シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

実践女子学園中学校

2015年10月掲載

実践女子学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.未知のものに対処する力、創造する力を身につけてほしい。

インタビュー1/3

おもしろいと感じてもらえる問題を出したかった

出題意図から話していただけますか。

鴇田先生 答えのない問題だったので、受験生はとまどったのではないかと思います。このような問題を出した理由は、ただ知識を問うのではなくて、入試を終えて家に帰った時に「こんな問題が出たんだよ」と、お父さん、お母さんに話したくなるような問題を作りたいと思ったからです。

うなぎを題材に取り上げた理由を教えてください。

鴇田先生 昨年の夏、うなぎの価格が高騰して話題になりました。ニュースを見て「なぜ養殖できないのか」と思い調べると、いまだに研究段階であることを知ったのがきっかけです。入試で答えのない問題を出すことは冒険です。採点に手間がかかるからです。本校は当日発表なので、作問したものの、「採用されないかもしれない」と思いながら提出すると、教科の先生から「おもしろいね」という声があがり、「大変だけど出題してみよう」ということになりました。

理科/鴇田篤先生

理科/鴇田篤先生

道筋を立てて説明する力を問いたい

島野先生 各教科の作問責任者を集めて、学校側の考え方を伝える時に、「この学校を受けてよかったと思ってもらえる問題にしてほしい」と言いました。入試なので、問題を解くことが楽しいとは思ってもらえないかもしれないけれど、本来、問題を解くことはパズル遊びのように楽しいはずです。ですから各教科の作問者には「夢中になればおもしろかったという思いをもってくれる。そういう問題を作ってほしい」と話しています。

今後もこのような問題が増えそうですね。

島野先生 そうだと思います。私たちは、答えにどうアプローチしたかを筋道立てて説明する力を問わなければなりません。そういう意味で、教科の枠にとどまらない設問の仕方を考えているところです。

残念ながら、空欄が目立った

鴇田先生 女子校なので、どちらかというと文系志向の生徒が多く、理科の先生方とはいつも「理科を好きになってほしい」「楽しんでほしい」「そのためにはどうすべきか」という話をしています。有志で中学生を対象に「実験講座」を開くなど、行動も起こしています。社会の風潮も、答えのないものを導き出す力を求めているので、「入試で答えのない問題を出したい」と言った時に、「やってみよう」ということになったのだと思います。

おもしろい答えはありましたか。

鴇田先生 受験生はどんなことを書いてくるだろうかとわくわくしながら、ヒントとなるリード文を書きました。受験のために身につけてきた知識をもとに、建設的な意見を述べることができていれば○をつけようと思っていましたが、残念ながら、空欄が目立ちました。うなぎを何らかの方法で追跡するというような解答はありましたが、研究者に伝えたいと思うような秀逸の解答はありませんでした。

実践女子学園中学校

実践女子学園中学校

記述問題や計算が大変な問題は避けられる傾向がある

鴇田先生 理科では、物理・化学・生物・地学の4分野から1問ずつ、バランスよく出題しています。こちらとしては、どの問題にもチャレンジしてほしいという思いで作っていますが、記述問題や計算が大変な問題は空欄になる傾向が高いのです。在校生に聞くと、理科・社会は配点が50点・50点。社会よりも理科は平均点が低いので後回しにするようです。また、「できるところからやりなさい」という指導をする塾もあるようで、おもしろい答えと出会えるのではないかという想いは、残念ながらかないませんでした。

島野先生 本校は渋谷駅から10分ほどのところにありますが、学校の中にはたくさんの木々があります。ぜひそこに目を留めてほしいのですが、自然に興味関心をもつ子がどれだけいるでしょうか。もっともっと増やしたいので、私たちは空欄が多かったとはいえ、あきらめるつもりはまったくありません。なぜなら、入試は、学校の姿勢を伝えるメッセージだと思っているからです。こういう問題を出し続けることにより、実践女子学園は「考える力」「発信する力」「いろいろなことに興味関心をもって探究する力」などを持っている子に入ってきてもらいたいのだということを発信し、去年よりも今年、今年よりも来年…というように、少しずつでも増えていけばいいと考えています。

