今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
市川中学校
2016年03月掲載
2016年 市川中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
(問)次の〈資料1〉は、奈良時代のある貴族の食事をあらわしたものです。「塩」を使ったり、「乾燥」、「発酵(はっこう)」させたりする食べ物が多くみられます。それはなぜですか、当時の税制と〈資料2〉をふまえて説明しなさい。
〈資料1〉
- ハスの葉で包んだご飯
- 干し柿などの菓子
- なす・うりの和(あ)え物(もの)
- 漬物(つけもの)
- チーズに似た乳製品
- 焼きアワビ
- 車エビの塩焼き
- 生カキ
- 干したたこ
- たけのこ・ふき・菜の花のゆでもの
- しか肉の塩辛
- 乾燥ナマコをもどしたもの
- 生のサケ・大根・しそ
- ハスの実入りご飯
- 塩
- かも・せりの汁物
〈資料2〉
注1:は平安時代の都を示し、数字は都までの日数をあらわします。
注2:九州の数字は大宰府までの日数をあらわします。
※資料1・資料2ともに『つながる歴史』(浜島書店)より作成
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この市川中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
貴族は調として都に運ばれる全国各地の特産物を食べており、長期保存が必要なものも多かったから。
解説
資料1と問題文を見ると、奈良時代の貴族の食事には、塩を使ったものや、乾燥あるいは発酵させたものが多いことがわかります。資料2には、各地の特産物と都までの日数がしめされています。資料1・2をあわせると、たとえば「しか肉の塩辛」のしか肉は、現在の群馬県付近の特産物であったことがわかります。しかし、現在の群馬県付近から都まで行くにはおよそ1カ月かかるため、しか肉を生のまま運ぶのは現実的ではないでしょう。このように2つの資料から見えることを、問題文にある「当時の税制」という条件に結び付けてみましょう。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
奈良時代の人々には租・調・庸といった負担が課せられていたことや、調が各地の特産物を都におさめる税であったことについては、多くの受験生が知識として持っているでしょう。社会科の入試問題において、奈良時代の税制が題材として扱われることはそうめずらしいことではありません。
そうした中で、市川中のこの問題は、税制そのものをストレートに問うのではなく、「奈良時代のある貴族の食事」を切り口とすることで、貴族の食事に見られる特徴と当時の税制を子どもたち自身が結び付けて考えるようになっています。「調として各地の特産物をおさめる」ことは知っていても、「何を」「どのように工夫して」運んでいたのかには目を向けていなかったことに、この問題を通して気付いた受験生も多かったのではないでしょうか。用語の表面的な理解にとどまらず、さまざまなことを探求して、それらの結びつきを考えていく姿勢は、中学校に入学してからも子どもたちに持ち続けてほしいものです。
以上の理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。