出題校にインタビュー!
世田谷学園中学校
2014年04月掲載
世田谷学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.実験は結果の正誤ではなく検証することが大事
インタビュー1/3
『実験に失敗はない』ということを伝えたかった
古澤先生 本校では中1・中2で実験・観察を多く実施しています。この時期は確認の実験が中心で予め結果(答え)がわかっています。生徒を見ていて気になるのは、自分の結果が答えと違ったときに、「失敗した」「ダメだ」と断定してしまう傾向が強いことです。授業では日頃から「答えが違っていても、君の実験は君のものなのだから、大切なのは、なぜそうなったのかをきちんと検証することだよ」ということを強く指導しています。
ですから受験生にも、結果が違ったら失敗だととらえないでほしいのです。「なぜそうなったのかを突き詰めていくことが、どんな小さな実験でも大切なんだよ」ということを伝えたいと思い、この問題を作りました。これは、入試問題というよりは定期試験に近い問題だと思います。
非常に斬新な問題ですね。実験はうまくいかないことも多々あります。そのときどう判断をすればよいかわからず、思考が止まってしまう子供もいます。普段から「失敗はない」という視点で物事を考え、検証する習慣が身についていると、結果が違っても思考停止に陥らずに何とかしようと粘れるのではないかと思いました。
理科/古澤 誠先生
自分の行動には最後まで責任をもつ
古澤先生 入試では、この(1)~(3)の問題の次に、実験結果が予想と違ったグループがとった行動や発表した考察として正しいと思うものを選ぶ問題を出しました。選んでもらいたいのは、「考察として、氷水につけるのがおくれ、その前にだ液が作用したためと判断した」という選択肢です。
他の教員から、別の選択肢の、「予想や他の班の結果とちがうので失敗したと思い、もう一度実験をやり直した」という判断は間違いではないのではないか、どれを選べばよいかわからないという指摘がありました。実験で得られたデータは、どんなものでも失敗はありません。予想と違う結果でもそれはそれで正しく、事実として認めなければなりません。受験生に「実験に失敗はない」と伝えたかったので、「失敗した」という判断を含む選択肢は、この問題では不正解としました。
実際、多くの受験生は面食らったでしょう。しかしながら、「自分の行動の結果は責任を持って確認する」という本校の姿勢をしっかり伝えたかったのです。入試問題としては無理があるのを承知で、本校からの強いメッセージとして出題しました。社会に出ればいろいろな場面に遭遇します。そのときに現実をしっかり受け止めて、どうすればよいかを判断する力は、理科に限らず必要な力だと思います。
『なぜそうなったのか』に目を向ける
古澤先生 3問合わせた正答率は、受験生全体で50.5%、合格者全体で61.2%でした。(3)は「考えられないもの」を選ぶ問題のせいか、他の問題に比べると正答率が下がりました。
この問題は実験結果の表を提示しました。受験生もこのようにして自分でまとめたことがあると思います。知っていることをあてはめて表を埋めれば(1)と(2)は正解できるでしょう。一方、(3)は予想と結果が違っていることに加え、その原因として「考えられるもの」ではなく「考えられないもの」を選ばなければならず、小学生には複雑な聞き方になったことは反省点です。
この問題が解ける子供像として、だ液のはたらきなど基礎的な知識が定着していること。さらに、違っていることに「なぜだろう?」と興味を持てること。そうした姿勢のお子さんであれば、この問題で、なぜ予想と違う結果が出たのか、考えられるのではないかと思います。実験を「答え」として覚えるのでなく、なぜそうなるのかというところに目を向けてもらいたいですね。それには自分で手を動かして実験することです。
世田谷学園中学校
選択肢は実際の実験でよくある理由
古澤先生 この問題は反応の予想と結果を比べています。予想しないで実験することに慣れていると、「なぜ予想しなければならないのか?」というところでつまずいてしまいます。実験の前に結果を予想してみましょう。すると予想と違う結果が出たとき、「なぜ?」という疑問も自然にわいてくると思います。
授業では、まず実験ノートに結果の予想を書いてから実験し、予想と違っていたらその理由を考察します。中1は週4時間の授業のうち2時間連続のときに実験を行い、考察もなるべく授業の中で行うようにしています。
実は、(3)の選択肢「だ液が少なかった」「でんぷんが多かった」「湯が冷めていた」というのは、実際の実験でよくある操作ミスです。次の問題で、予想と違う結果の理由「氷水につけるのが遅れた」という選択肢も、生徒が試験管をクーラーボックスに入れるのに時間がかかったことに基づいています。その点からも、入試問題というよりは定期試験の問題に近いと言えます。
インタビュー1/3