出題校にインタビュー!
市川中学校
2016年03月掲載
市川中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.社会科の記述力は設問文の読解がカギ
インタビュー1/3
地方の特産物はどのように都に運ばれ消費されたか
相馬先生 入試問題を作るとき、教科書とは別の視点から歴史を見ることを意識しています。
奈良時代の租税制度の調とは地方の特産物を納める税で、農民が都に運んでいたことは受験生は知っていると思います。
地方の特産物には海産物もありました。では、そうした「生もの」はどのようにして都に運ばれたのか、そのあとどう消費されたのかというところまで考えたことはあるでしょうか。教科書に載っている事柄から一歩踏み込んで考えてもらいたいと思い、この問題を出題しました。
社会科主任/川崎学先生
完答するための要素は3つ
相馬先生 受験生の答案を見ると、完全解答の要素をすべて含む答案は少なかったですね。ただ、完答まであと一歩の、8割方できていた答案は多かったです。
完答の要素は3つあります。1つは、調がどんな税か説明することです。「地方の特産物を納める税」ということを、〈資料2〉の地図から読み取ります。
〈資料1〉は「貴族の食事」を示しています。2つ目は、調として都に運ばれた特産物を食べていたのが貴族であることに触れることです。この点があまり押さえられていませんでした。調として都に納められた特産物は、中央の官人に給与として支給されたり、市場で売買されて貴族の食卓に上っていました。そこまで具体的でなくても、「貴族が食べていた」ということは書いてもらいたいですね。
3つ目は、食べ物に塩を使ったり、乾燥や発酵させたりする理由です。「腐らないようにするため」「長時間移動するので」「保存できるように」といったことが書けていれば、要素を満たしています。この点は比較的とらえられていました。
設問の要求をしっかり読み取り、解答すること
川崎先生 設問は“さらっと”聞いていますが、実はいろいろなことを聞いています。“さらっと”読んで「あのことを書けばいいんだ」と早合点して、部分点にとどまった受験生が多かったですね。
この問題は設問文の読解力が求められます。設問文は「それはなぜですか。」で終わっていません。「当時の税制と資料2をふまえて」と要求しているので、調の説明も必要です。調の用語を使うだけでは不十分です。〈資料1〉の貴族の食事から、貴族は都に運ばれてくる特産品を食べていたと、〈資料2〉と結びつけて考えます。
塾では「○○を使って書きなさい」というように条件をはっきり示すことが多いです。そうした“丁寧すぎる”問題文に慣れている子どもは、条件をとらえきれなかったかもしれません。
川崎先生 私たちはつねに大学受験を意識しているので、中学入試でも先行してそのような聞き方をしています。
文章記述問題で優先されるのは、設問文と資料の「読解力」です。これは大学入試でも同じです。大学入試の記述・論述問題を見ると、さらりと何気なくいろいろなことを要求しています。
生徒はつい知っていることを書きたがりますが、要求に応えていない答案はいくらたくさん書いても得点になりません。国公立大学の記述・論述問題対策は、書くことよりもまず問題を読んで理解すること、何を聞かれているかを確認することだと、生徒に繰り返し話しています。
市川中学校
何を聞いているか、冷静に考えられること
相馬先生 完答するには何を聞かれているのか設問文をきちんと読めることです。設問文は「貴族の食事」から始まっています。〈資料2〉の地図を見た後で、再度「貴族の食事」に戻れること。設問文を最後まで読んで、「この問いは何を聞いているのだったかな」と冷静になれると、完答に近づけるのではないでしょうか。
歴史分野では、問いに対して覚えたことを反射的に答えるような問題が多くあります。基礎学力としてそれも大切ですが、リード文や設問文をじっくり読み込むような、立ち止まって考えることも大事にしてほしいですね。
簡潔な記述には情報処理能力が必要
川崎先生 社会科の文章記述に国語的な表現力や文章力は求めていません。ポイントとなる用語を押さえつつ、設問の要求にきちんと応えることが重要です。
字数指定はしていませんが、文の長さは2行程度を想定して解答欄を設けています。ダラダラとは書けませんから情報処理能力も求められます。設問の要求に照らし合わせ、情報の取捨選択や優先順位を付けて簡潔にまとめましょう。
市川中学校
インタビュー1/3