シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

フェリス女学院中学校

2015年07月掲載

フェリス女学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.人は一人として同じ使命をもって生まれていない。自分らしく生きる力をつけよう。

インタビュー3/3

小学生らしい生活を送ってきてほしい

受験生に向けてメッセージをお願いします。

B先生 小学校生活を十分に楽しんでもらえればいいと思います。学校生活の中心は授業ですから45〜50分、きちんと座って話を聞き、読んだり、書いたり、意見を述べたりすることができるお子さんであってほしいと思います。いろいろなことに興味、関心をもって耳を傾け、話の中で疑問に思うことがあれば質問し、家に帰ってから調べたり、本を読んだりできると、より良いでしょう。

中学校生活も、学校で授業を受けることが基本ですから、ただ受け身で過ごすのではなく、学校の授業に積極的に参加する姿勢を身につけてきてください。そして、自分の目で見て、鼻でにおいを嗅いで、手で触って…というように、五感を十分に使って、小学生らしい生活を送ってきてください。

フェリス女学院中学校・高等学校 LL教室

フェリス女学院中学校・高等学校 LL教室

読書で想像の翼を広げよう

A先生 やはり本を読むことが大切ですね。本を読むと、自分を取り巻く環境とは別のところにいる人たちとつき合えますから。徒然草でも「見ぬ世の人を友とするぞ、こよなうなぐさむわざなる」と言っています。

B先生 タイムマシンですよね。

A先生 そうです。時間、空間を超えて、いろいろな人たちとつき合うことができます。そのためには想像しなければいけません。考えなければいけません。いい加減には読めません。

B先生 本を読むお子さんは、いろいろな人の文章が頭に入っています。ですから、自分の言葉でも抵抗なく書くことができます。言葉に対する感性が育っているかどうかは、英語にも影響しますから、本はたくさん読んできてほしいですね。生徒たちには「新聞を読みなさい。せめてトップと社説は読みなさい」と言いますが、そういう意味では小学生もいろいろなことに関心をもってほしいですね。

古典的な作品は読む人の血や肉になる

A先生 どの分野でも、古典と言われるものは、読む人の血や肉になると思います。私も小学生の頃は「ファーブル昆虫記」などを心躍らせて読みました。それは、ただ知識を増やすものではなくて、想像の翼を広げるものだったから、読めたと思うのです。

B先生 たとえ学校の授業や入試に関係なくても、自分の興味を持つことは、その人の人生を豊かにします。小学生の時から自分らしさ、自分の世界、自分の考えだけに浸れる時間を持つことを心がけてほしいです。それは、大人が用意してあげるというよりも、大人が手を出さずにいて見守ってあげる。そうした時間があると、子どもは想像の翼を伸ばすことができるし、自分らしい思索ができると思います。

フェリス女学院 全校礼拝風景

フェリス女学院 全校礼拝風景

図書館の本を片っ端から読む生徒もいる

A先生 なにもやることがない時間というのは不思議なもので、思わぬ出会いがあります。私は中1の時に風疹にかかり、3日くらい休んでいた時に、たまたま目に入ったのが家にあったサルトルの本でした。あの時、風疹にかからなかったら、一生サルトルの本など読まなかったかもしれません。貴重な出会いでした。

B先生 昔は、家の本棚に文豪の全集や百科事典などがありましたよね。インターネットで調べられる時代になり、そういう環境ではなくなっていますが、本校では学校の図書館が補っています。「中学生の頃、図書館の本を片っ端から読んだ」という卒業生の話を時々聞きます。

どんな作家がよく読まれていますか。

A先生 それも本当にさまざまです。貸し出しカードを見ると、ライトノベルズなど軽い作品が好まれているようですが、重めの作品を読む生徒もいます。

B先生 文芸部も、毎年、作家を選んで文化祭で発表しますが、古典的な作家を扱うことが多いです。

できなかったことができるようになる。途中の化学変化を楽しもう

A先生 最初から4回転ジャンプができるスケーターがいないように、授業も常に新しいことを学ぶので、わからないことがあって当たり前。できない、わからないからといって、尻込みする必要はありません。

でも、そこで止まったら、永遠に4回転ジャンプができないように、勉強もできるようになりません。どうしたらできるようになるのかを考えて、こつこつと時間をかけて取り組むからこそ、できるようになるのです。

