シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

鷗友学園女子中学校

2015年02月掲載

鷗友学園女子中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.算数でも数学でも、チカラを伸ばすには手を動かすことが大事!

インタビュー1/3

避けずに、手を出してほしい

出題意図から教えてください。

小林先生 本校の入試問題は、きちんと勉強をしてきた受験生がその成果を出せるような定番の問題を中心に出題しています。ただ、それだけにとどまらず、その場で考えて解くような問題もなるべく出題できるように心がけています。

この問題は後者の問題の一つです。問題の中から条件を読み取り、整理して、丁寧に場合分けをしながら調べる能力を見たいと思い、出題しました。

一時期、問題の量が増える傾向にありましたが、原点に戻り、問題数を減らして、こうした問題にもチャレンジする時間を取ることにしました。問題文の中に問題を解くためのさまざまな情報や、それらを組み合わせるヒントをすべて盛り込んでいますので、問題数は少なくても、きちんと勉強をしてきた生徒には点数が取れる問題ですし、うわべの勉強しかしてこなかった受験生には手が出ない問題になっていて、十分に差の出る問題になっていると実感しています。

数学科主任/小林 都央先生

数学科主任/小林 都央先生

(問1)(問2)を答えられた受験生は全体の5%

正答率はいかがでしたか。

小林先生 (問2)まで完答した受験生は、全受験生の5%でした。途中点をつけていますので、(問2)を得点率で見ると23%でした。(問1)ができなければ(問2)はできませんから、当然(問2)の得点率は低くなります。しかし、かなりの受験生が手を動かしていた状況は分かります。合格者でみると(問1)は80%、(問2)は30%ができていましたので、きちんと書き出して整理できた受験生は合格しているということになります。

不正解の解答では、数えもれが多かったです。2次試験なので、(問1)にも白紙がありました。入試なので「合格点を取ることを一番に考えなさい」という指導をされている受験生もいますから、真ん中辺りに見慣れない問題があると飛ばすということはあるでしょう。しかし、こちらとしては初めて見る問題にもチャレンジしてほしいという気持ちがありますので、この問題をどこに配置すべきかは、よく考えた上で出題しました。定番の問題は前半に置きたい。最後の問題はグラフの読み取りが中心ですので、その前だと手を出してもらえないかなと。そう考えると、目新しい問題は真ん中辺りに落ち着きますが、まず一通り問題を見て、終盤の問題に塾で習っているような、取りかかりやすい問題があれば、そちらから解く受験生も多かったのではないかと推測しています。

書き出すチカラをつけよう

数を数えるということは、中学、高校、あるいは鷗友学園の大切にしていることとどういう関係があるのですか。

小林先生 私どもは比の関係をかなり多く出題しています。そうするとパターンの問題が中心になりますので、数えあげは場合分けなどで、何に注目し、どの部分に基準を置いて調べていくかを見ていきたいと考えています。中学・高校でも、手を動かすことが一番差のつくところですので、まずは書き出してみる。その上でより良い方策を見つけるという、学びの取りかかりになればよいと思っています。記述の問題を出題する意図もそこにあります。数が並んでいるたどたどしい答えでも、少しでも整理されていれば私達は読み取ります。その上で、ここは足りているからこの部分の部分点はつけられるだろうという判断をしながら採点しています。

鷗友学園女子中学校 生徒作品

鷗友学園女子中学校 生徒作品

勉強してきたことを評価できる入試にしたい

1次、2次、3次と問題をつくるにあたり、心がけていることを教えてください。

小林先生 難易度が変わらないように心がけています。作問をすると多少のでこぼこは出ますが、1次はこの学校を第1志望にしてくれる受験生ですから、こちらが説明会などで述べている定番の問題などをきちんと出題したいと考えています。グラフの読み取りなど、本校の受験対策をしっかりしてきてくれた受験生を、きちんと評価できるような問題を揃えるようにしています。2次では、1次で不合格だった受験生や、他校を受験された受験生もいて、かなり分布が開いてしまいますので、うちの学校に入りたいと思って、1次、2次と受けてくれている受験生がどのあたりにいるだろうと想像しながら、問題の配置などを考えたりすることもあります。

