出題校にインタビュー!
市川中学校
2016年03月掲載
市川中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.「ふまえて」の誘導にうまく乗って解く
インタビュー2/3
難しいテーマでも問いはオーソドックス
川崎先生 社会科の入試で大切にしているのは、まず基礎的知識が身についていることです。この問題のように、取り上げているのは奈良時代の食ですが、聞いていることは租税制度といった基本的なことです。
2016年の第2回入試で格差問題を取り上げましたが、テーマは一見難しそうでも、きちんと学習してきたお子さんが解けるような問題を出題しているつもりです。基本的な用語や出来事をしっかり身につけること、そして、単元や時代などの偏りなくまんべんなく学習してください。
相馬先生 本校の歴史の問題は漢字指定ですが、認知されてきたと感じます。漢字指定の用語記述はよくできているという印象です。
社会科主任/川崎学先生
設問文や文章選択肢で読ませる
川崎先生 社会科では一問一答式のような基礎知識の定着をみる問題だけでなく、身につけた知識を活用してその場で考える問題を各分野で出題するようにしています。
選択式でも考える問題を出すように心がけています。「すべて選びなさい」「2つ選びなさい」のような文章選択では、正確な知識と読む力が必要です。「1つ選びなさい」だと、1つ正解を見つければ最後の選択肢まで読まないかもしれませんが、「すべて」となれば最後まで目を通すでしょう。
相馬先生 「すべて選びなさい」という問題は正答率が低かったですね。きちんと読むことを大切にしてほしいと思います。
川崎先生 リード文は例年かなり力を入れていますが、受験生は空欄の前後だけを読んで解いている様子です。リード文を読ませるのは難しいと感じています。そこで、設問文や選択肢で読ませるように工夫しています。
第1回入試の大問2で、リード文中の空欄にあてはまる語句や人名を答える問題を出しましたが、そのうちの1つは、同じ語句が入る空欄を4カ所設けました。最初の空欄だけでなく、そのあとの空欄にもあてはまるか、続きの文章も読んで確かめてもらうようにしました。
付随条件をメインに書かない
相馬先生 文章記述については何かしら書いてくれており、あきらめずに解こうとしているのがわかります。
川崎先生 小学生は要素を1つ入れればそれで終わりという傾向があります。本校の入試では求めている要素が1つだけではないことが多いので、求められている要素がすべて入っているか、確認するようにしましょう。
大問2の歴史・公民分野で、「GHQが警察予備隊の結成を命じた理由」を、「当時の国際情勢をふまえて」説明する記述問題を出しました。ふまえるべき国際情勢が朝鮮戦争だということは、受験生は知っているでしょう。でも、それは解答の条件であってメインではありません。
「1950年に朝鮮戦争が起きて、警察予備隊が結成された」という知識と、「国際情勢をふまえて」という条件に引っ張られて、反射的に「朝鮮戦争が起きた」だけを書いても完答にはなりません。
知っていることを書きたがるのは高校生も同じです。勢いで書いてしまわずに、そこをぐっとこらえて、「本当にそのことを要求しているのか」と立ち止まる“勇気”があるといいですね。高3にもよく、メインの問いは何か、付随条件は何かを見極めるようにと言います。
これは、国語の問題にも通じるところがあると思います。
市川中学校
「ふまえて」は正解の方向性を示す道しるべ
社会科の記述問題というと、多くの学校が「○○はどういうことですか」と用語を説明させます。貴校の2016年の記述問題は設問文にいずれも「ふまえて」が使われていますね。
川崎先生 それは、「覚えた知識だけ書いても足りないよ」ということです。
大問3の地理分野では、「地熱発電がほかの再生可能エネルギーほど設備の導入が進んでいない理由」を説明させていますが、提示した地図(日本の主な火山の分布と主な国立公園の分布)をふまえて書くのが条件です。
その条件がないと自由に書けてしまいますね。地図から読み取れない事柄をいくら書いても得点にはなりません。
川崎先生 「ふまえて」という言葉が、実は正解を誘導しているのです。その誘導にうまく乗れると、解答がおかしな方向にいかずに得点できると思います。
「ふまえて」という言葉は小学生には難しいかもしれませんが、「使って」と同じ意味だととらえていいでしょう。
インタビュー2/3