シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

自修館中等教育学校

2014年07月掲載

自修館中等教育学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.探究活動に取り組んで16年目。27のゼミでアクティブに活動中。

インタビュー2/3

授業では興味づけを重視。実物を用意して興味を引く

授業についてはいかがですか。理科の中で話し合ったり、工夫したりしているところはありますか。

柳澤先生 中学生の授業では、学校ではあまりしない実験をしたり、教科書に載っているけど、実物は見たことがないというものを見せたり、触らせたりすることを心がけています。実際と、頭で思い描いていることは違うということを意識させるのも工夫の一つだと思っています。

例えば、虫メガネを生徒の人数分用意して配ると生徒は覗き込みます。小さいものが大きく見えるということは知っていますが、ものを虫眼鏡を通し白い紙に映して見ると逆さまになるということは知らないので、すごく盛り上がります。音の三要素(高さ、大きさ、音色)を学習する時には、マイクとオシロスコープを持って行き、高い声、低い声を出させて、それを視覚で確認させると反応が違います。説明だけでは「フ~ン」という感じですが、実際に見せると「ワーッ」となります。

高校生でも、そういうものをたまに持って行くと反応がいいので、見せられるものはなるべく見せますし、高校生には「楽しいね」だけではなくて、「なぜか」というところまで確認させています。

実際に見せると印象に残りますよね。

柳澤先生 高校生になると専門的なことを学びますが、それが実生活にどのように活かされているのかを、なかなか目にする機会がないので、「こういうことを応用すると、こんなものになるんだよ」という例も、できるだけ伝えるようにしています。例えばPASMOの仕組みや、電気の学びに絡めてコードレスフォンの子機の仕組みなどですね。実際に見せて、考えさせて、実生活ではどういうところで使われているか、という組み立てで行っています。

竜巻を発生させる装置

竜巻を発生させる装置

手作りの模型で興味を引く

渡辺先生 私は手軽な日用品などを使って、模型を作ります。生物ではいろいろ作りました。生徒に一番評判がよかったのは、竜巻を発生させる装置です。中2で地学の勉強をしますので、その時に作りました。温度差により上空に雲ができる様子を、ドライアイスを使って見せたりもしています。段ボールなど、手に入りやすいものを使って作るので、たいしたものではないのですが、模型を使っていろいろな現象を説明できるので、子どもたちは興味をもって見てくれます。

竜巻ができるのですか?

渡辺先生 はい。段ボールの一方の側面をカットして、中が見えるようにします。下には空気の抜け道を作って、ドライアイスを入れます。そして、手持ちの扇風機のモーターに手を加えて、風を吸い込むように回転させて、段ボールの上にセットすると、ドライアイスの白煙を吸い上げて上昇気流を発生させることができるのです。

実際に見せながら、「なぜ、竜巻が発生するんだろうね」「なぜ、ここが空いていると思う?」などと質問すると、一緒に考えてくれる生徒がいるので楽しいですし、生徒の方から「もっとこうした方がいい」という言葉も出ることがあるので、これが本当の実験ではないかと思います。

探究活動のために27名の先生がゼミを運営

『探究』に取り組まれて、随分経ちましたよね。

海老名先生 そうですね。創立当初から始めていますので、今年で16年目になります。現在は27のゼミがあり、教員を固定して運営しています。

1年生は、クラスでチームに分かれて、伊勢原を素材にテーマを追究。その経験を踏まえて、1年生から2年生に上がる段階で、探究してみたいテーマを個別に提出させ、それを見て27のゼミに振り分けをします。子どもの発想なので、学問としてどういう分け方ができるかというのは難しいところがあるのですが、できるだけ近いテーマで振り分けるようにしています。

教頭/海老名 豊昭先生

教頭/海老名 豊昭先生

<自修館の探究活動>

『自学・自修・実践』という教育目標をカタチにした自修館ならではの活動。中1〜中3が、テーマにより27の『ゼミ』に振り分けられ、1人ずつ研究テーマを設定し、4年間にわたり調べ続けて、4年生で探究修論(20,000字以上の論文)を完成させる。

海老名先生 大抵はモノや素材に関する素朴な疑問に始まり、そこから考えを深めて、自分のテーマを定めていきます。その変化を見ていくと、生徒が乗ってきているかどうかがわかります。

乗っていない子に対してはサポートするのですか。

海老名先生 基本的に、テーマは生徒が自分で決めることになっています。興味があること、好きなことでなければ続けられませんからね。ただ、好きなことでも、情報を集めて整理し、体系立てて説明できるかどうかは別問題。「好き」という気持ちからなかなか脱却できない子もいます。逆に、そこから段々社会的な問題や、実証的な実験、研究などに首を突っ込んでいく子もいます。どこまで取り組むかは、その子次第です。

ゼミを移動することはないのですね。

海老名先生 今のところはありません。担当教諭と話をしながら、テーマを変えていくという方向ですね。大学なども、入ってから「ちょっと違うな」と感じることがあるかもしれません。そういう意味では、(視点を変えて考えるという経験は)非常に役立っているのかなと思います。

