出題校にインタビュー!
自修館中等教育学校
2014年07月掲載
自修館中等教育学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.日々探究。日常のさまざまな気づきを学問の世界に取り入れて、紙面で表現しよう。
インタビュー3/3
『探究』で取り組んだ問題が解決する喜びを味わった
渡辺先生 今年卒業したゼミの生徒に、アニマルセラピーや動物の寿命などに興味を持って頑張っていた子がいます。最終的に『殺処分』について探究すると、お母さんが影響を受けて里親探しなどの活動を始めました。彼女自身は薬学の道に進みましたが、家では里親探しの活動をしています。授業としての『探究』は3年間で終わっていますが、その子にとっての『探究』は卒業後も続いています。
お母さんにも派生したとは、すごいですよね。
渡辺先生 5月の終わり頃だったと思いますが、神奈川県の犬猫の殺処分が初めてゼロになったと、ニュースで知りました。3年前にその子と「どうしたら殺処分がゼロになるかね」という話をし、海外や他県と比較しながら「神奈川でも早くゼロになればいいのにね」と話していたのです。それが実現して、あの時の想いがかなったんだなと思うと嬉しいですね。
「探究」を担当される先生方は、常にいくつもの探究テーマとかかわっているのですね。
渡辺先生 そうですね。いつも「探究」が頭の片隅にあります。それが楽しくてやっているのですが、新聞やニュースを見る時も仕事が抜けません。子どもたちが取り組んでいるテーマに関連している記事を探してしまっている自分がいます。時間があると、インターネットでかかわりのあることを探したりもしてしまいます。
理科/生物:渡辺 一樹先生
自身の興味を超えて社会とつながりを持たせることが大事
渡辺先生 『探究』も『授業』も『入試』も必ずリンクします。『入試』ではまだですが、ゼミでのフィールドワークや、大学の研究室で習った内容を『授業』で話したり、使ったりすることはありますね。
4年生(高1)の生物基礎という授業で免疫について勉強をしている時も、たまたま前年に、終末医療をテーマに取り組んでいるゼミ生がいて、人獣共通感染症や狂犬病など感染症について調べていたので、その時に学んだ猫エイズの話を授業でしました。近い将来、『探究』で学んだことが入試問題に反映されるなど、いろいろなカタチで活用されることは、きっとあるのだろうなと思っています。
海老名先生 ゼミで生徒の力を引き出すにはテーマを様々な側面から捉えてみる必要があります。最終的には文系、理系、どちらから入っても、社会とのつながりにまで発展していけば、その研究は有用なものになるでしょう。自分の興味だけの殻に閉じこもっていると、つながりを感じることができないので、研究を見ても共感を得られないことがあります。(指導する先生は)こういう広がりがあるという情報をいろいろ提示しながら、引き出しているのだろうと思います。
『探究』活動が進路選択に直結するわけではありませんが、大学の研究として成り立つようなテーマと出会い、『探究』活動により、さらに興味・関心が深まった生徒は、進む道を考える際にフィルターにかけているのではないかと思います。
教員にとっては授業=探究
海老名先生 一昨年、渡辺が行った研究授業がおもしろかったですよ。地学の授業で、地層がテーマでした。1カ所だけでなく、複数の場所でボーリングをすると、褶曲している、断列しているなど、地層の様子がよくわかるとした上で、グループ分けをして、グループでボーリング会社を経営するとしたら、いかに安く、いかに正確にボーリングを実施するにはどうすべきかを生徒に考えさせました。お金に糸目をつけなければ、全部掘ればいいのですが、それはできません。単純に地学を学ぶのではなくて、それが実生活でどう役立っていくのか。そういうことも生徒がイメージできる授業展開で、学びを、社会的にどうつなげていくかという発想がよかったです。
渡辺先生 私の中では「授業=探究」なので、本校を作る時のボーリングの地図を使い、この辺りのボーリング会社に話を聞いたり、地層に詳しい学芸員さんが平塚にいるというので、話を聞きに行ったりして、作った授業です。
本校では、毎年EQ検査をするので、その結果をもとにグループ分けをして、授業を展開してみました。
研究授業はどなたが見るのですか。
海老名先生 本校の教員です。該当クラス以外は全員下校させて、全教員で見ます。
自修館中等教育学校 教室
授業で習うことは日常や社会と結びついている
小学生に身につけてほしい力があれば教えてください。
渡辺先生 理科は、さまざまな実験や経験で得られたことを、場面、場面で結びつけて、思考を深めていく教科です。1つ1つの実験をバラバラに考えるのではなくて、こういう方法でこういう結果を得られた。その考え方を他の実験に応用してみよう。そういう発想力や応用力を身につけ、磨いていかないと、大学の入試問題も、ある程度のレベルになると解けません。小学校時代から1つのキーワードを中心に、授業で習ったこととニュースで聞いたことをつなげて考える習慣を身につけてほしいですね。いろいろな事が結びついているということを、理解できる子が入ってきてくれたら嬉しいです。
小学生の頃から理科が好きだった
先生ご自身も、そういう好奇心旺盛なお子さんでしたか。
渡辺先生 私的にフィールドワークに行くような子でした。下水道、焼却場、サッポロの工場、市役所など、いろいろな所に行き、自分の目で確かめていました。小学校4、5年生の頃、友達と月に1回、行きたい場所に電話をして、親に連れて行ってもらい、見学していましたね。恐らく興味があったのでしょう。授業で触れて、興味をもって、行きたいと思い、電話をしたら、OKをもらえて、こんなこともできるんだと思い、いろいろなところに足を運んだのかもしれませんね。
自分で電話をしたのですか。
渡辺先生 していましたね。
模型も作っていたのですか?
渡辺先生 祖父が木工所をやっていたので、家には木片がたくさんあり、小1の時の、祖父からの誕生日プレゼントがのこぎりやトンカチなどの道具でした。きっと何かを作るのが好きだったのでしょうね。
自修館中等教育学校
日常の生活の中で気づき、考え、表現しよう
渡辺先生 理科全体で大切にしているのは、気づき、考え、表現する力です。
『探究』が根底にあるので、自分で行動して、気づき、考え、表現することが大切だと考えています。授業の枠の中ではなく、そこから飛び出して、得たもので気づき、考え、表現してほしいと思います。
フィールドワークというとおおげさで、どこかに出かけなければと思いがちですが、理科なら校庭に出て、草木や昆虫を観察することもフィールドワークです。家族と鍾乳洞に行った、山へ行った、海へ行った。そういう場所でもいいので、さまざまな気づきを、学問の世界に取り入れて、それを紙の上で表現してくれれば素晴らしいものになると思います。
インタビュー3/3