シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

国学院大学久我山中学校

2016年01月掲載

国学院大学久我山中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.社会科全科目履修が総合力の土台をつくる

インタビュー3/3

高校の社会科は全科目履修。ムダな学びはない

山根先生 高校では社会科の科目をすべて履修します。このスタイルが多角的な視点や豊かな発想を養うのに役立っていると思います。2020年の大学入試がどうなるかまだわかりませんが、「合教科・科目型」や「総合型」の問題の導入が取りざたされています。日本史だけ、世界史だけのように特定の科目だけ勉強すればいいというわけにはいかなくなります。

坪原先生 全科目履修によって、科目横断的な知識のネットワークが構築され、高3になるそれが活きてきます。特に難関私大や国公立大学の最近の入試問題を見ると、政治経済や倫理もきちんと学んでいないと対応が難しくなっています。高3になって、「もう少し政経をまじめに勉強していれば…」とつぶやく生徒もいますが、「○○を勉強したよね」と話せば思い出してくれますから、全くやっていないのとは大違いです。

社会で活躍している卒業生の在学中を思い起こすと、特定の教科・科目を手抜きすることなく、まんべんなく学習していました。学習にムダなことはありません。ムダに思えたようなことでも、生徒の地力となり、将来役に立つ場面が必ずあると思います。

女子部長/高橋秀明先生

女子部長/高橋秀明先生

学年・男女問わず歴史好きが集まる関西方面校外学習

高橋先生 国語科と社会科がタイアップした取り組みが、中1の地域探訪と、中2〜高2(希望者)の関西方面(京都、奈良、伊勢)の校外学習です。この取り組みを通して、自分で学びを広げてくれればと期待しています。関西方面の校外学習はリピーターが結構いるので、毎年コースを変えています。

山根先生 関西方面の校外学習には歴史に興味のある生徒が学年や性別問わず集まります。夜には勉強会を開き、先輩が後輩に教えたり、得意分野については後輩が先輩に説明する場面も見られます。先輩は後輩の面倒をよく見ていますし、後輩も「先輩のようになりたい」と見習っています。クラスメイトとは違う仲間から刺激を受けて、生徒はいきいきしています。

留学生に地域を案内する「新・地域探訪」も計画

高橋先生 地域探訪は、学校周辺の隠れた歴史や文学スポットを巡ります。関東大震災時に深川など下町界隈から寺院の集団疎開という形で宗派を越えて形成された「寺町」、浮世絵師・喜多川歌麿の墓がある専光寺、太宰治が入水自殺した玉川上水など、私たちの身近な歴史や文化が学びの材料になります。それは入試問題とも共通します。地域探訪は生涯続く学習のスタートとして位置づけています。

来年度から、中2〜高2の希望者を対象に、中1のときに教員に教わったことを留学生に英語で案内するプログラムも計画しています。社会科と国語科に、英語科が加わることで、さらに学びが広がっていくことを期待しています。

国学院大学久我山中学校 図書館

国学院大学久我山中学校 図書館

的確に判断できる力を身につけてほしい

山根先生 中高6年間で身につけてほしいのは、生涯にわたり人生をたくましく生きる力、生きていく上で人間力の土台となる力です。本校が挨拶や身だしなみを厳しく指導するのはそのためです。

高橋先生 総合力は「生きる力」と言い換えられると思います。どんなに厳しい状況に置かれても的確に判断できる力が求められます。それには判断できるだけの材料(知識や経験)を持つことです。

山根先生 情報を鵜呑みにするのではなく、自分の目で判断できるようになってほしいですね。歴史では勝者が“正義”であるかのように語られますが、生徒によく「本当にその通りだと思うか?」と投げかけています。敗者の目線で見る、少数派の意見に耳を傾けるなど、複眼的な視点も大切にしてほしいと思います。

インタビュー3/3

国学院大学久我山中学校
国学院大学久我山中学校1944(昭和19)年、時の岩崎通信機社長・岩崎清一が岩崎学園久我山中学校として設立。52年に國學院大學と合併、校名を國學院大學久我山中・高等学校と改称。85年より中学校(男子部)を再開、また高校女子部を新設。91(平成3)年に中学校女子部を新設。2000年に校名表記を現在の形へ変更。2004年に創立60周年記念式典を挙行した。
勉学を軸足として、行事にクラブ活動に主体的に参加する「明るくさわやかな」学園生活を目標にしている。そのために規律を守ることを重視し、日頃から「あいさつの励行」をモットーとしているほか、月1度の「環境美化の日」には、校内外の大掃除をして心の浄化につとめている。クラスは男女別、課外活動では交流する「共学的別学」が大きな特色。
玉川上水の流れる久我山台の広大な敷地に、男子部と女子部それぞれの校舎のほか、天体ドームを備えた理科会館、文科会館、図書館、錬成館、カフェテリア(食堂)、体育館2棟、ラグビー練習場、テニスコートなどがそろっている。
50分×6時間授業6日制。私立大学付属校型から「国公立大学型」カリキュラムに変更し、ハイレベルな進学校として実力を伸ばしている。先取り学習を行い、中2で中学課程を修了。中3で英・数の習熟度別授業が始まる。英検や計算力診断テスト、漢字検定など、継続的な学習も素地を固めるうえで役立っている。高1で国公立大、私立大の2コース、高2で外進生と混合し、文系・理系の4コースに。2008年からは国公立難関大学を目指す中高一貫のSTクラス(特進クラス)を設置。入試にも「STクラス選抜」入試を導入している。早朝・放課後講習、夏・冬休みの勉強合宿とバックアップ体制も充実している。例年、東大などのほか、早慶上智大などには合計100名以上の現役合格者を出すという見事な実績で、ますます大きな期待がもたれている。併設大へは例年10%前後が進学。
朝の10分間読書から一日が始まり、放課後は思い思いのクラブ活動を行っている。何度も全国制覇を果たした高校ラグビー部、甲子園出場回数の多い野球部をはじめ、サッカー、バスケットボール、剣道、陸上競技などが全国レベル。クラブ数は中学は27、高校は45ある。自然体験教室が多く、中1は信州高遠、中2は尾瀬・奥白根、中3では北海道ファームステイを実施。文化祭は学園最大のイベントで、中学男女、高校男女が合同で実施。夏には高1希望者対象にイギリス語学研修制度がある。ほかに写生会、芸術鑑賞会、武道大会と行事は多彩。