シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

桜美林中学校

2014年11月掲載

桜美林中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.見過ごしがちな日常の場面に、あえて目を向けて考えてみる

インタビュー1/3

日常の当たり前を客観視してみる

高下先生 教科書の内容に興味や関心を持つほかに、スーパーマーケットでの買い物のように、日々の生活の中で見聞きした事柄についても目を向けてほしいと思っています。さらに言うならば、当たり前に思っていることを客観的に見ることで、自分がどれだけ恵まれているか、幸せなのかというところまで思いをめぐらせてほしい。それは、中学生や高校生にも日々望んでいることです。

社会科/高下先生

社会科/高下先生

学びの場は日常の中にもある

塾では子どもにも保護者にも、よく「受験勉強で机に向かっているだけでなく、ぜひ一緒にスーパーに買い物に行ってほしい」と言っています。小売りの現場は、子どもでも物流や販売といった世の中の仕組みを身近に感じられる場所だからです。商品ラベルには原産地や原材料などいろいろな情報が記載されていますから、「なぜだろう?」と考えるきっかけにしてほしいですね。

高下先生 学びの場は日常の中にもある、ということです。そのことを本校のメッセージとして、入試問題から受け取ってもらえればと思います。

日常の出来事と教科書に載っている事柄を結びつけてとらえましょう。もし、うまくつながらないのであれば、そうできるように行動しましょう。できるだけ現場に足を運んで、自分で確認するのが理想です。場の空気感など実際に足を運ばなければ感じられないことがあります。現場を知ることの大切さは、年齢問わず当てはまります。

会話文は受験生がイメージしやすい表現に

高下先生 (問1)については、小学生はスーパーの店長のように売る側の立場になったことがありませんから、想像もつかないでしょう。それでも何も考えずに店頭に商品を並べているわけではないだろうと、一歩踏み込んで想像してみてほしいと思いました。受験生がどんなことを想像するだろうかと楽しみにしていたので、自由な発想で書いてくれて採点していてうれしかったです。

経験がないことに意見を求めているので、受験生が自分とお母さんとの会話に置き換えて考えられるように、「こんな会話を親とはしない」と思うような表現は避け、自然な表現を心がけました。

桜美林中学校

桜美林中学校

問1は自分の意見を持つことを重視

高下先生 (問1)はいろいろな解答がありました。「需要と供給」という用語は使っていませんが、その関係について知っていることを活かして書いたと思われる解答もあれば、予備知識はないけれど、「買う人がいるから置いてある」の前後の文中の言葉を使って説明した解答もありました。どちらのアプローチもありだと思います。学んでいない、見聞きした経験がなくても、会話文から作問の意図を類推する力は評価できます。

具体的には、「お金持ちで和牛の味が好きな人はそうするんじゃないかな」という会話文から、「そのスーパーの周辺住民の経済力」を取り上げた解答や、社会全体に見方を広げて、「世の中の流行や人気を踏まえて商品を決める」という解答がありました。視点の置き方としては両方とも考えられます。

つまり、会話文を基にしても自由な発想をしても、そこで優劣はつけないということですか。

高下先生 そうです。問1は受験生の意見を聞く問題なので、重箱の隅をつつくような採点はせずに、考えることができたかどうかを大切にしました。見過ごしがちな日常の場面に目を向けて、それについて考える、自分の意見を持つことができていればよしとしました。
ただし、自由に発想していいと言っても、店の利益につながりそうもない内容では点数をあげられません。

インタビュー1/3

桜美林中学校
桜美林中学校キリスト教の伝道師であった清水安三・郁子夫妻が、中国の北京で最初に恵まれない子女のために創立した「崇貞学園」が前身。終戦後日本に戻り、1946(昭和21)年に桜の美しい町田の地に桜美林中学校を創立した。校名はかって清水安三が学んだアメリカ、オハイオ州のオベリン大学から取ったものである。現在は、大学院までの総合学園となり、留学生も多く、多くの施設のあるキャンパスに発展している。
建学の精神は「キリスト教主義に基づいた国際人の育成」であり、他者のこころに共感し、共に生き、文化や意見の異なる人々と心を通わすことができる人格形成を目指す。新しくなったチャペルでの週一回の礼拝と毎朝のクラスでの礼拝を大切にし、一人一人が自分と向き合う時間としている。
自主的に学ぶ姿勢が身につくように、授業を大切にし、中学では学習指導部、高校では進路指導部が6年間一人一人の学習力の向上を計っている。勉強合宿、高1からのコース制、英語、国語、数学の基礎力定着のための年5回のコンテストなどを通して、各人の夢が実現する力を養っている。その結果、最近は難関大学への合格実績が大きく伸びている。併設大内部進学率は例年約10%前後。
中学3年以上の自由選択科目にコリア語、中国語の講座もある。また外国人の教員が副担任やクラブの顧問をし、英語の授業の時だけでなく、日常的に異文化に触れるような環境になっている。中学3年での「オーストラリア研修旅行」は中学での英語教育の仕上げとして全員参加である。また高校2年では「平和学習」として沖縄に行く。姉妹校のあるオーストラリア、中国,韓国をはじめとする色々な国との交流も盛んに行われている。その他にも、林間学校、サマースクール、文化祭、合唱コンクールなど行事も盛んである。
クラブ活動は中学では吹奏楽部、文化部の一部は高校と中学が合同で活動をしていて、年令の違う生徒間の親交もできている。美術部は全国レベル、吹奏楽部も都大会などで活躍。
20歳の「卒業生による成人式」では卒業生が暖かい雰囲気の桜美林に戻り、共に礼拝を持ちオビリンナーとしての絆を深めている。
大きな吹き抜けのある校舎には、元気で明るい生徒の笑い顔が今日も満ちている。