シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

自修館中等教育学校

2015年04月掲載

自修館中等教育学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.コミュニケーションの中で言葉を覚えるのが1番。身近な大人と会話しよう。

インタビュー3/3

英語での発表にも取り組み始めた

黒瀧先生 国語の読解力、表現力はもちろん、歴史の好きな生徒は予想のつかない深いところまで調べていますから、「探究」をきっかけに、将来そういう方向に進みたいと考える生徒がいます。理系も同様で、かなり影響力をもった活動になっていると思います。

鈴木先生 5年生から文理に分かれますが、自然科学を扱った生徒が理系を選ぶ傾向は強いですね。卒業生を見ても、進路選択において影響力を及ぼしているのはたしかです。

海老名教頭 昨年初めて「探究」の発表を英語でも行いました。英語は使わなければ身につかないですよね。伝えたいものがあれば、英語で伝える動機づけになるので、日本語のプレゼンと同じように英語でプレゼンをすることにしたのです。3年生は先ほどお話した探究文化発表会に向けての、パワーポイントを使ったプレゼンをカスタマイズして英語の資料を作り、英語で発表することにしました。4年生は修論を書き上げたところで、改めてパワーポイントで仕立て直して、発表するというかたちで取り組みました。いずれも初めての経験で、準備にとても苦労していました。かつては日本語でのプレゼンも、苦労して創り上げていましたが、いろいろと趣向を凝らした発表を後輩たちが見て、自分の番になった時にまた工夫を加えて、というように毎年積み重ねてきて、かなり上手になりました。一人7分間という時間で、多くの情報量を、的確に発表できていると思います。英語の方はまだ2年目なので、そのレベルには達していませんが、これからどんどんよくなっていくのだろうなという手応えはあります。

国語科主任/鈴木雄一郎先生

国語科主任/鈴木雄一郎先生

英語のレベルも高く、自信をもってスピーチしている

英語のプレゼン準備はどのように行うのですか。

海老名教頭 それもゼミの教員が、と言いたいところですが、ネイティブの教員が担当し、表現方法などのアドバイスを行います。

鈴木先生 4年生もクラスで予選を行うので、必ず英語で発表しなければなりません。クラスで2名が代表に選ばれて、2月に発表を行いました。私が言うのもおかしいですが、うまいですよね。自分は高校時代に、こんなにきれいな発音で英語を話せただろうかと思うくらい、よどみなく話せていました。また、代表に選ばれたということで、原稿を見ないでスピーチをしたいという意欲も高く、ほとんどの生徒が原稿を見ることなく、自分の言葉でしっかりと伝えていました。これまで自分が調べ上げてきた内容なので、自信をもってスピーチする姿が印象的でした。

聞く側にはなにか資料が渡されるのですか。

鈴木先生 題名と簡単な内容が書いてあるものを渡します。それを見ながら、どんなことを言っているのか、類推しながら聞くこともまた勉強だと思います。

全員がやりきれるのですか。

海老名教頭 それなりのかたちにはさせます。英語の発表でも論文の執筆でもいろいろな体験を、この年代でやってみることが大切です。将来、計画的にものづくりに取り組む時に、この体験が参考になると思います。

興味を広げる土曜セミナーも開催

土曜セミナーという、おもしろそうな講座もありますよね。そちらは希望制ということですが、どのくらいの生徒さんが参加されるのですか。

海老名教頭 セミナーごとに募集定員がありますので、そのつど参加人数は異なりますが、充足率はかなり高いと思います。土曜日に行うことが多いので、部活動を優先させる生徒もいますが、まったく参加していない生徒はいないと思います。

外部講師に依頼することもあれば、先生方が趣味や特技を活かしたセミナーを開催することもあるのですよね。

黒瀧先生 教頭は古文書が好きで、古文書セミナーをやっています。国語科は文学散歩などですね。授業で夏目漱石の「こころ」を扱う時は、その前に「こころ」にゆかりのある地を訪ねてみようと、漱石のお墓がある雑司ヶ谷に行ったり、小説の中に出てくる東大の一角を訪ねたりして、歩きながら小説の世界をイメージするようなことをしています。こちらも楽しんでやっています。一人ではなかなか行きづらいので、きっかけを作り、参加することにより、おもしろさを感じてもらえればいいと思っています。

生徒さんの興味に触れられる機会が、学校生活の中にたくさん散りばめられていますね。

黒瀧先生 国語の授業では、国語というところでしか接点をもつことができませんが、セミナーを通してその生徒の異なる一面を見ることができるので、教室では見られない意外な一面を見つける楽しさがあります。