学んだことを理解し、自分のものにするためには、時間が必要です。できるようになるまで、時間と手間を惜しまずに取り組んでほしいと思っています。現代人は忙しいので、なかなか1つの問題にじっくり取り組むことができないと思いますが、短時間で効率的にやろうとすると、あるところで止まってしまうのではないでしょうか。

B先生 はじめは「ダメだ。相性が悪い」と思っていた教科、科目が、粘り強く取り組んでいるうちに、実は自分の身に一番合っていたということもあります。

A先生 中1の時に英語の補講を受けた人が、大学の英文学の先生になることもありますからね。化学変化みたいなものを楽しんでほしいと思います。

フェリス女学院中学校・高等学校 図書館

フェリス女学院中学校・高等学校 図書館

自分らしくあれ

B先生 かつて希望の中学に入学したことに満足し、「これからは好きにします」と宣言して、なにもやらなくなってしまう生徒がいました。最近は宣言をしないで勉強もなにもしなくなるので、「どうしてしまったのだろう」と周りが騒いでしまいますが、本人は少し疲れているだけ。多少の浮き沈みはあっても、受験を通ってきた生徒たちなので、力はあります。中高時代にどう自分らしく、その力を発揮できるかが大切なので、あたたかく見守りたいと考えています。

A先生 キリスト教の考え方でいえば、人間は一人として同じ使命をもって生まれていません。180人いれば180通りの使命があります。人と同じでなくていい。上に立たなくていい。神様からこう生きなさいと言われていることに気がつけば、どの大学に行かなければいけないということから解放されます。そこがキリスト教学校のいいところだと思います。

B先生 毎朝の礼拝で「あなたはあなたのままで良い」「あなたにふさわしいたまもの(才能)を神様が与えてくださったので、それを大切にしなさい」「どのような時でも神様はあなたを支えてくださる」というようなことを繰り返し聞きますので、「いつまでも自分らしくありたい」という思いが根づきます。医学部を出ても、その後、「思うところがあってパリの音楽院へ」という生徒がいましたが、自分の思いに素直に、そしてしなやかに生きている卒業生が多いという印象があります。

インタビュー3/3

フェリス女学院中学校
フェリス女学院中学校フェリス女学院の教育理念“For Others”は、誰か特定の人によって提案されたものではなく、関東大震災後に、誰が言い出すともなくキャンパスに自ずとかもし出され、フェリス女学院のモットーとして自然に定着したものだということです。フェリス女学院では、“For Others”という聖書の教えのもと、「キリスト教信仰」・「学問の尊重」・「まことの自由の追求」を大切にしています。そして、生徒一人ひとりが、6年間の一貫教育を通して、しなやかな心を育み、つねに与えることができる、“For Others”の精神を持った者へと成長することをめざしています。校章には、盾に創設時の校名Ferris SeminaryのFとSの二文字がデザインされています。盾は外部の嵐から守る信仰の力を表し(「エフェソの信徒への手紙」6章16節)、白・黄・赤の三色は信仰、希望、愛(「コリントの信徒への手紙一」13章13節)を表しています。
外国人墓地や歴史的な建造物の多い異国情緒あふれる地域にある、落ち着いた雰囲気の学校です。創立者メアリー・E・ギターがこの地に開学して以来の歴史が、校舎を包む木々などから感じられます。2000年の創立130周年において新校舎建築となり、2014年には新体育館、2015年夏には新2号館が完成しました。中高の図書館には、図書・視聴覚資料・雑誌・新聞などの94,000点を超える資料があります。授業の課題制作や調べものや自習のほか、昼休みや放課後にも多くの生徒が利用しています。書庫は開架式で、図書を手に取って自由に選ぶことができます。
クラブ活動がたいへん盛んで、同好会、有志も合わせると約60近い団体が活動しています。中学生では、ほぼ100%の生徒がクラブに参加しています。ほとんどのクラブが中1から高2まで一緒になって活動し、同学年だけでなく、先輩・後輩という他学年との人間関係が築かれています。中3からは、クラブ以外でも、気のあった仲間同士で同好会や有志を結成して文化祭に参加するなどの活動もあります。