出題校にインタビュー!
駒場東邦中学校
2015年05月掲載
駒場東邦中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.問題を単に「解く」のではなく「解る(わかる)」ようになろう
インタビュー3/3
わかる生徒が教えることでさらに理解が深まる
井上先生 3Dなど自然現象を映像で見られるようになったせいか、生徒の想像力不足を感じます。文章の説明を視覚的にとらえてイメージするには、自分で文章を図に起こすなどの作業を繰り返し訓練するしかありません。中には視覚化が得意な生徒がいるので、その生徒に周りが感化されたり、真似たり、学び合いで習得しています。高校では得意な生徒に「わからない仲間に教えてあげよう」と促しています。そうすることで、教えた生徒はさらに深く理解できるようになります。
できる生徒が質問に来たとき、まず、どこまでわかっていて何がわからないのかを説明させます。そのとき説明の途中で「先生、わかりました」と自分で気づくことが多い。相手に説明するには内容を整理しなければなりません。整理する過程で、見逃していたこと、客観視できていなかったことが明確になります。
堤先生 自分で自分に説明することを習慣にすると、理解の深度が深まり、知識として定着しやすくなりますね。
松岡先生 単なる丸暗記ではうまく説明できません。考えて整理する習慣を身につけることが大事だと思います。
理科(物理)/井上賢先生
法則の文字式を“日本語”で理解する
井上先生 物理というと、法則を覚えて、それに当てはめるというアプローチが根強い。文字式で表された法則を、その文字面を唱えて覚えたとしても使いものにならないでしょう。私は、文字で定式化されている法則については、「日本語でふりがなを振りなさい」と指導しています。
例えば、等加速度運動の速度を表す式v=atを、「ヴィ イコール エー ティー」ではなく、「速度=加速度×時間」というように読んでます。もちろん、現象を客観化・定式化して理解する必要があるのは間違いありませんが、まず現象としてきちんと理解してもらいたい。問題を単に「解く」のではなく、「解る(わかる)」ようになってほしいのです。
基礎固めができているから、ラクができる
井上先生 物理が好きな生徒は、いい意味で“ものぐさ”です。理科の4分野のうち、おそらく覚えることが一番少なくて済むのは物理でしょう。「覚えることは必要最小限で、その場で勝負できる」と思えると、自ずと勉強方法も、闇雲に「(知識を)覚えよう」ではなく、「(知識を)使いこなせるようにわかろう」とします。
端から見ると「ラクをしている」ように見えるかもしれませんが、「これだけは」という基礎を固めて活用できるように自分のものにしているので、問題を解く段階でラクができるのです。
駒場東邦中学校
実験は過程重視。失敗した理由を考えることが大事
井上先生 実験では、「何が起きているか」ということだけでなく、「何が起きるのか」「そのためにどんな手順が必要なのか」ということに注目させるようにしています。生徒には「“料理本方式”で実験は成り立たないよ」と注意します。
料理本は、材料と分量、切り方、調理の手順が時系列で並んでいて、しかも調理のコツが細かく示されています。何も考えなくてもその通りに作れば、それなりにおいしいものができます。“料理本方式”で実験を行うと、うまくできたけれど、「何をしたのか」「何が起きたのか」が残りにくい。料理本はうまく作るため、すなわち成功することが目的ですが、実験は過程に注目し、結果だけでなく「なぜそうなったのか」という考察を重視します。
「実験は成功しなければならない」という生徒の固定概念を壊したいですね。「成功しなければ」という考えが染みついていると、実験結果が理論値から少しでもずれれば「失敗した」と結論づけてしまいます。理論値にぴったり合うことの方がありえないと、なぜ考えないのか。また、よくわからなくなると「失敗した」で済ませてしまう。「できている生徒がいるよ」と言うと、「彼だからできる」と言い訳をする。そこで、「そのとき何をしたのか」と粘り強く聞いて生徒自身に考えさせて、失敗の理由を考えさせます。理論値と実際の結果が違ったとき、理論値に近づけるにはどうすればいいかというところまで考えられるといいですね。
ときにはあえて“料理本方式”で実験を行うこともあります。料理本方式の長所は、一通り手順を踏んでおくことで、次のステップに進んだときに生徒主体で実験できるようになることです。
大学合格がゴールではありません。進学して何を学びたいのか、将来何をやりたいのかということに積極的な人物を育てたい。ですから、中学入学の時点でも目的意識を持っているお子さんに入学していただきたいと思っています。
インタビュー3/3