あきらめないで書いてほしい

どのくらい空欄でしたか。

鴇田先生 採点に困らないくらいです。正答率は16%でした。調べる方法を聞いているので、親うなぎを川辺でつかまえて、GPSのような追跡装置をくくりつけて追跡するなどの方法を考えることは想定していました。案の定「追跡する」という答えは多かったのですが、例えば「泳いで追跡する」など現実離れしているもの、理科の視点で説明できていないものは不正解にしました。

部分点はありましたか。

鴇田先生 ありました。満点とはいかないけれど点数はあげたいという解答には部分点をつけました。記述問題は、書けば採点する材料になるので、白紙はもったいないですね。このような自由な発想で書ける問題は、あきらめないで書いてほしいと思います。また、ただ「うなぎを追跡する」だけでなく、「アクアラングをつけて」など、説明にもう少し自分の考えを加えてもらえると、点数が伸びたと思います。

実践女子学園中学校

実践女子学園中学校

インタビュー1/3

実践女子学園中学校
実践女子学園中学校渋谷駅から徒歩10分、表参道から徒歩12分にある実践女子学園は、女子教育の先覚者下田歌子によって、明治32年に創設された。皇女教育を拝命することになった下田は宮内省の命を受けて2年間の欧米女子教育視察を行い、先進諸国の女性たちの社会的地位の高さや、自立して生きる姿を目の当たりにし、日本における一般の女子教育こそ不可欠と痛感、帰国後、女子教育の普及のため全国を奔走した。実践女子学園はその中心として、下田が私財を投げ打って設立した学校である。校名の「実践」は、学問を実際に役立てて実行するという意味で、「知識」を習得するだけではなく、それらを実生活において「実践」し、社会に貢献するという理念が込められている。
生徒一人ひとりが、仕事と家庭を両立しうる高い社会的スキルと、将来を生き抜く強い人間力を獲得し、高い志と品格を持って、自らの生きる道を切り開いていくための全人教育が伝統となっている。生徒が凛とした女性として国内外で活躍できるようにするため、「グローバル教育」「探究教育」「感性表現教育」を教育の柱としている。
「グローバル教育」では“日本を知る”“世界を知る”“自分の役割を知る”というコンセプトのもと、日本人であることを基盤にグローバルな視点から自分の未来をデザインする力を養うことに力を注いでいる。“レベル別少人数多展開”の授業、ネイティブ教員11名体制での英語教育の充実はもちろん、交換留学や海外研修、模擬国連の出場、帰国生の受け入れ、海外進学指導など、学校全体がグローバル教育の舞台となっている。
人と協働して思索を深め、みずから課題を発見して解決する力を養うことが狙いの「探究教育」では、全ての授業で「考えさせる」取り組みを推進するほか、多様なプログラムが数多く設けられている。中3の「総合学習プロジェクト」や高1の「クエストエデュケーション」は全員が取り組み、そのほか、「理科ゼミ」「数学ゼミ」「サイエンス探究ゼミ」「沖縄自然体験教室」など理系のプログラムも豊富。在校生の約3割が理系進学希望と年々増加している。
「感性表現教育」では、“観る力”“聴く力”“感じる力”を養い、自らを“表現する力”へとつなげていく取り組みで、日々の授業を始め、教育活動すべてが、豊かな感性を磨く場になっている。中でもクラブ活動や学校行事は非常に活発に行われており、クラブ活動は中学校は必修、高校では自由参加としているが、高校生の約80%は最後までクラブを続け、かけがえのない友と苦楽や感動を共有している。またほとんどの学校行事は、生徒たちの実行員会によって企画・運営され、その伝統が豊かな教育文化として継承されている。
キャリア教育の充実により生徒の進路は多様化し、理系学部(医歯薬系、理工系)への志望者が大きく増加したほか、文系学部でも法学、経済・経営、商学、国際関係、外国語系といった時代性を反映した学部への関心が高まっている。高1でキャリアプランを作成することにより、生徒たちは明確な夢や目標を持って主体的に進学準備に取り組み、自分の進路実現を着実に果たしている。職員室内にカウンセリングコーナーがあり、熱心な個別指導や活発なコミュニケーションが促進されており、大規模な学校だが、きめ細かく手厚い指導を実現する仕組みが構築されている。