シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

実践女子学園中学校

2015年10月掲載

実践女子学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.理科への興味関心を高めるために、課外プロジェクトを実施。

インタビュー2/3

受験生の印象に残る題材を選びたい

スーパームーンの問題もありましたね。

鴇田先生 昨年、話題になりましたよね。満月がいつもより大きく見える現象です。月が地球の周りを回る軌道が円ではなく楕円のため、満月の時期と月が地球にもっとも近い位置にくる時期とが重なると起こるのです。

なぜ、題材にしたのですか。

鴇田先生 ニュースだけでなく、芸人さんがスーパームーンをバックに歌を歌うテレビ番組があり、授業で話題にすると多くの生徒がそれを「見た」と言っていたので、小学生の目にも触れていると思いました。なぜ、こんなに月が大きいのか。スーパームーンは周期的に見られる現象なのかを受験生に聞いたら、できなくても「おもしろい」と思ってもらえるのではないかと思ったのです。理科で問題を持ち寄った時に「難しすぎるのではないか」という声があがりました。さすがに2014年8月11日の次にスーパームーンが見られるのはいつかを計算で出させる問題は選択肢になりましたが、問題を取り上げてもらえてよかったです。今年もスーパームーンは見られました。その時に「そういえば去年、どこかの問題に出たぞ」と思ってもらえたら嬉しいです。

実践女子学園中学校

実践女子学園中学校

思っていることを口にしてほしい

鴇田先生 今回このような問題を出してみて、個々がもっている知識を組み合わせて考えさせることの大切さを再認識し、教科内で根づかせたいと改めて思いました。今年はたまたま中1の授業を担当していないので機会を逸していますが、担当していれば聞いていたでしょうね。「今ならこう答える」という子もいるでしょうし、考えに対して「いい発想だね」などと言ってあげたいからです。

島野先生 近ごろの子は思ったことを言わないですよね。

間違えたら恥ずかしいという気持ちが働くのかもしれないですね。

島野先生 そのバリアを外していきたいと思っています。

鴇田先生 中学生は言えない子が目立ちます。高校生になると、顔見知りが増えて、言える雰囲気になるので、いかに早い時期から思ったことを言えるようにするかが課題です。

アウトプットする力を重視

鴇田先生 私たちは「自分の言葉で言える」ということを重視しています。アウトプットする力をつけることを課題としているので、入試問題でも、実験から得られることや考えられることなどを自由に記述するような問題も出していきたいと考えています。もちろん基礎学力も大事です。知識がなければ、考えが深まらないからです。今回の問題もそうでしたが、答えを導き出すにはもっている知識を総動員して考える力<思考力や発想力>と、考えたことをわかりやすい言葉で伝える力<論理性や表現力>が必要なので、基礎基本をしっかり勉強した上で、考える力や表現する力を養ってきてほしいです。

実践女子学園中学校

実践女子学園中学校

中学時代は実験で興味関心を高める

授業でもアウトプットする力を磨くための工夫をしていますか。

鴇田先生 実験の後にレポートを書かせています。以前はプリントを配り、こちらで用意した項目に従って記入させていましたが、それでは不十分だと気づき、レポート形式にしました。定着するまでは小さな実験でも書かせていましたが、10年あまり取り組んできて、今は臨機応変に書かせる場面を選んでいます。在学中に成果を発揮できない生徒もいますが、大学に進学してから「役に立った」と言ってくれる子が多いので、取り組んでよかったと思っています。

SJCの3分の1が理系志望

文理の割合はどのような感じですか。

鴇田先生 GJC(グローバルスタディクラス)が1クラス、一般学級が6クラスで、SJCの2クラスが理系、4クラスが文系です。生徒に聞くと、中学入試に向けた勉強の段階から理科の勉強はあまりしていないようで、いい点数を取る子は少ないのですが、「理科が好き」という子は少なくありません。そこで、中1、中2の授業では実験をたくさんやっています。その分、レポートは大変ですが、実験は嬉々として取り組んでいます。そこで、中学生を対象に「実験講座」と称して、ペットボトルロケットを飛ばす、解剖をするなど、授業ではできないことを行う機会を設けています。3学年が混ざるため、上級生から学ぶこともあるようです。

実践女子学園中学校

実践女子学園中学校

高1にはアメリカの大学で成果発表を行うプロジェクトも始動

鴇田先生 さらに昨年から、中3の有志を対象に「理科ゼミ」も開講しています。これは通年で、土曜日の放課後に集まり、創意工夫が必要な実験をさせています。JAXAの方から話を聴くなど、先端技術にも触れる機会をつくりました。今年の中3はそれに加えて夏休みに西表島の自然観察教室を行い、(今年は台風のため残念なことに実施できませんでしたが)理科への興味や探究心を引き出しています。