自修館中等教育学校

自修館中等教育学校

国語科で大切にしているのは文化・感性・論理・自己表現

国語科で大切にしていることがあれば教えてください。

鈴木先生 4つあります。1つは文化です。百人一首や漢字など、日本ならではの先人から伝わる文化を大切にしています。2つめは感性(心)です。文学的な文章から感性的なものを読み取る、あるいは育むことを大切にしています。3つめは論理です。物事を論理的に考えることを大切にしています。4つめは自己表現です。自分が理解したことを、自分の言葉で表現することを大切にしています。4つの柱を軸に各学年でカリキュラムを組んで授業を進めています。

それらが入試問題にうまく反映されているような気がしたのですが、意識はされていますか。

鈴木先生 人間は言葉を使って表現する、言葉を使って他者とかかわっていく。言葉を使うから人間なのです。言葉を大事にする姿勢は入試問題でも見ていきたいと思っています。問題の形式は文章題や漢字など、オーソドックスですが、それがすべてなのです。ですから日頃から言葉を大切に、いろいろな言葉に触れて過ごしてほしいと思っています。この手紙も例外ではありません。普段からいろいろな言語に触れたり、手紙を書く機会があったり、ボキャブラリーが豊かになっていくような生活をしていれば、それほど難しくなかったと思います。なるべく、小学校やそれ以前にいろいろな人とかかわり、いろいろな書物に触れてきてほしいと思います。そういう中で、頭で理解し、考えたことを言葉で表現する経験もしてきてほしいと思います。

作文の添削は大人がしてほしい

鈴木先生 メールやLINEなどのコミュニケーションツールだと、一言ですませることができます。親しい人たちとの会話なら、それでもいいと思いますが、それだけでは困ります。社会に出て必要とされる言語力は、中等教育の段階で、身につけなければいけないことだと思いますので、その入口となる入試問題で最低限のことは問いたいと考えています。

保護者の方にお願いしているのは、作文の添削を、おうちの方にしていただきたいということです。子どもは自分の言葉が正しいかどうか、客観的に判断できません。ですので、大人の立場で正しい言葉使いを指摘してあげてほしいのです。やりとりの中で、おうちの方が困ることもあるかもしれませんが、学習を通して親子のコミュニケーションを深めるチャンスですので、ぜひお願いしたいですね。

黒瀧先生 言葉の上達には、使っている人に触れるのが1番いいのです。身近にいる親御さんや先生との会話を大事にし、その中で自然に体得していくことが1番てっとり早いし、定着する方法だと思います。辞書を引くことも大事ですが、対人の中で言葉を覚えていく、使っていくことが、私は1番大事だと思っています。

自修館中等教育学校

自修館中等教育学校

インタビュー3/3

自修館中等教育学校
自修館中等教育学校スクールバスにて小田急線愛甲石田駅より約5分、JR東海道線平塚駅より約25分。目の前には緑多い大山と丹沢の山々があり、恵まれた自然環境。校舎は、5階建ての教室棟と実験棟からなり、図書室、PC教室、自習室などを備え、高度情報化社会に対応したつくり。体育館や屋上にプールを備えたアリーナもある。学校食堂の枠を超えたレストラン、カフェテリアも好評。
建学の精神「明知・徳義・壮健」の資質を磨き、実行力のある優れた人材を輩出し人間教育の発揚を目指す。そのため、学力とともに、「生きる力」を育成するテーマ学習や心の知性を高めるEQ教育などユニークな取り組みを実践。教育を“こころの学校作り”ととらえ、学校を想い出に感じ、帰れる場所に、と家庭とも連携を保ちながら、きめ細かい指導にあたっている。
中1~中3を「前期課程」、高1~高3を「後期課程」とした、高校募集のない完全中高一貫の体制。3カ月を一区切りとする4学期制で、メリハリをつけて効果的に学習を進めている。英・数は「後期課程」から習熟度別授業を実施。英語の副教材には、『ニュートレジャー』を使用。興味のあるテーマを選んで継続して調査・研究を行う「探究」の授業もある。指名制の補習と希望制の講座がさかんに行われている。また個別指導が多いのも特徴。
週6日制だが、土曜日の午後は自由参加の土曜セミナーを開講。「遺伝子組み換え」「古文書解読」「伊勢原探訪」など生徒対象のものだけでなく、保護者対象の講座も多数用意している。「探究」以外でも心の知性を高める「EQ」理論に基づいた心のトレーニング「セルフサイエンス」や、国際理解教育など、特色ある教育を展開。中1のオリエンテーション、山歩きに挑戦する丹沢クライム、芸術鑑賞会などの行事がある。文化部9、運動部10のクラブ活動も活発。「探究」の一環として、高2でカナダでの海外フィールドワークが行われる。