第一志望の受験生が増加。2016年から2回入試へ

2016年入試からいよいよ2回になりますね。

小林先生 その通りです。第一志望の受験生にたくさん入ってもらいたいという思いを前面に打ち出し、2002年に入試日を2月1日に移しました。1次の合格者が50~70名あたりから始まり、2015年入試は合格者が300名にとどくかどうかというところまで来ています。そこまで第1志望の受験生が増えてきましたので、2016年入試から2回入試にさせてもらいました。第一志望の受験生は、過去問をしっかりやってきてくれていると思いますので、算数にかぎらず、どの教科でも、そういう子ども達がきちんと実力を発揮できる問題を出したいと思って作問をしています。入試問題は、鷗友学園が求めている生徒像を届けるメッセージであると思っていますので、第一志望の受験生が1次でたくさん入ってくれると、素直に学校に溶け込んでくれる気がしています。

鷗友学園女子中学校 実習園

鷗友学園女子中学校 実習園

中1の一番好きな科目は数学

数学に積極的に取り組む生徒さんが入ってきているという印象ですか。

小林先生 それはもう、優秀なお子さんに受験していただいているので、意欲は高いと思います。数学には時間を使っていますので、生徒も一番好きな科目は数学ですし、家で一番勉強する科目も数学です。特に中1の段階では多いですね。段々と難しくなってきますので、小学校のとき苦手だった気持ちを思い出してしまう生徒もいないわけではありませんが、私達はみんなでわいわい学んでいくという雰囲気を大切にしています。わからなければ私達教員にも聞きますが、友達同士でも聞き合える関係がどんどんできています。

インタビュー1/3

鷗友学園女子中学校
鷗友学園女子中学校1935(昭和10)年、東京府立第一高等女学校(現・都立白鷗高等学校)の同窓会鷗友会により、母校創立50周年事業として設立。今日の繁栄の基礎を築いたのは、女子教育の先覚者で第一高女の名校長とうたわれた市川源三と、内村鑑三・津田梅子の薫陶を受けた石川志づ。
「慈愛と誠実と創造」の校訓のもと、キリスト教精神を取り入れた全人教育をおこなっている。「女性である前にまず一人の人間であれ」の教えのもと、一人ひとりが自分の可能性に挑戦し、社会の中で自分の潜在的な能力を最大限に発揮することを目指す。生徒・教師が一体となり<よろこび>と<真剣さ>のあふれる日々を送っている。
全館冷暖房完備で、ゆとりと明るさを追求した特別教室・図書室・ホールを整備。非常災害時のための危機管理システムも整った太陽光発電や雨水利用システムなども導入している。実習園、屋外プールなどもある。校外施設として、軽井沢に追分山荘をもつ。
ていねいな指導に定評があり、教師陣はハイレベルな指導のためにカリキュラムの研究検討を重ね、独自の教材を使った授業も展開する。中学では先取り学習をしつつ、聖書・園芸・書道も正課に取り入れている。英語は「使える英語」を目指し、すべて英語で授業を行っている。中2の英・数はクラス2分割。英語と数学は高校で習熟度別授業を導入する。中1では自分レポートを作成。高2で文系(芸術系を含む)・理系コースに分かれ、選択科目を多く設定し、きめ細かく進路に対応している。高3では主に演習を実施。数多くの特別講習や小論文の個別指導など、進学指導も充実している。
2期制を実施。進路指導では、自分史・環境・福祉・職業・平和などに取り組む。社会で活躍する先輩の話を聞く機会もあリ、自分を見つめ、社会を知り、生き方を考える。70年の伝統を持つリトミックを全学年で週1時間実施し、身体表現を豊かにし、運動神経を高める。課外活動として、茶道、華道、書道、手話、英会話、Debate Workshopもある。文化祭や運動会のほか、スクールコンサート、クリスマス会、中1の軽井沢追分山荘生活学習、中2のスキー教室、中3の沖縄修学旅行などの年間行事を実施。チョート校サマースクールやチェルトナム・レディース・カレッジ研修など、国際理解教育にも力を入れている。クラブ活動は、学芸部8、運動部13、同好会15で、中高合同で活躍している。