島野先生 理科の先生は若いのでエネルギーがあります。だから、先頭を切っていろいろなことにチャレンジしています。高1を対象にした「サイエンス探求プロジェクト」もその一つで、春休みにはアメリカの大学でプレゼンテーションを行う、ダイナミックなプロジェクトも始まっています。来年3月にはアメリカ西海岸の大学で日頃の研究成果を発表する予定(5泊7日)なので、後期は理科の実験を繰り返し行うかたわら、本校のネイティブ教員に力を借りて、英語でプレゼンテーションを行う準備も進めていきます。パワーポイントなどのパソコンスキルや英語の表現力を高めることが中心になると思います。同時にカランメソッド(フィリピンとSkypeでつなぎ英会話を訓練する学習法)でも英語力を高めていきます。

30名定員が埋まるサイエンス探求プロジェクト

魅力あるプロジェクトですね。何名くらい参加しているのですか。

島野先生 西表島での自然観察やアメリカ研修を前提にしているプロジェクトなので、30名定員で募集し、昨年は33名、今年は28名が参加しています。「理科ゼミ」に参加した生徒が、高1で「サイエンス探求プロジェクト」に参加するという流れができつつあります。成績ではなく希望制なので、様子を見に行くと、真剣ですが楽しそうに取り組んでいます。理科の先生は、生徒の理科への興味関心を引き出すことにすごく努力しているので、理科が好きな子、関心のある子に入ってきてもらいたいですね。□の中に答えを入れられる子ではなく、答えにたどりつくまでの過程を延々と話すような子、間違っていてもいいので自分の言葉で説明できる子に入ってきてほしいので、これからもアウトプットする力を問う問題はなんらかのカタチでは入ってくると思います。

実践女子学園中学校

実践女子学園中学校

インタビュー2/3

実践女子学園中学校
実践女子学園中学校渋谷駅から徒歩10分、表参道から徒歩12分にある実践女子学園は、女子教育の先覚者下田歌子によって、明治32年に創設された。皇女教育を拝命することになった下田は宮内省の命を受けて2年間の欧米女子教育視察を行い、先進諸国の女性たちの社会的地位の高さや、自立して生きる姿を目の当たりにし、日本における一般の女子教育こそ不可欠と痛感、帰国後、女子教育の普及のため全国を奔走した。実践女子学園はその中心として、下田が私財を投げ打って設立した学校である。校名の「実践」は、学問を実際に役立てて実行するという意味で、「知識」を習得するだけではなく、それらを実生活において「実践」し、社会に貢献するという理念が込められている。
生徒一人ひとりが、仕事と家庭を両立しうる高い社会的スキルと、将来を生き抜く強い人間力を獲得し、高い志と品格を持って、自らの生きる道を切り開いていくための全人教育が伝統となっている。生徒が凛とした女性として国内外で活躍できるようにするため、「グローバル教育」「探究教育」「感性表現教育」を教育の柱としている。
「グローバル教育」では“日本を知る”“世界を知る”“自分の役割を知る”というコンセプトのもと、日本人であることを基盤にグローバルな視点から自分の未来をデザインする力を養うことに力を注いでいる。“レベル別少人数多展開”の授業、ネイティブ教員11名体制での英語教育の充実はもちろん、交換留学や海外研修、模擬国連の出場、帰国生の受け入れ、海外進学指導など、学校全体がグローバル教育の舞台となっている。
人と協働して思索を深め、みずから課題を発見して解決する力を養うことが狙いの「探究教育」では、全ての授業で「考えさせる」取り組みを推進するほか、多様なプログラムが数多く設けられている。中3の「総合学習プロジェクト」や高1の「クエストエデュケーション」は全員が取り組み、そのほか、「理科ゼミ」「数学ゼミ」「サイエンス探究ゼミ」「沖縄自然体験教室」など理系のプログラムも豊富。在校生の約3割が理系進学希望と年々増加している。
「感性表現教育」では、“観る力”“聴く力”“感じる力”を養い、自らを“表現する力”へとつなげていく取り組みで、日々の授業を始め、教育活動すべてが、豊かな感性を磨く場になっている。中でもクラブ活動や学校行事は非常に活発に行われており、クラブ活動は中学校は必修、高校では自由参加としているが、高校生の約80%は最後までクラブを続け、かけがえのない友と苦楽や感動を共有している。またほとんどの学校行事は、生徒たちの実行員会によって企画・運営され、その伝統が豊かな教育文化として継承されている。
キャリア教育の充実により生徒の進路は多様化し、理系学部(医歯薬系、理工系)への志望者が大きく増加したほか、文系学部でも法学、経済・経営、商学、国際関係、外国語系といった時代性を反映した学部への関心が高まっている。高1でキャリアプランを作成することにより、生徒たちは明確な夢や目標を持って主体的に進学準備に取り組み、自分の進路実現を着実に果たしている。職員室内にカウンセリングコーナーがあり、熱心な個別指導や活発なコミュニケーションが促進されており、大規模な学校だが、きめ細かく手厚い指導を実現する仕組みが構築されている。