出題校にインタビュー!
駒場東邦中学校
2015年05月掲載
駒場東邦中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.生き物の体の色や習性の意味を考える
インタビュー1/3
身近な生き物を観察し、『なぜ?』を考えよう
堤先生 生き物の色や習性(行動)には、生存競争や子孫を残すなど何らかの意味があります。普通のダンゴムシは灰黒色で暗い場所に隠れていますが、ウイルスに感染すると、体の色は青色に変わり明るい場所に出てくるようになることが知られています。ウイルスにとってダンゴムシを青くすることにどのような利点があるのか考えてもらいたいと思い、この問題を作問しました。
受験生はダンゴムシを見たことはあると思いますが、その体の色や習性を観察したことがあるでしょうか。ダンゴムシに限らず、普段から身近な生き物を観察して、「なぜこんな色をしているのか?」「どうしてこんなところにいるのか?」ということに思いを巡らせているお子さんに入学していただきたいと思っています。
理科(生物)/堤裕史先生
子どもの自由な発想に感心
堤先生 青いダンゴムシの異常行動は現時点では仮説ですから、いろいろな考えがあっていい。これまで学習した生物の知識や自分の経験、そして、与えられた情報から組み立てて、「こういうこともあり得る」とこちらが思えるような、整合性のある解答は許容しました。
例えば、「明るいところ」を「日光のあるところ」ととらえ、「日光に当たることでダンゴムシの体温が高くなり、ウイルスが繁殖しやすくなる」と答えた受験生がいました。おもしろい発想だと思いました。また、「日光が当たる」ことで「乾燥する」ためウイルスが繁殖しやすくなると答えた受験生もいました。インフルエンザウイルスによる冬場のインフルエンザの流行が空気の乾燥が要因となることから、そのように考えたのかもしれません。
答案を見ると、自分の知識や経験を総動員して考えを巡らせたことが伝わってきました。子どもの自由で、柔軟な発想にハッとさせられた答案もあり、採点していて非常に楽しかったです。
正解の条件は『ウイルスの利点』を答えること
堤先生 答案を見ると、「青色になることでダンゴムシが食べられやすくなる」ところで終わっているものが多かったです。「ウイルスにとっての利点」を聞いていますから、これでは解答の条件を満たしていません。何を問われているのか、問題文をきちんと読むことも大切にしてほしいと思います。
この問題はダンゴムシに関する大問の最後の問いですが、その前に、ダンゴムシを補食する生き物について聞いています。その問いが頭に残っていれば、この問題を解くヒントになったのではないでしょうか。目立つ色で明るいところに出てくるようになるということは、捕食者(ムクドリやアカガエルなど)に見つかりやすくなる(食べられやすくなる)のではないか。そうすれば、「ダンゴムシが食べられた後、ダンゴムシに寄生していたウイルスはどうなるか」ということに考えが及んだのではないかと思います。
駒場東邦中学校
幼い頃から科学の本に親しもう
堤先生 ダンゴムシは身近な生き物ですが、わかっていないことがまだたくさんあることを知ってほしいという思いを込めて、入試問題のリード文を作成しました。この作問にあたり、『ぼく、だんごむし』(福音館書店)を参考にしました。このシリーズ(かがくのとも傑作集どきどき・しぜん)は子ども向けですが、科学的に語られています。ダンゴムシがコンクリートをかじって石灰分(カルシウム)を補給していることや、体の半分が白い状態なのは体の半分ずつ脱皮を行うからなど、大問で聞いたダンゴムシの性質について触れています。このような子ども向けの科学の本に、小学校入学前の幼い頃から親しみ、自然現象にどきどき、わくわくする気持ちを持ってほしいと思います。
こうした絵本を読んだら、ぜひ実物を見てみましょう。最近はバーチャルな映像で満足してしまう傾向がありますが、虫取りなど子どもの頃の遊びは大切にしてほしいですね。自然に親しんでいると環境の変化にも気づきやすくなります。よく地球温暖化と言われますが、身の回りで実際にどのようなことが起きているでしょうか。東京でも昔に比べてクマゼミの鳴き声を聞くようになったのは、関東圏の気温の上昇によりクマゼミの北限が北上して生息地が拡大していることが要因として挙げられています。知識だけで頭でっかちにならずに、身近な体験と併せて自然現象を説明できるようになりましょう。
インタビュー1/3