出題校にインタビュー!
国学院大学久我山中学校
2016年01月掲載
国学院大学久我山中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.生活者としての視点を大切にした問題
インタビュー1/3
取り扱いを間違えば便利なものが危険になる
坪原先生 社会科では例年、生活者としての視点を重視した問題を出しています。この問題を含む最初の大問がそうで、久我山らしさが最もよく表れていると思います。
実はこの問題を作った後、年明けに朝日新聞に、乳幼児のボタン電池の誤飲の記事が大きく掲載されました。ボタン電池を使う製品は、おもちゃ、時計、タイマー、リモコン、LEDライト、体温計など私たちの身の回りにたくさんあります。普段、当たり前のように使っているものでも取り扱いを誤ると、事故につながることがあります。便利なだけでなく危険性もあることを、一人の生活者として自覚してほしいという思いから、この問題を作りました。
社会科/坪原政喜先生
「ものがつまる」事故が多い年齢層は?
前回取り上げた警察に届けられた拾得物についての問題(2012年10月掲載)も、生活者目線の問題ですね。
坪原先生 落とし物は日常よくある出来事です。過去問では拾得届と遺失届のグラフを提示して、傘は忘れ物が多い割に遺失届が非常に少ない理由を考えてもらいました。
2015年の第1回入試では、日常生活の事故で救急搬送された人たちの年齢層別搬送人数のグラフを出して、事故の種類を選ばせました。「ものがつまる、誤って飲むなど」の事故は、乳幼児だけでなく高齢者でも目立ちます。正月になると、餅を喉に詰まらせて救急搬送されるお年寄りのニュースをよく耳にするでしょう。このように、普段の生活の中から答えを見つけられる問題が本校の大問1の特徴です。
貴校が用いる資料はユニークで、問題を作る立場として興味深く拝見しています。
山根先生 中には小学生が見慣れない資料や統計もあるでしょう。でも、まるで手が出ないような問題ではないはずです。そのタイプは知っているかどうかの問題ではないので、あきらめないで資料から情報を読み取り、持っている知識と結びつけて考えましょう。
「大型化」の解決策はボタン電池の長所をなくす
坪原先生 ボタン電子の誤飲という課題の解決策は1つではありません。このような問題は自由に発想してもらって構いません。少々突飛でも、ユニークな発想には積極的に点数をあげたいと思っています。
採点をしたところ、正答率はあまり高くありませんでした。何かしら書いてはいるけれど、無理がある解決策が多かったと記憶しています。
多かったのが、「製品を大きくする」という解答です。技術が進化すると製品の開発は小型化に進みます。ボタン電池もそうです。開発者の立場で考えると、大型化はものづくりの流れとは逆行しますから、「大きくする」は正解にはしませんでした。
「目立つ色を付ける」という解答もありましたが、乳幼児はそれが危険の合図だと思うでしょうか。派手な色にかえって興味を持ち、口に入れてしまうかもしれません。
また、「口に入れると苦みを感じる成分を塗っておく」は、乳幼児が「何でも口に入れたがる」習性と、「苦みが苦手」という特徴から「苦みを感じればすぐにはき出す=危険回避」と発想した答えですが、そこまで考えが及んだ解答は少なかったです。薬など苦いものを口にして嫌な思いをした経験があれば思い浮かんだかもしれませんが、小学6年生には難しかったようです。
発想が乏しかったのは、生活上の経験が少ないことと関係しているかもしれません。その点はこちらも気をつけて、今の子どもの事情に合わせた問題づくりを心がけています。
国学院大学久我山中学校 校舎
開発者のつもりで想像力をふくらませる
この問題は、利用者ではなく「製品開発者」の立場で答えさせていますね。
山根先生 本校は昔からいろいろな立場の視点で考える問題を出題しています。それは物事を柔軟にとらえる視点を養いたいからです。
過去の入試で、年齢層別の購入品目のデータを提示して、「あなたがコンビニの店長だったら、どんな販売戦略を立てますか」という記述問題を出したことがあります。コンビニの店長経験がなくても、示されたデータや消費者としての経験をもとに考えれば全く手が出ないわけではないと思います。
坪原先生 「どうすれば危険な目に遭わないか」という利用者目線から、「どんな仕組みなら危険を避けられるか」を開発者になったつもりで、想像力をふくらませてみましょう。経験不足だとしても、リード文から読み取ったことを基に想像しましょう。リード文は懇切丁寧に作っています。よく読むと答えのヒントを見つけられると思います。
ただ、最近は文章をきちんと読まなくなっています。高3でも読み飛ばして簡単な間違いをする生徒が多いです。受験生も普段からきちんと読む習慣をつけるようにしましょう。
課題を解決する力を試す問題
坪原先生 本校では社会で活躍できる素養として、「総合力」の育成を掲げています。総合力には「課題を解決する力」の側面もあります。与えられた情報やこれまでの生活者としての経験から、どうすれば「乳幼児の製品の誤飲」という生活上の課題を解決できるか、受験生の考えを聞いてみたいと思いました。
どんなことが課題になっているかを「知る」だけでなく、課題を解決する方法まで踏み込んで考えようとするお子さんに入学していただきたいと思っています。例えば、朝の支度にいつも時間がかかるなら、どうすれば手間取らずに支度ができるか手順や方法を考えるなど、生活の中で問題解決能力を鍛えることができます。
過去の入試で、家庭における省エネ行動を選ぶ問題を出題したことがありました。正解は「みんなで一緒に入浴する」ですが、これを普段から実践されているご家庭もあったのではないかと思います。
課題を解決する力は、これからの社会でも求められる人材の能力の1つです。与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、なぜそのような問題が起こるのか疑問に思うこと、さらに、どうすれば問題を解決できるか考えられる人材を育てたいと考えています。
国学院大学久我山中学校 図書館
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