出題校にインタビュー!
自修館中等教育学校
2015年04月掲載
自修館中等教育学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.机上でも学習している敬語。知識力だけでなく、活用力を磨こう。
インタビュー1/3
生徒の様子をヒントに出題
黒瀧先生 本校には「探究」という特徴的な授業があり、1年生から3年生までが週1回、総合学習として取り組んでいます。1年生はグループ活動が中心ですが、2年生からはゼミに分属して、個々に決めた研究テーマについて、本を読み、レポートを書き、発表するという活動をします。その集大成が年に1回行われる「探究文化発表会」です。文化祭の位置づけで10月下旬に行っていて、そこで自分の調べたものを発表します。
私もゼミをもっていますが、調べ学習の1つの方法としてフィールドワークを行います。いろいろなやり方がありますが、会社や大学などに訪問してお話を伺うことも少なくありません。できるだけ生徒にアポイントメントを取らせていますが、なにを伝えればいいのかがまとまらず苦心している様子を見て、このような問題を思いつきました。
この問題では、盛り込んでほしい項目をもらさずに盛り込めるのか。特に、相手様にお願いをするので、敬語を使えるかが鍵になります。塾などでも敬語を勉強していると思いますが、それを生きた形で使えるかということですね。また、これは採点をしていて気づいたことですが、身近な大人が敬語を使っているところを聞いているのかどうかも、測り知ることができる問題になったのではないかと思います。
学年主任/黒瀧裕之先生
伝える力を問いたかった
なぜ今、このような問題を作ろうと思ったのですか。
黒瀧先生 生徒の様子を見ていて、少しずつですが自分の考えていることをコンパクトにまとめて相手に伝える、相手の考えを受け止めるということが、できなくなってきているのかなという気がしたからです。最近はメールでのやりとりが当たり前になり、トラブルなどもありますが、それも伝える力が不足しているからではないかと思います。
海老名教頭 文科省がやっている全国学力学習状況調査に、本校は3年前から参加して3年生が毎年受験をしています。基礎基本を問うA問題と、活用力を問うB問題(PISA型)があり、そこでハガキの使い方が出た年がありました。本校の生徒は「探究」で依頼文などを書く機会をもつため、うまく書けたのではないかと思いますが、多くの受験生は目上の人に手紙を書く機会はなかなかないので、とまどったのではないかと思います。
この問題の得点率は約5割
印象としてはいかがでしたか。
黒瀧先生 解答用紙に6行程度の欄を設けました。多くの受験生がなにかしら書いていましたが、最後の問題だったので白紙もありました。時間が足りずに書けなかったのか、普段こういうことを経験していなくてとまどってしまったのか、わかりませんが、差が出た問題になったような印象があります。
採点方法はどのように行いましたか。
黒瀧先生 条件作文の採点方法については、学校説明会などでもお話していますが、条件をすべて満たしていれば満点です。この問題の場合は、条件のほかに、項目もあります。さらに目上の方にお願いする文章ですので敬語が使えるかどうかなど、採点ポイントがいくつもありました。ですからそれらをすべて満たしているかどうかで採点し、誤字・脱字がある、あるいは言葉の使い方が間違っているなどの問題があれば減点するという方式で採点しました。
出来はいかがでしたか。
黒瀧先生 得点率は全体で5割程度でした。例年、条件作文の平均得点率は5〜6割なので想定内ではありますが、個人的にはもう少しできてもいいように思いました。
書き出しが難しかったかもしれませんね。
黒瀧先生 そうですね。きちんと書けている受験生は、問いを読み取り、理解して書いているという印象でした。「探究という授業をしていて、私は本のことを調べています。いろは社さんに本ができるまでのことを伺いたいので…」というように、探究を踏まえて書き出すことができた子はスムーズに進められたと思います。逆にそこが抜けてしまうと、ちぐはぐな文章になってしまいます。日時や訪問先は入れられたとしても、全体の中では「探究」の説明がないと、何のお願いなのか、わからなくなってしまいますよね。
自修館中等教育学校
探究を知っていれば書きやすい問題
鈴木先生 私は答案を見て、思っていた以上に敬語を使って書けているなという印象を持ちました。もう少しぞんざいな言葉を使うと思っていたので驚きました。自分が子どもの頃、こんなに使えたかなと……。意外と大人が使う言葉を聞いているのですね。条件に「訪問させていただく」という言葉が入っているので、この言葉をそのまま使っている子もいましたが、「伺う」という言葉に置き換えている子もいました。
黒瀧先生 中には「行きます」という意思表示だけのものもありました。相手の都合を伺うということが抜けているのです。
鈴木先生 そこが差のついたところですね。いきなり「この日に行きますので、よろしくお願いします」という文章では、問の中にある「お願いする」という項目が抜けてしまいますので、減点になります。
黒瀧先生 「探究文化発表会」を見たり、「探究」がどういう取り組みであるかを理解していたりすれば、問いの文章をすんなり飲み込めたと思います。
想像力が働いている解答も見られた
採点をしていて、先生方の間で話題になったような解答はありましたか。
黒瀧先生 「探究」を踏まえて、「私はこういうことに興味があります」などという文章を前振りで入れた受験生がいました。
鈴木先生 「自分は本が好きで、いろは社さんの本をいつも楽しみにしています」というような、相手のことを考えて書こうとしている姿勢が伺える解答がありました。想像力が働いていていいですよね。
実際に書いてみると、盛り込む内容が多くなってしまい、解答用紙の枠内に収めるのは大変だと思いました。受験生の皆さんはいかがでしたか。
黒瀧先生 答案を見る限り、大半が枠内に収めていたと思います。
鈴木先生 私たちも模範解答を作ったので、文章が長くなってしまう気持ちはわかります。大人の立場で作ると、いろいろなことを書こうとするので、解答用紙に設けた枠では収まりきらないのです。ですから、問いに対してどのような答えであればいいのかを大前提に、最低限の内容だけに絞り込みました。その上で、あの程度の解答欄を設けました。入試では限られた時間の中で書かなければなりません。問われていることに、いかに適切に応えられているかというところを見ますので、この程度の解答欄で問題なかったかと思います。
自修館中等教育学校 『探究』
インタビュー1/3