シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

桜美林中学校

2014年11月掲載

桜美林中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.「当たり前ではない」日々の生活に感謝してほしい

インタビュー3/3

平和を愛する心を養う『平和学習』

高下先生 本校はキリスト教の学校として、平和を愛する心を養う教育に力を注いでいます。今、当たり前にあるものを客観視するとどうなるか、いかに自分たちが恵まれて幸せかということをいろいろな機会を通して感じてほしいと思っています。そのことに気づくには、自分たちの周りはどうなのか、日本は、世界はどうなのかを知らなければなりません。その機会が毎朝の礼拝や日々の授業です。

「いのち」の大切さについては平和学習を通しても学びます。高2の沖縄への修学旅行では、沖縄戦の体験者にお話を伺い、沖縄の戦跡を巡り、基地も見学します。現地の方には「今時これだけしっかりした平和学習のプログラムを組む学校は少ない」と言われます。琉球大学に進学した卒業生が夜に宿泊先に来てくれて、在校生のディスカッションに加わったこともありました。現地での体験で、今生きている自分たちがいかに幸せなのかを改めて感じてもらえればと思います。

平和学習については、社会科が担うところが大きい。中学や高校の授業で、平和に関する単元は時間をかけて取り組みます。こちらが一方的に伝えるだけでなく、生徒に考えてもらうためにグループで話し合いをさせることもあります。平和学習のまとめとして沖縄に行くことで頭でっかちにならないようにしています。

社会科/高下先生

社会科/高下先生

当たり前の大切さに気づくと日々の過ごし方が変わってくる

高下先生 ところどころで書かせる生徒の感想文や卒業生の話から、当たり前の大切さについて、こちらの一方通行ではなくきちんと受け止めてくれていると確認できます。「きっかけがないと気づかないことがたくさんあることを実感しました」といった感想は、礼拝後に感想を書き留める「礼拝ノート」にも書かれています。すると、日々の過ごし方や心構えが変わってきます。時間を大切にする、ものを大切にする、周りの人との関係を大切にするようになります。

そのことに気づいたところで、「本当の豊かさとは何か」とあえて突っ込んで考えさせます。例えば、自分たちの国で必要な食料を自分たちですべて賄えず、輸入に頼っているのは本当に豊かであると言えるのか。当たり前に学校に通うことができている生徒たちだからこそ、改めて考えさせることは意味があると思います。

戦争体験者の思いを、次の世代に語り継ぐ

高下先生 平和の大切さを伝えるために、放課後の補習でも世界の情勢を知ることに力を入れています。どうしてもカリキュラムの授業の中ではできることに限界があります。世界を知ることで日本がいかに恵まれているかがわかるので、世界の現状を地域ごとに教えています。希望制ですが、昨年も今年も70名程度が受けてくれています。

戦争体験者が戦争について知らない世代に直接伝えることが次第に難しくなっています。平和について少しでも学んだことがある、体験者から話を聞いたことがある人が、今度はそのバトンを受け取って次の世代に伝えていかなければなりません。本校の卒業生が微力ながらその役割を担えればと思います。社会的な活動を行うといったことでなくても、将来家族ができたとき、子どもや孫に戦争体験者の思いを知る者として話ができればすばらしいことではないかと思います。

桜美林中学校

桜美林中学校

インタビュー3/3

桜美林中学校
桜美林中学校キリスト教の伝道師であった清水安三・郁子夫妻が、中国の北京で最初に恵まれない子女のために創立した「崇貞学園」が前身。終戦後日本に戻り、1946(昭和21)年に桜の美しい町田の地に桜美林中学校を創立した。校名はかって清水安三が学んだアメリカ、オハイオ州のオベリン大学から取ったものである。現在は、大学院までの総合学園となり、留学生も多く、多くの施設のあるキャンパスに発展している。
建学の精神は「キリスト教主義に基づいた国際人の育成」であり、他者のこころに共感し、共に生き、文化や意見の異なる人々と心を通わすことができる人格形成を目指す。新しくなったチャペルでの週一回の礼拝と毎朝のクラスでの礼拝を大切にし、一人一人が自分と向き合う時間としている。
自主的に学ぶ姿勢が身につくように、授業を大切にし、中学では学習指導部、高校では進路指導部が6年間一人一人の学習力の向上を計っている。勉強合宿、高1からのコース制、英語、国語、数学の基礎力定着のための年5回のコンテストなどを通して、各人の夢が実現する力を養っている。その結果、最近は難関大学への合格実績が大きく伸びている。併設大内部進学率は例年約10%前後。
中学3年以上の自由選択科目にコリア語、中国語の講座もある。また外国人の教員が副担任やクラブの顧問をし、英語の授業の時だけでなく、日常的に異文化に触れるような環境になっている。中学3年での「オーストラリア研修旅行」は中学での英語教育の仕上げとして全員参加である。また高校2年では「平和学習」として沖縄に行く。姉妹校のあるオーストラリア、中国,韓国をはじめとする色々な国との交流も盛んに行われている。その他にも、林間学校、サマースクール、文化祭、合唱コンクールなど行事も盛んである。
クラブ活動は中学では吹奏楽部、文化部の一部は高校と中学が合同で活動をしていて、年令の違う生徒間の親交もできている。美術部は全国レベル、吹奏楽部も都大会などで活躍。
20歳の「卒業生による成人式」では卒業生が暖かい雰囲気の桜美林に戻り、共に礼拝を持ちオビリンナーとしての絆を深めている。
大きな吹き抜けのある校舎には、元気で明るい生徒の笑い顔が今日も満ちている。