シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

市川中学校

2015年03月掲載

市川中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.入試問題をきっかけに生物に興味をもったり、学びを深めたりしてほしい。

インタビュー1/3

ニュースをきっかけに考えさせる問題を作成

問題の作成意図から教えてください。

日浦先生 このテーマを選んだのは偶然です。ニュースを見ていて、「日本にもオオカミを導入したらいいのでは」と言っている人がいると知り、食物連鎖の問題につなげようと考えました。本校の入試を受けに来てくれる小学生に、問題を通じて考えてもらいたいという気持ちもありました。

オオカミを導入している国もあるのですね。

日浦先生 カナダでは狼を導入してバランスを保っています。日本は森林が分散しているので、その中で狼の群れを維持していくのは難しいですし、人の生活域と隣接しているということもあり、すぐに実現できるわけではありませんが、一つの対策として頭に置いてもらえればと思って出題しました。

理科/日浦要先生

理科/日浦要先生

知識を運用できる子に入ってきてほしい

日浦先生 私が入試問題を作る時に意識しているのは、知識に頼らずに解ける問題を作ることです。小学校で必ず習う知識は持っていてほしいのですが、本校に入学する生徒は中学校で習うことをだいたい知って入学してきます。ただ知ってはいるけれど身になっていないというか。言葉は知っているけれど、どういう意味だかわからない。知識と知識がつながらないなどの傾向が見られるので、知識を問うのではなくて、その知識を運用できるような子、その知識から新しいことを考えられる子が入ってきてくれたらいいなという思いをもって作問しています。

個体数に言及する視点に感心

採点時に気づいた、意外な解答はありましたか。

日浦先生 驚くような解答はありませんでしたが、オオカミなどを投入する時に「鹿よりも少ない個体数を入れる」あるいは「少数入れる」など、個体数に言及していた解答があり、いい視点だなと思いました。バランスまで考えられていて感心しました。気になったのは、例えば「森の木をすべて切る」など、現実離れしている解答が意外と見られたことです。実際に実施してみたらどうなるかというところまで考えているのかなと思いました。

この問題の出来はいかがでしたか。

日浦先生 思っていたよりもできていました。

市川中学校 校舎

市川中学校 校舎

新しいことをヒントに問題を作りたい

入試問題を作る上で心がけていることはありますか。

日浦先生 いつも入試問題のことを考えているわけではありません。ただ、作る時に困らないように、ネタは日頃から集めるようにしています。この問題もそうですね。

時事的なものがネタになることが多いですか。

日浦先生 そうですね。ニュースや新聞から収集することが多いです。古典的な問題だとおもしろくないですよね。先ほどもお話しましたが、入試問題をきっかけに受験生に学んでもらいたいと思っているので、なるべく新しいことをヒントに問題を作りたいと思っています。

それを授業で使うこともありますか。

日浦先生 そうですね。問題を考えていて「こういう考え方は大事だな」「おもしろいな」と思ったものを授業で発問したり、逆に授業で感じたことを、小学生にも問うてみたいなと思って題材を選んだりすることはあります。

記述問題は定期試験でも出題

記述問題は定期試験でもよく出すのですか。

日浦先生 私は必ず出します。高校生には、横線を引いただけの解答用紙を用意し、「好きに書きなさい」と出題することもありますが、中学生には解答用紙にスペースを作り、その中に2、3行で書かせることが多いですね。エッセンスがいくつもあるような問題だと、ある程度書くスペースを用意しておかなければいけませんが、そのエッセンスを見抜けずに、一部分しか書けていない解答や、文章として成り立っていない解答もよく見られます。

市川中学校 教室

市川中学校 教室

インタビュー1/3

市川中学校
市川中学校1937(昭和12)年、市川中学校として開校。47年、学制改革により新制市川中学校となる。翌年には市川高等学校を設置。2003(平成15)年には中学で女子の募集を開始し、共学校として新たにスタート。同時に新校舎も完成させた。女子の1期生が高校へ進学する06年には高校でも女子の募集を開始。昨年4月には校舎の隣に新グラウンドが完成。2017年には創立80周年を迎えます。
創立以来、本来、人間とはかけがえのないものだという価値観「独自無双の人間観」、一人ひとりの個性を発掘し、それを存分に伸ばす「よく見れば精神」、親・学校以外に自分自身による教育を重視する「第三教育」を3本柱とする教育方針のもとで、真の学力・教養力・人間力・サイエンス力・グローバル力の向上に努めている。
効率よく、密度の濃い独自のカリキュラムで、先取り学習を行っていく。朝の10分間読書や朝7時から開館し、12万蔵書がある第三教育センター(図書館)の利用などの取り組みが連携し、総合して高い学力が身につくよう指導している。中学の総合学習はネイティブ教師の英会話授業。2009年度より、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校となる。授業は6日制で、中1、中2の英語7時間、中3数学7時間など主要科目の時間数を増やす。ほかに夏期講習もあり、中1・中2は英・数・国総合型講習を実施。高校では、高2で理文分けし、高3ではさらに細かく選択科目等でコースに分かれて学ぶ。授業の特徴としては、インプット型の学習で基礎力を育成するともに、SSHの取り組みとして、研究発表、英語プレゼンなどを行う「市川サイエンス」、対話型のセミナーである「市川アカデメイア」、文系選択ゼミの「リベラルアーツゼミ」といった発表重視のアウトプット型の授業展開を実施している。自らの考えを相手に伝える表現力を、論理的に考え、それを伝わりやすい文章で表現するスキルとしてアカデミック・ライティングといい、「読めて、書ける」を目指し「課題を設定する力」、「情報を正確に受け取る力」、「それを解釈・分析する力」、「自分の考えをまとめ・伝える力」を育てる。
高1の各クラスごとに3泊するクラス入寮は創立当時から続く伝統行事。クラブは中高合同で活動する。行事は体育祭、文化祭のほか、自然観察会、合唱祭、ボキャブラリーコンテストなどもある。夏休みには中1、中2で夏期学校も実施。中3でシンガポールへの修学旅行を実施。また、希望者を対象にカナダ海外研修(中3)、イギリス海外研修(ケンブリッジ大学、オックスフォード大学中3・高1)、ニュージーランド海外研修(中3・高1)、アメリカ海外研修(ボストン・ダートマス高1・高2)が実施されている。生徒のふれあいを大切にしているが、カウンセラー制度も設けて生徒を支えている。