中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

自修館中等教育学校

2014年07月掲載

自修館中等教育学校【理科】

2014年 自修館中等教育学校入試問題より

次の文章を読み、以下の問いに答えなさい。

2013年の夏は降水量が極端に少ない地域があり、そのような地域でダムの貯水量が激減したというニュースが世間をさわがせました。ダムでは取水制限をおこなったり、家庭でも節水をしたりしました。しかし、予想以上の渇水(かっすい)で、ダムの底が見えてしまうような状況にまでおちいった地域もあります。そのような重大な状況になってしまった東京都の奥多摩(おくたま)町にある小河内ダムでは、12年ぶりに人工降雨装置を稼働(かどう)させました。久しぶりの稼働ということもあり、ニュースでも大きく取り上げられましたが、はたしてこれで問題は解決するのでしょうか。人間は、社会生活にじん大な被害が出ないようにするために、様々な対処法を考えてきました。ダムもその1つです。降水量が少なくても、ダムがあることによって、安定して水を供給できますし、電力も発電できます。また、河川のはん乱を防ぐことができます。

しかし、メリット(利点)がある一方で、デメリット(欠点)もあるということを忘れてはいけません。人間は自然に対して、積極的に手を加えたり働きかけたりして豊かな社会を作ってきましたが、それによって生み出された新たな問題に対して、どのような取り組みをしているのでしょうか。

(問)次の➀、➁のどちらか、または両方の問いにできるだけ多く答えなさい。

  • ➀今現在、人間が自然環境に対して、手を加えたり働きかけたりしていることを挙げ、そのメリットまたはデメリットを考えなさい。ただし、ダムは除きます。
  • ➁人間社会にとって有益な「人工○○装置」を開発するとします。その装置を使うことによって得られるメリット、または発生してしまうデメリットを考えなさい。○○の部分に入れる言葉は、天候や自然に関することでも、また、単語でも文章でも構いません。ただし、人工降雨装置(人工雨ふらせ装置)は除きます。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この自修館中等教育学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、出題意図についてのインタビューを見てみましょう。

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例
(選んだ番号)➀
働きかけ:道路の舗装
メリット:人や自転車、自動車などが通りやすい。
デメリット:熱をたくわえてしまう。雨水がしみこまず洪水が起こりやすい。
(選んだ番号)➁
装置名:人工二酸化炭素消去装置
メリット:温暖化を防ぐことができる。
デメリット:二酸化炭素を取り除くときに新しくできる物質の処理が必要になる。
解説

渇水によるダムの水不足を解消するために、人工降雨装置を稼働させたことを一例とし、人間が自然に対して手を加えたり働きかけたりしていることに目を向けます。私たちの身のまわりでは、人間がメリットを得るために、あるいは人間にとってのデメリットを解消するために、自然に対してさまざまな働きかけを行っています。その働きかけによって、どのようなことが起こるのかを予測します。ひとつの働きかけによって起こることがひとつとは限りませんし、ひとつの働きかけによって起きたことが、さらなる変化を起こすかもしれません。起こる可能性がある変化をできるだけ多く挙げ、その変化がさらなる変化をもたらす可能性はないかを多角的に考えていく必要があります。
また、自分が新たな人工○○装置を開発する場面では、「人間社会にとって有益な」効果をもたらす、という視点から装置を考えていく必要があります。

日能研がこの問題を選んだ理由

昨年の夏、小河内ダムの渇水に際して人工降雨装置を稼働させたことを題材として取り上げ、人間が人工的に手を加えることによって既に起こっているメリットやデメリットを考えたり、今後新しい装置を開発した場合に起こると予想されるメリットやデメリットを考えていく問題です。この問題に触れることで、ひとつのことがらを人間にとっての視点から考えたり、自然にとっての視点から考えたり、知識どうしを結び付け、多角的に検討することを学べます。また、「人工○○装置を開発する」という設定から、自分なりの視点や着眼点をもって筋道を立て、他者を納得させられるように説明することも求められています。

この問題を通して学んだことを、子どもたちが身のまわりのさまざまな場面で活用していくことができると考え、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。