シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

自修館中等教育学校

2014年07月掲載

自修館中等教育学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.新しい発想は、知識や経験がベースにあって生まれる。

インタビュー1/3

合否に影響を与える問題になった

渡辺先生(生物) 自修館の理科としては「気づき、考え、表現しよう」を大きな目標として、観察・想像・整理・発表・伝える、これらの力を養っていこうと考えています。授業でもそのための工夫をしていますので、入試問題も同様に、問題を解く中でそういう力をつけてほしいと思って取り組んでいます。

今回の問題も、実生活で、小学校で、塾で、そういう力を意識しているかなと思って作った問題です。

どういう経緯で思いついたのですか。

渡辺先生 たまたま真夏の最高気温を記録した日に、40度以上を記録した高知の四万十にいて、ニュースなどでも取り上げられたので、子どもたちも「ただ暑い」ではなくて、もう少し深く興味や関心をもってほしいと思ったのがきっかけです。

出来はいかがでしたか。

海老名先生 合格者の正答率が40%、不合格者は9%ですから、差がつく問題になりました。書けていない子が多かったです。

渡辺先生 「ダムは除く」「人工降雨装置は除く」と書いてあるのに、ダムについて書いている受験生が目立ちました。他の問題(バランストンボの問題)でも条件を設定し、その条件を踏まえて解く問題を出しましたが、条件を踏まえることができない受験生が目立ち、理科の振り返りの中でも話題になっています。

理科/生物:渡辺 一樹先生

理科/生物:渡辺 一樹先生

問題文の『ダム』や『発電』から発想した受験生が多かった

どんな答えでも、筋道を立てて説明できていれば正解になる問題だと思いますが、採点をしていて、先生方の印象に残っている解答はありますか。

渡辺先生 ➀では木を切るなど、電力系の解答が多く見られました。問題文に『ダム』や『発電』という言葉があるので、そこから発想している受験生が多かったです。

「できるだけ多く書きなさい」とありますが、この問題の配点は何点ですか。

渡辺先生 10点です。1つにつき2点で5つ書ければ満点としています。

海老名先生 5つというと、結構、発想力が求められますよね。

柳澤先生(物理) ➁を書いた受験生は少なかったですね。

渡辺先生 そうですね。➀の答えのほうが多かったです。

➀のほうが現実味がありますからね。

渡辺先生 問題を作る時に、人工○○装置といえば、環境問題で悪いとされているものを取り除く装置が多くなりそうだなと思ったのですが、それほどではありませんでした。

柳澤先生 「人工降雨装置は除く」と書いてあるので、雨ではなく、雪と解答する子もいました。

なるほど。その時のメリット、デメリットはどんなことになるのでしょうか。

柳澤先生 苦し紛れの解答なので「南の国の人が喜ぶ」という程度でした。

渡辺先生 「人工PM2.5装置」という解答が絶対にあると思ったのですが、ありませんでした。理科とは関係ありませんが、ここ数年、領土問題などがよくニュースで取り上げられるので、作ってしまえばいいという発想で「人工島装置」などもあるかなと思ったのですが、なかったです。

物事をいろいろな側面から考える力を磨いてほしい

5つ全部答えられた受験生はいましたか。

渡辺先生 いなかったと思います。

➁の答えが出て来なかった要因はどんなところにあると思いますか。

渡辺先生 問題を作った時に、一つのことをいろいろな側面から見て、比較できる子がほしいなと思いました。ニュースなどで話題になる時は、一方の側面、特に悪い面が取り上げられがちで、いい面と悪い面が両方取り上げられることはほぼありません。ですから、いい面と悪い面を頭の中で結びつけて考えられるような力をもっている子がほしいと思ったのですが、難しかったですね。

この問題について、入学後に生徒さんとお話される機会はありましたか。

渡辺先生 今年は中1をもっていないので、話す機会はないのですが、物事をいろいろな側面から思考する力というのは、本校で大事にしている「探究」にもつながると思うので、やはりそういう力をもっている子に入学してほしいですね。

新しい発想というのは、理科の知識や経験に裏打ちされて出てくると思います。逆にいえば、過去にそれだけの勉強をしているか、それだけの知識を得ようとしているからこそ、新しい発想がひらめくのだと思います。5年生(高2)、6年生(高3)にも「実験考察問題の解き方を教えてほしい」と言ってくる子がいますが、さまざまな実験や基本問題の積み重ねでしかないので、そういう下地をつくる努力をしてほしいと思います。

