出題校にインタビュー!
世田谷学園中学校
2014年04月掲載
世田谷学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.自分から飛び込んで得た経験が自分の幅を広げる
インタビュー3/3
自由研究はプレゼンで校内表彰も
古澤先生 中学生は毎年夏休みの課題で自由研究に取り組みます。そのねらいは、何か1つのことを最後までやり遂げることにあります。それを学園祭で発表し、一部は理科の教員の前で5分間のプレゼンテーションと質疑に答え、優秀な研究は校内表彰します。本校はカナダの姉妹校と交換留学を行っていますが、以前、カナダ各州の代表者が研究成果を発表するサイエンスフェアに参加していたことがあり、その審査方法を取り入れています。
プレゼンに参加する研究をこちらでピックアップすることもありますが、自ら手を挙げる生徒もクラスで1~2名程度います。中1でプレゼンする生徒は3年間同じテーマについて研究することが多いですね。2年目になると、自分の視点を持つようになり、研究にその生徒らしさが見られるようになります。こうした生徒は実験・観察が本当に好きです。取り上げるテーマとしては、観察であれば北海道を旅行したときに採取した鉱物のほか、自宅周辺の川や池の中の生物など水に関するものが多いですね。
プレゼンは教員が指導するわけではなく、先輩の発表のビデオを見てそれを参考にしてもらいます。中1は汗をかきながら発表します。発表するスペースが決まっていて、どう使うかは自分の工夫次第です。研究の内容だけでなく、資料やデータの見せ方、伝え方も評価対象です。プレゼンが得意な生徒は楽しんで発表しています。
理科/古澤 誠先生
多くの経験が感性を豊かにする
古澤先生 日常の生活にちなんだ問題の答案を見ると、子供の経験不足を痛感します。それは、感性の乏しさに見て取れます。
中1の行事に、美術館で鑑賞した絵画について意見交換する「ギャラリートーク」があります。ここでは自分が見て感じたことを自由に発言してもらいたいのですが、真っ先に飛んでくるのは「この絵はどういう意味で描かれたのですか?」という質問です。その絵を見て何を感じるかなどを楽しむ前に、まず答え探しをするので“お勉強”になってしまう。制作意図がわかるとそれでおしまいで、それ以上広がっていきません。
経験不足を補うために、中学ではいろいろな経験ができる機会を設けるようにしています。サマースクールではカヌーやマウンテンバイクに乗って自然の中を駆け巡ります。インストラクターの方には、乗ることで見える景色がどのように変わるのか、自然保護などについても話していただいています。「楽しかった」で終わらせずに、身につけた知識を使って考えるようにしています。
感性が豊かな生徒は興味が広い
古澤先生 感性が豊かならば、「楽しい」ところまで到達できます。ですから、本当に「楽しい」と思えるには知識を活用できなければなりません。人は、楽しく幸せになるために生きています。幸せになるために知識や道具の活用法を選択して、社会の役に立てる人になってほしい。それが、本校の教育理念「Think&Share」が目指すところです。
感性が豊かな生徒は興味が広い傾向があります。興味が広い分、多少移り気なところはありますが、「なぜ」を突き詰めていくので、実験などで筋道を立てて考えられます。理屈が先行する生徒もいますが、理屈抜きの経験をすると思考の幅が出てきます。
理科/古澤 誠先生
真っ暗闇の怖さは理屈ではない
古澤先生 私はワンダーフォーゲル同好会の顧問ですが、中1は1人で一晩テントに泊まり、夜がどれだけ真っ暗で怖いものなのかを体験します。生徒は怖くて一睡もできず、翌朝は目が真っ赤です。サマースクールでもクラス毎に真っ暗な場所へ行き、懐中電灯を消して10分くらいその場にとどまります。生徒は暗闇に驚きながらも、ドキドキ、ワクワクします。暗さにもいろいろな色があることに気づいたり、カエルの鳴き声に敏感になったり、感覚の変化が見て取れます。
このように、自分から飛び込むことで得られる感覚があります。そうした経験が感性を豊かにし、自分の幅を広げ、他者の気持ちを思いやることにつながっていきます。理屈も大事ですが、真っ暗闇の怖さのように理屈では説明し難いことも世の中にはたくさんあります。生徒には、理屈抜きで感性に訴える経験をできるだけさせたいと思っています。
世田谷学園中学校
おもしろいことは目の前にある
古澤先生 インターネットで情報を簡単に検索できることに慣れてしまうと、新しいことにあまり驚かなくなります。有名なもの、目新しいもの、刺激的なものにばかり目が行きがちですが、おもしろいことは目の前にもたくさんあります。興味・関心は自分の足元からも広げられることに気づいてほしいですね。生徒には新しいことを吸収する力が十分あります。調べて終わりではなく、調べたことを活用して、何かをしようと踏み込んでいってほしいと思います。
インタビュー3/3