シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

実践女子学園中学校

2015年10月掲載

実践女子学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.理科を通して視野を広げ、いろいろな考え方や表現の仕方を学ぼう。

インタビュー3/3

高1ではサイエンスプロジェクトを始動

島野先生 本校では中1、中2を「基礎期」、中3、高1を「充実期」、高2、高3を「発展期」と位置づけています。「充実期」をいかに過ごすかで進路が変わるので、いろいろなことに興味を持たせたいと考えています。そこで理科に触れながら、いろいろな考え方ができるように育てたいという思いから、「サイエンス探求プロジェクト」を始めました。中3の「理科ゼミ」で「おもしろいな」と思った子どもたちに、もう少し専門性を高めて、自分たちで課題研究に取り組み、まとめたものをアメリカの大学でプレゼンテーションする。そのようなプロジェクトを通して、理想をいえば理系を選択し、高い志をもって進路を切り拓いてほしいと思いますが、そこにはこだわらず、文系に進んでも「サイエンス探求プロジェクト」で培ったものを活かせるようなかたちになってくれればいいと思っています。

サイエンスは世界共通の土俵ですからね。

島野先生 理系的な視点は、文系に進んでも役に立つと思います。

教頭/島野卓生先生

教頭/島野卓生先生

おもしろいからという単純な気持ちで理系に進路が拓けたら嬉しい

島野先生 女子は自分の可能性を低く設定しがちです。教員は「あなたには大きな可能性がある」と言いますが、残念ながらその言葉に刺激される子はそれほど多くありません。ならば自分で体験して、自分の能力やさらなる可能性に気づいてもらうしかないので、私たちは充実期のテーマをそこに置いています。
数学でも英語でも、少し尖った内容を夏期、冬期の講座などに盛り込んで、「やればできる」「こんなに頑張れる」ということに気づいてくれればと思っています。「基礎期」に身につけた基礎学力や学習への姿勢などを活用し、自分の勉強が進んでいくのではないかと考えています。与えられる学びから、自分でやる学びに変わっていくのが中3、高1の2年間なので、その時期に「おもしろいから」という単純な気持ちで、理系に進むことなど考えていない中2生が、中3、高1とやっていくうちに、心の針が振れたとしたら私たちとしては成功です。そういう場がなければ、その子は「理科は苦手」という意識のままで終わってしまうかもしれないですよね。「実験をやるからおいで」という言葉に誘われて、やってみたらはまった。そういう機会があれば、その子の人生が広がると思うのです。

日頃から『なぜ?』と気に留めることを大切にしよう

受験生に向けて、理科で学んできてほしいことを教えてください。

鴇田先生 やはり大切なのは基礎基本です。突出した分野があっても、そこが出題されなければその子の輝きを見ることはできないので、まんべんなく勉強してください。
また、理科に興味関心を抱くことも、小学生のうちに習慣づくといいと思います。日頃からニュースや新聞を見て、スーパームーンやうなぎが話題になった時に「ふーん」で終わらせず、「なぜそういう現象が起きるのかな」と気に留めてほしいのです。そして自分で調べるということを積み重ねていけば必ず力になり、いざという時に活用できます。

先生はどのようにして理科に興味をもったのですか。

鴇田先生 私は千葉の田舎で育ちました。中学生になっても遊びは森の中で缶蹴りをしたり、釣りをしたりと、自然の中で過ごすことが普通だったので、川の流れが狭いところは危ないなどということは体験から学んでいました。理科への興味を育てるには実体験が大切なので、時間があればそういう機会をたくさんもってほしいですね。

実践女子学園中学校

実践女子学園中学校

インタビュー3/3

実践女子学園中学校
実践女子学園中学校渋谷駅から徒歩10分、表参道から徒歩12分にある実践女子学園は、女子教育の先覚者下田歌子によって、明治32年に創設された。皇女教育を拝命することになった下田は宮内省の命を受けて2年間の欧米女子教育視察を行い、先進諸国の女性たちの社会的地位の高さや、自立して生きる姿を目の当たりにし、日本における一般の女子教育こそ不可欠と痛感、帰国後、女子教育の普及のため全国を奔走した。実践女子学園はその中心として、下田が私財を投げ打って設立した学校である。校名の「実践」は、学問を実際に役立てて実行するという意味で、「知識」を習得するだけではなく、それらを実生活において「実践」し、社会に貢献するという理念が込められている。
生徒一人ひとりが、仕事と家庭を両立しうる高い社会的スキルと、将来を生き抜く強い人間力を獲得し、高い志と品格を持って、自らの生きる道を切り開いていくための全人教育が伝統となっている。生徒が凛とした女性として国内外で活躍できるようにするため、「グローバル教育」「探究教育」「感性表現教育」を教育の柱としている。
「グローバル教育」では“日本を知る”“世界を知る”“自分の役割を知る”というコンセプトのもと、日本人であることを基盤にグローバルな視点から自分の未来をデザインする力を養うことに力を注いでいる。“レベル別少人数多展開”の授業、ネイティブ教員11名体制での英語教育の充実はもちろん、交換留学や海外研修、模擬国連の出場、帰国生の受け入れ、海外進学指導など、学校全体がグローバル教育の舞台となっている。
人と協働して思索を深め、みずから課題を発見して解決する力を養うことが狙いの「探究教育」では、全ての授業で「考えさせる」取り組みを推進するほか、多様なプログラムが数多く設けられている。中3の「総合学習プロジェクト」や高1の「クエストエデュケーション」は全員が取り組み、そのほか、「理科ゼミ」「数学ゼミ」「サイエンス探究ゼミ」「沖縄自然体験教室」など理系のプログラムも豊富。在校生の約3割が理系進学希望と年々増加している。
「感性表現教育」では、“観る力”“聴く力”“感じる力”を養い、自らを“表現する力”へとつなげていく取り組みで、日々の授業を始め、教育活動すべてが、豊かな感性を磨く場になっている。中でもクラブ活動や学校行事は非常に活発に行われており、クラブ活動は中学校は必修、高校では自由参加としているが、高校生の約80%は最後までクラブを続け、かけがえのない友と苦楽や感動を共有している。またほとんどの学校行事は、生徒たちの実行員会によって企画・運営され、その伝統が豊かな教育文化として継承されている。
キャリア教育の充実により生徒の進路は多様化し、理系学部(医歯薬系、理工系)への志望者が大きく増加したほか、文系学部でも法学、経済・経営、商学、国際関係、外国語系といった時代性を反映した学部への関心が高まっている。高1でキャリアプランを作成することにより、生徒たちは明確な夢や目標を持って主体的に進学準備に取り組み、自分の進路実現を着実に果たしている。職員室内にカウンセリングコーナーがあり、熱心な個別指導や活発なコミュニケーションが促進されており、大規模な学校だが、きめ細かく手厚い指導を実現する仕組みが構築されている。