。

鈴木先生 キクについては、「人工的な光条件をつくる」という実験から、「電照菊」を思い浮かべた受験生がどれだけいたかということにも興味がありました。

社会科の担当者に聞くと、受験生の多くが電照菊について知っているそうです。電照菊の知識がこの問題と結びついたかどうかはわかりませんが、他の教科で学んだことを理科に活かせるといいなと思います。

『暗い時間が長くなると花が咲く』というキクの性質をとらえる

小野先生 オナモミの実験結果は作問過程の終盤に追加しました。これは、いろいろな正解が出ないように正解を極力集約するためです。実際はいろいろな答えが出ましたが、表現は違っても伝えようとしていることが合っていれば点数をあげました。その点は、小学生らしい表現の豊かさを感じました。

答案を見るとこちらが予想していたよりよく書けていました。正解できたということは、仮説を検証できたということだと思います。

模範解答としては、「光条件を与え続けて花を咲かせない」というのが一番シンプルでしょう。キクは暗い時間が長くなると花が咲く植物なので、光を当て続けることで咲かせないようにします。

「性質は同じ」という仮定ですが、実験データはオナモミなので、この問題に関しては具体的な時間の長さに触れていなくても採点に影響はしません。ただ、「暗黒条件を9時間より少なくして花を咲かせない」と書いた受験生はいました。オナモミのデータを見ると、「9時間以上暗黒条件にすると花が咲く」ことがわかりますから、これはオナモミのデータを正しく読み取ったうえで解答したとみなして正解としました。

開智中学校

開智中学校

誤答は思い込みで答えたパターンが多かった

小野先生 植物は暗い時間を基準に考えると、暗い時間が長くなると花が咲く植物(キクなど初夏から秋にかけて咲く)と、暗い時間が短くなると花が咲く植物(サクラなど春から初夏に書けて咲く)に大別されます。

誤答を見ると「明るい時間を多くして花を咲かせる」というように、「光がたくさん当たれば花が咲く」という思い込みで答えたとみられる答案が目立ちました。必要な情報を読み取って正解できた受験生がいた一方で、きちんと読み取れず先入観がはたらいたとみられる受験生もいたということです。この問題のように初めて見るタイプの問題を解く際は、持っている知識を活用するのはもちろんですが、先入観にとらわれずに与えられた情報を整理する力も必要になります。

子どもの疑問を親も一緒に考える

鈴木先生 「なぜだろう?」という疑問は、お子さんだけでなく親御さんも共有して家庭で話題にしていただきたいと思います。私は今年の先端A入試の化学分野の問題を作りましたが、昨年報道された金属加工工場の火災事故を題材にしました。この事故では、放水すると爆発する危険性があるため、初め消火活動を見合わせていました。ニュースを見た小学生の多くは「どうして放水して火を消さないのか」と思考が止まってしまったかもしれませんが、疑問をそのままにせず、自分で調べたり、親御さんに聞くなどアクションを起こしてほしいですね。本校では世の中の出来事に興味・関心のあるお子さんに入学してもらいたいと強く思っています。

開智中学校

開智中学校

インタビュー1/3

開智中学校
開智中学校1997年に岩槻に開校して以来、「平和で豊かな社会を作ることに貢献できる、創造型・発信型の国際的リーダーの育成」を教育理念とし、探究型の学びを中心とした新しい学習のあり方を模索し推進している。
岩槻キャンパスの自然豊かな敷地にある一貫部棟校舎は中央に5階までの吹き抜けがあり、開放的な空間となっている。その一階部分にはテーブルが複数置かれ、生徒たちが自習やミーティングなどで使用している。蔵書3万冊を超える図書室、広大なグラウンド、バスケコート二面がとれる体育館のほか、ステージ発表や講演などが行われるホールが複数あり、自習室にはブース式の学習スペースが140席程度用意されている。昼食は中2まで弁当持参だが、希望者には給食弁当もある。中3からは食堂などが利用できる。
入学時に入学者自身が自らの志望に応じてIT(目標の大学が決まっている人のコース),MD(医療従事者を目指す人のコース),GB(グローバルな仕事を志望する人のコース),FD(志望をこれから考えたい人のコース)の4つのコースのいずれかを選択する。加えて、全員がS特待生で構成される「創発クラス」を2024年度入学から設置。創発クラスでは数学の特別授業「ガウス数学チーム」など各教科でより発展的な授業を展開する。この4コース制と創発クラスは高1までで、高2からは志望大学別のクラス編成となり、医学部を目指す医系クラスも設置される。高2からは放課後の特別講座が開始され、生徒の多くが塾や予備校に頼ることなく難関大学への進学を目指す。さらに国際バカロレアのディプロマ・プログラムの候補校ともなっており、2025年4月以降はこの資格を利用しての海外有名大学への進学も視野に入る。
開智の教育の核となる探究活動は、中1から生徒全員が個人のテーマを決め、疑問・仮説・検証・結論のサイクルを何度も繰り返し、考察を深めていく。毎年行われる探究発表会ではポスター発表、スライド発表など様々な方法で生徒全員が発表を行う。フィールドワークは、中1は磯、中2は森で「はかる」「くらべる」をテーマにグループワークを行う。中3は関西をフィールドとして地域調査を行う。高1では首都圏で個人の探究テーマに関わる調査を実施し、高2ではイギリスの大学で現地の大学生を相手に探究の成果を発表する。中2~高1の希望者対象にオーストラリア・アメリカ・シンガポールなどへの語学研修もある。
生徒の自主性を重んじる校風で、生徒主体で作られた委員会や部活動もある。それ以外でも生徒の自主的な活動が活発で、SDGsなどの活動も盛ん。部活動は運動部18、文化部12、同好会1。ディベート部や文芸部かるた部門などは全国レベルでの活躍もある。