シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

開智中学校

2015年07月掲載

開智中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.データやリード文から情報を読み取る力を身につけよう

インタビュー2/3

『読み取り力』が記述力につながる

この問題など、受験生に求めている理科の記述力はどんなところですか。

小野先生 実験を行えば何らかのデータが出ます。実験はやりっぱなしではなく、実験データからどんなことがわかるかを読み取らなければ、結果が何を意味するか考察することができません。データの「読み取り力」があれば要点を押さえられるでしょうから、中学入試では記述力にもつながります。

東大の生物の入試問題は、大量のリード文の大半は知らないことが書かれているので、その場で必要な情報を読み取れなければ太刀打ちできません。生物というと“暗記科目”の印象があると思いますが、難関大学の入試問題では思考力が問われています。大学入試に対応するには、低学年のうちから考える力を鍛える必要があると感じています。

先端Aの問題は、知識量は必要ですが知識そのものを聞いてはいません。持っている知識をどのように組み合わせて考えるか、思考力が試される問題だと思います。

理科/鈴木崇裕先生

理科/鈴木崇裕先生

初見の問題にもチャレンジする受験生が増えた

鈴木先生 私の印象ですが、年々力のあるお子さんが受験してくれているように感じます。先端クラスの入試を始めて今年で7年目ですが、難易度が高い問題にも食らいついてくれますし、満点に近い得点も多くなっています。

小野先生 空欄が目立つような答案はあまり見当たりませんよね。記述問題や計算問題が多いにもかかわらず、30分という短い入試時間でこの問題量を解いているのには感心します。

受験生は見慣れた問題は端的にまとめられても、初見の問題は余計なことを書いたり文章が長くなる傾向があると思うのですが、いかがですか。

鈴木先生 解答欄からあふれるような答案はあまりありません。解答欄のスペースから必要な要素と優先順位、文字量を判断できる力を持ったお子さんが受けているのかもしれません。その点からも受験生のレベルが上がっていると感じます。

最新情報を紹介して生徒の探究心をくすぐる

小野先生 授業では科学のおもしろさを生徒に伝えようと、教科書に載っていない最新科学の動向を紹介するようにしています。例えば、これまでは乳酸が疲労の原因物質と考えられていましたが、最近の研究で別の疲労物質が原因であることが明らかになりました。おもしろいのは、疲労の原因物質が発生したときのみ、疲労を回復させる物質が発生することです。体は実にうまくできているとわかります。こうした最新情報を話すと生徒も興味を持ってくれます。このときは「どうすれば回復物質を増やせるのか」といった話に発展しました。

自分の中高時代の教科書と比べて、新しいことがたくさん載っていてうらやましいですね。大学入試問題は大学で最新の研究に取り組んでいる先生方が作成するので、新しい技術等を押さえようと、常に情報のアンテナを張っています。

物理や化学の分野に比べて生物や地学の分野は定説がひっくり返ることが珍しくありません。新事実に触れることで、今学んでいることが将来も正しいとは限らないという目で物事をとらえられるようになり、それが探究心にもつながっていくのではないかと思います。

開智中学校

開智中学校

インタビュー2/3

開智中学校
開智中学校1997年に岩槻に開校して以来、「平和で豊かな社会を作ることに貢献できる、創造型・発信型の国際的リーダーの育成」を教育理念とし、探究型の学びを中心とした新しい学習のあり方を模索し推進している。
岩槻キャンパスの自然豊かな敷地にある一貫部棟校舎は中央に5階までの吹き抜けがあり、開放的な空間となっている。その一階部分にはテーブルが複数置かれ、生徒たちが自習やミーティングなどで使用している。蔵書3万冊を超える図書室、広大なグラウンド、バスケコート二面がとれる体育館のほか、ステージ発表や講演などが行われるホールが複数あり、自習室にはブース式の学習スペースが140席程度用意されている。昼食は中2まで弁当持参だが、希望者には給食弁当もある。中3からは食堂などが利用できる。
入学時に入学者自身が自らの志望に応じてIT(目標の大学が決まっている人のコース),MD(医療従事者を目指す人のコース),GB(グローバルな仕事を志望する人のコース),FD(志望をこれから考えたい人のコース)の4つのコースのいずれかを選択する。加えて、全員がS特待生で構成される「創発クラス」を2024年度入学から設置。創発クラスでは数学の特別授業「ガウス数学チーム」など各教科でより発展的な授業を展開する。この4コース制と創発クラスは高1までで、高2からは志望大学別のクラス編成となり、医学部を目指す医系クラスも設置される。高2からは放課後の特別講座が開始され、生徒の多くが塾や予備校に頼ることなく難関大学への進学を目指す。さらに国際バカロレアのディプロマ・プログラムの候補校ともなっており、2025年4月以降はこの資格を利用しての海外有名大学への進学も視野に入る。
開智の教育の核となる探究活動は、中1から生徒全員が個人のテーマを決め、疑問・仮説・検証・結論のサイクルを何度も繰り返し、考察を深めていく。毎年行われる探究発表会ではポスター発表、スライド発表など様々な方法で生徒全員が発表を行う。フィールドワークは、中1は磯、中2は森で「はかる」「くらべる」をテーマにグループワークを行う。中3は関西をフィールドとして地域調査を行う。高1では首都圏で個人の探究テーマに関わる調査を実施し、高2ではイギリスの大学で現地の大学生を相手に探究の成果を発表する。中2~高1の希望者対象にオーストラリア・アメリカ・シンガポールなどへの語学研修もある。
生徒の自主性を重んじる校風で、生徒主体で作られた委員会や部活動もある。それ以外でも生徒の自主的な活動が活発で、SDGsなどの活動も盛ん。部活動は運動部18、文化部12、同好会1。ディベート部や文芸部かるた部門などは全国レベルでの活躍もある。