研究の視点を決める苦労も

渡辺先生 『探究』のテーマを決めるのが中1の後半なので、テーマについて話すと「実は理科じゃないことがしたかった」などと言い出す子もいます。困ったのは、「動物に興味がある」と言って入ってきた女の子でした。テーマを掘り下げていくと、「実は動物に興味がない」と言い出して、「何に興味があるの?」と聞いたら、「ファッション」と言われたのです。ファッションは明らかに畑違いですが、科学的なアプローチができる化粧品なら興味が持てるだろうと思い、提案しました。

文集に載っている「化粧品の秘密」という論文がそれですね。

海老名先生 子どもレベルで「好きだ」と思っていても、教員から探究の視点で質問されると、「実はそれほど好きではなかった」という子は珍しくありません。私は今、ゼミを持っていませんが、担当していた時は歴史に関するテーマを指導していました。歴史の研究には原文を読むことが欠かせないため、それができずに、テーマを変える子もいました。

自修館中等教育学校 『探究』

自修館中等教育学校 『探究』

取材のアポイントメントは生徒がとる

取材先は先生方が探すのですか。

渡辺先生 基本的には生徒に探させています。ただ「調べなさい」と言っても子どもの力だけでは難しいので、キーワードは教えます。「この言葉で、インターネットで検索をかけてごらん」とか。そうすると大学の先生の名前が出てくるので、調べて、取材したいとなればアポを取ります。

アポは子どもが取るのですか。

渡辺先生 そうです。方法はゼミにより異なりますが、私はマニュアルを作って、失礼のないように練習をさせてから、電話をかけさせています。どんなに興味があっても、自分から行動を起こさなければ、深めることはできないと思います。

そういう力は社会に出てからも役立ちますね。

海老名先生 自分が取り組んでいることと、そのためにどうしても取材をしたいという熱意を伝えることが大切です。

中高生の研究のためなら、受けてもらいやすいのでは?

海老名先生 熱意が伝わらないと受けてもらえません。忙しい方たちばかりなので、「質問状を送ってもらえればバックします」という場合もあります。

ゼミの中のタテのつながりが自修館の大きな特徴

取材をきっかけに、交流が続いている先生や研究室はありますか。

海老名先生 今は、生徒の興味から「探究」を組み立てていますので、毎年、取材先が変わってしまいます。今後は渡辺ゼミであれば、この大学のこの研究室と交流が深いなど、流れができていけばと思っています。

16年の実績が積み重なってきていますので、そろそろそういう段階に来てもいいのではないかなと思います。理系はもちろん、文系でも、大学院に進学する卒業生も多いので、研究室を構えるような卒業生が出てくれたら嬉しいですね。ゼミの中のタテのつながりが自修館にはある。それは大きな特徴だと思います。

渡辺先生 私のところでは、まだそういう関係はできていないですが、一度取材させていただいたことが縁で、電話での取材をお願いしたりすることはあります。研究室を訪問すると、そこに卒業生がいて、いろいろ紹介してくれることもあるので、卒業生が研究室を構えるようなことも、これから増えていくのではないかと思います。

自修館中等教育学校 理科

自修館中等教育学校 理科

インタビュー2/3

自修館中等教育学校
自修館中等教育学校スクールバスにて小田急線愛甲石田駅より約5分、JR東海道線平塚駅より約25分。目の前には緑多い大山と丹沢の山々があり、恵まれた自然環境。校舎は、5階建ての教室棟と実験棟からなり、図書室、PC教室、自習室などを備え、高度情報化社会に対応したつくり。体育館や屋上にプールを備えたアリーナもある。学校食堂の枠を超えたレストラン、カフェテリアも好評。
建学の精神「明知・徳義・壮健」の資質を磨き、実行力のある優れた人材を輩出し人間教育の発揚を目指す。そのため、学力とともに、「生きる力」を育成するテーマ学習や心の知性を高めるEQ教育などユニークな取り組みを実践。教育を“こころの学校作り”ととらえ、学校を想い出に感じ、帰れる場所に、と家庭とも連携を保ちながら、きめ細かい指導にあたっている。
中1~中3を「前期課程」、高1~高3を「後期課程」とした、高校募集のない完全中高一貫の体制。3カ月を一区切りとする4学期制で、メリハリをつけて効果的に学習を進めている。英・数は「後期課程」から習熟度別授業を実施。英語の副教材には、『ニュートレジャー』を使用。興味のあるテーマを選んで継続して調査・研究を行う「探究」の授業もある。指名制の補習と希望制の講座がさかんに行われている。また個別指導が多いのも特徴。
週6日制だが、土曜日の午後は自由参加の土曜セミナーを開講。「遺伝子組み換え」「古文書解読」「伊勢原探訪」など生徒対象のものだけでなく、保護者対象の講座も多数用意している。「探究」以外でも心の知性を高める「EQ」理論に基づいた心のトレーニング「セルフサイエンス」や、国際理解教育など、特色ある教育を展開。中1のオリエンテーション、山歩きに挑戦する丹沢クライム、芸術鑑賞会などの行事がある。文化部9、運動部10のクラブ活動も活発。「探究」の一環として、高2でカナダでの海外フィールドワークが行われる。