シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

鷗友学園女子中学校

2015年02月掲載

鷗友学園女子中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.生徒の理解力が全体的に高まり、さらなるチャレンジが始まっている。

インタビュー3/3

文系・理系の比率は半々

小林先生 10年、20年前から考えれば、理系のクラスがどんどん増えて、それに伴い国公立大学を受験する生徒も増えています。私達も真剣に取り組んでいますが、生徒や保護者の希望が先にありますので、それをかなえられるようカリキュラムなども柔軟に対応してきた成果だと思います。

文系と理系の比率はどのくらいですか。

小林先生 ほぼ半々ですね。今年の高3は理系のほうが多かったです。20年以上前から、高2まで数学を必修としているため、それが下地になっていると思います。理系全員(約120名)が化学を取り、さらにその中では物理が約90名、生物が約30名ですから、普通の女子校とは違うかもしれませんね。それは数学のベースがあるからでしょうね。抽象的思考ができる。それがないと物理は難しい。文系の高3選択科目にも数学があります。

また、本人が何を目標にし、そのためにはどのような大学、学部が考えられて、受験科目にはこれが必要だからこの科目を履修する必要があるということを、中3あたりから考えていきますので、生徒自身が意識を高めて、しっかりと準備していることも実績につながっていると思います。

数学科主任/小林 都央先生

数学科主任/小林 都央先生

授業も工夫し、イメージをふくらませる

数学に興味をもたせるために、授業の中で先生方がしている仕掛けがあれば教えてください。

小林先生 中1ではトランプを使ってゲームをしたり、幾何でも図形を中心に色塗りをしたり、図形を作らせたりしています。以前は一つの作業を通して一つのことがわかるという感じで、それを積み重ねることにより理解を促していましたが、最近の生徒は少しやれば「あっ」とイメージできます。それも1つのことではなくて、いろいろなことがわかる生徒が増えてきている気がします。ポイントを一つ押さえれば、その先を見通せる生徒が増えています。その変化はいろいろなところで感じます。また、幾何の証明などでは、まわりと話をしながら組み立てることを心がけています。最後はこちらで解答を解説しますが、生徒同士で共有する余裕をもつように心がけています。

実物に触れることを大切にしている

小林先生 ここにお持ちした作品は、中1の夏休みの課題です。学園祭で展示していますが、対称性をテーマにした作品づくりで、折り紙を切り、対称性のある図形を作って、配色を考えながら1枚の紙に配置するというものです。

授業では、なるべく実物に触れるということも大切にしています。子ども達自身、そういう体験が減っていますし、女の子は平均的に立体の感覚が乏しいからです。ちょっと見方を変えるとついていけなくなってしまいます。ですから幾何の時間では、見せられるものがあれば必ず実物を持っていきます。そして必要があれば、展開図から切って作るということもやっています。しかし、最近は、それをしなくてもわかる生徒が増えてきました。

鷗友学園女子中学校 生徒作品

鷗友学園女子中学校 生徒作品

生徒にはどう生きるかを考えさせたい

理解力の高い生徒さんが集まるようになった今、チャレンジしている新たな試みはありますか。

小林先生 女子校なので、全体が同じ方向を向き、皆が同じことができるようにやってきましたが、ここ数年、少し実験的に、このクラスはこうしたことをここまでやってみようという、クラスや個々の持ち味を活かした取り組みを試しながらやっています。

女の子は横の関係が強いので、縦の関係ができてしまうと「私達、どうせ」という感覚になってしまい、自己肯定感を持てなくなって学ぶ意欲を失ってしまいます。だからみんなで一緒に頑張る。大学進学実績が上がっているのも、みんなで頑張って底上げした結果だと思います。ですから、クラスづくりから始まって「みんなできるね」と言いながら全体的に学力を上げていく。そこはある程度できてきたので、次のステップへ進みたいと思っています。

数学が生きる上で役立つ学問であることを伝えていきたい

小林先生 個人的には、もっと先に目標を持たせたいと思っています。担任として話をする時は、大学入試がゴールではありませんし、就職がゴールではありませんので、「どういう生き方をしたいのか」ということを、いろいろなところで問いかけています。

また、私は数学科ですので、数学を役に立てられる人になってほしいと思っています。10年、20年前と比べると、「私に数学は関係ない」と考える生徒は遥かに減りました。ほとんどいないと言ってもよいと思います。保護者の方も、数学が役に立たないとは思っていないと思いますが、社会では「数学は役に立たない学問」という話がよく出てきて、居場所がなくなることがあります。ですから数学が生活や職業にどう役立つかを考え、折に触れて「数学は役に立つよ」ということを伝えていきたいと思っています。

鷗友学園女子中学校 実習園

鷗友学園女子中学校 実習園

インタビュー3/3

鷗友学園女子中学校
鷗友学園女子中学校1935(昭和10)年、東京府立第一高等女学校(現・都立白鷗高等学校)の同窓会鷗友会により、母校創立50周年事業として設立。今日の繁栄の基礎を築いたのは、女子教育の先覚者で第一高女の名校長とうたわれた市川源三と、内村鑑三・津田梅子の薫陶を受けた石川志づ。
「慈愛と誠実と創造」の校訓のもと、キリスト教精神を取り入れた全人教育をおこなっている。「女性である前にまず一人の人間であれ」の教えのもと、一人ひとりが自分の可能性に挑戦し、社会の中で自分の潜在的な能力を最大限に発揮することを目指す。生徒・教師が一体となり<よろこび>と<真剣さ>のあふれる日々を送っている。
全館冷暖房完備で、ゆとりと明るさを追求した特別教室・図書室・ホールを整備。非常災害時のための危機管理システムも整った太陽光発電や雨水利用システムなども導入している。実習園、屋外プールなどもある。校外施設として、軽井沢に追分山荘をもつ。
ていねいな指導に定評があり、教師陣はハイレベルな指導のためにカリキュラムの研究検討を重ね、独自の教材を使った授業も展開する。中学では先取り学習をしつつ、聖書・園芸・書道も正課に取り入れている。英語は「使える英語」を目指し、すべて英語で授業を行っている。中2の英・数はクラス2分割。英語と数学は高校で習熟度別授業を導入する。中1では自分レポートを作成。高2で文系(芸術系を含む)・理系コースに分かれ、選択科目を多く設定し、きめ細かく進路に対応している。高3では主に演習を実施。数多くの特別講習や小論文の個別指導など、進学指導も充実している。
2期制を実施。進路指導では、自分史・環境・福祉・職業・平和などに取り組む。社会で活躍する先輩の話を聞く機会もあリ、自分を見つめ、社会を知り、生き方を考える。70年の伝統を持つリトミックを全学年で週1時間実施し、身体表現を豊かにし、運動神経を高める。課外活動として、茶道、華道、書道、手話、英会話、Debate Workshopもある。文化祭や運動会のほか、スクールコンサート、クリスマス会、中1の軽井沢追分山荘生活学習、中2のスキー教室、中3の沖縄修学旅行などの年間行事を実施。チョート校サマースクールやチェルトナム・レディース・カレッジ研修など、国際理解教育にも力を入れている。クラブ活動は、学芸部8、運動部13、同好会15で、中高合同で活躍している。