自修館中等教育学校 理科

自修館中等教育学校 理科

総合問題として分野にとらわれずに作問する

毎年、こうした問題を出されていますが、どういう位置づけなのですか。

渡辺先生 物化生地、4分野から10点ずつ問題を作り、残り10点は総合問題ととらえて作問しています。考えないようにしているのですが、自分の専門が生物なので、生物寄りになっているかもしませんね。

今回の問題などもそうですが、社会も関連していると思います。教科の間で情報交換することはありますか。

海老名先生 作問者の中ではあります。全教科の問題を全員で解きますので、指摘もし合います。

渡辺先生 それが一番恐いんですよ(笑い)。国語の先生に文章を指摘されるのでは?などと、ドキドキします。個人的には、社会の先生と情報交換しています。環境問題などは、地理でどういう問題を出すのか気になりますからね。

社会で出た題材が、引き続き理科の視点で見た問題につながるなど、教科がコラボした問題もおもしろいですよね。

渡辺先生 私も授業で社会科と一緒に何かできたらおもしろいかなと思っています。

科学部に入部する部員は多い

入学した生徒さんは、理科好きが多いですか。

柳澤先生 科学部に入る子は多いです。今年は7名が入部しました。

海老名先生 今年は1年生が109名。その中から7名ですから、科学部に入部する割合は高めだと思います。

柳澤先生 高2までで、40名は超えていると思います。入学したばかりの部員は「自分たちでやってみよう」というところから始めますが、学年が上がるにつれ、自分たちで取り組んだことをまとめて、説明できるように練習し、探究文化発表会という本校の行事で発表させています。

部活にまで入って理科の実験をするということは、意欲をもって入ってきているということですよね。

柳澤先生 そうですね。

貴校が取り組む「探究」活動の素地をもった子が入ってきているということでしょうか。入試問題がそういう問題なので、ほしい人材が入ってきているのかなと思ったのですが、いかがですか。

柳澤先生 どうでしょうか。そうであればいいと思いますが。

海老名先生 意欲が強い子が多いのは確かです。

理科/物理:栁澤 渉先生

理科/物理:栁澤 渉先生

インタビュー1/3

自修館中等教育学校
自修館中等教育学校スクールバスにて小田急線愛甲石田駅より約5分、JR東海道線平塚駅より約25分。目の前には緑多い大山と丹沢の山々があり、恵まれた自然環境。校舎は、5階建ての普通教室棟と特別教室棟からなり、図書館、PC教室、自習室などを備え、高度情報化社会に対応したつくり。体育館や屋上にプールを備えたアリーナ棟もある。学校食堂の枠を超えたレストラン、カフェテリアも好評。
建学の精神「明知・徳義・壮健」の資質を磨き、実行力のある優れた人材を輩出し人間教育の発揚を目指す。そのため、学力とともに、「生きる力」を育成するテーマ学習や心の知性を高めるEQ教育などユニークな取り組みを実践。教育を“こころの学校作り”ととらえ、学校を想い出に感じ、帰れる場所に、と家庭とも連携を保ちながら、きめ細かい指導にあたっている。
中1~中3を「前期課程」、高1~高3を「後期課程」とした、高校募集のない完全中高一貫の体制。3カ月を一区切りとする4学期制で、メリハリをつけて効果的に学習を進めている。英・数は高2から習熟度別授業を実施。英語の副教材には、『ニュートレジャー』を使用。興味のあるテーマを選んで継続して調査・研究を行う「探究」の授業もある。指名制の補習と希望制の講座がさかんに行われている。また個別指導が多いのも特徴。
週6日制だが、土曜日の午後は自由参加の土曜セミナーを開講。「遺伝子組み換え」「古文書解読」「伊勢原探訪」など生徒対象のものだけでなく、保護者対象の講座も多数用意している。「探究」以外でも心の知性を高める「EQ」理論に基づいた心のトレーニング「セルフサイエンス」や、国際理解教育など、特色ある教育を展開。中1のオリエンテーション、山歩きに挑戦する丹沢クライム、芸術鑑賞会などの行事がある。文化部9、運動部10のクラブ活動も活発。「探究」の一環として、高2でオーストラリアでの海外フィールドワークが行われる。