出題校にインタビュー!
市川中学校
2015年03月掲載
市川中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.理科が好きな子にとってはどこまでも研究できる環境が整っている!
インタビュー2/3
SSH(スーパーサイエンスハイスクール)も6年目に入りさらなる進化を目指す
SSHは何年目になりますか。
日浦先生 6年目です。1期が5年で、2期目に入ったところですね。
SSHが教科に与えた影響はありますか。
日浦先生 私はSSH初年度に入ったので、その前を知らないのですが、伝え聞く話によると、それまでは実験をあまりやっていなかったようです。座学が中心でしたが、SSHに指定されたのを機に実験から学ぶようになったことが、もっとも大きな変化だったと思います。
高校では2時間に1回は実験。物理は特に多く、3回に2回は実験に取り組みます。中学よりも高校のほうが実験は多いかもしれないです。幸いにしていろいろな器具があるので、なんでも実験を行い、データを取って、その中から法則を見つけ出すというような流れで授業を進めています。
理科/日浦要先生
文系、理系の比率はほぼ半々
日浦先生 SSHをアピールしているので理科が目立ちますが、文系でも哲学書を読ませるなど、いろいろな取り組みをしているので、理科に偏っているという感じはないです。高校生の文系、理系の比率でいえば、最近はやや理系が多いかもしれませんが、ほぼ半々です。
理科の教員としては、取り組みの中で常に足りない部分が見つかるため、少しでも補充するために邁進しているという感じです。SSHも2期目に入りましたので、どんどん新しいことをやっていかなければなりません。その一つとして他教科とのコラボレーション、特に文系科目とのコラボレーションに意欲的に取り組んでいきたいと考えています。
実績はありますか。
日浦先生 昨年、中1で、校章にもなっている「なずな」をテーマに国語とコラボしました。
基礎力の向上が第一
理科で共有している教育目標はありますか。
日浦先生 やはり基礎力の定着ですね。古典的な法則なり化学反応なりがしっかり固まっていないと応用がきかないので、基本的な知識の習得に力を入れています。
もう一つは問題を発見して、それを解決する。そして発信するということです。考えていることをアウトプットしなければ理解してもらえないので、発信には特に力を入れています。授業内にプレゼンをさせたり、実験の後、パワーポイントにまとめて発表させたり、外部発表も数多く行っています。SSH校の発表会もあるので、そこでいい賞を取ってくる子もいます。
理科分野で活躍する在校生や卒業生は多いのでしょうね。
日浦先生 EUヤングサイエンティストコンテストで入賞した卒業生(現:東大準教授)や、サイエンス・インカレで入賞した卒業生もいます。在校生にも外部のコンテストでポスター賞を受賞するなど、入賞している生徒はたくさんいます。
研究は部活動で行うのですか。
日浦先生 部活動で行っている生徒もいますし、高2のSSHに「市川サイエンス」という課題研究の時間があり、それは2時間だけなのですが、意欲のある生徒は毎日のように実験室に来て実験をやり、その結果をまとめています。
男女、どちらが多いのですか。
日浦先生 中1は女子が増えているかもしれませんが、中2以上は3:2で、男子のほうが多いです。
授業ではどちらが積極的ですか。
日浦先生 今の中2は男子のほうがよく発言しますが、中3は女子のほうが積極的です。学年のカラーもあると思います。高校生になると「聴いていますよ」というフリをしますね。高校生を教えた時に、それがつまらないと感じたので、去年、中1に降りたのを機に、生徒と対話をしながら授業をしたいと思いました。やってみると、生徒の表情がいきいきとしている気がして、今のところ成功しているのではないかと思います。
市川中学校
中学時代にものの見方や考え方を広げてあげたい
日浦先生 現在の理科のカリキュラムでは、中学生の内容が中心で、そこに少し高校生の内容を入れています。高校から入学する生徒が入ってくると同じカリキュラムで学習するので、あまり先に進めません。そのような状況で本校の中学で学ぶ意味は何かというと、高校受験がなくのびのびと学習に取り組める環境の中で、考える機会をたくさん設けて、いろいろなものの見方や考え方を経験させてあげることではないかと思います。
中3の3学期は授業をやらずに、コンテストを行います。理科Ⅰでは、ストローを使ってクレーンを作り、どのくらいの重さまで支えられるかを調べたり、紙テープで種子のモデルを作り、吹き抜けの4階から試行錯誤をしながら落として、滞空時間を競ったりしています。
市川中学校
公立中学校よりも実験が多く経験の差は明らか
高校から入学する生徒さんと、違うなと感じるところはありますか。
日浦先生 現在、高校入試に理科の試験がないことも影響していると思いますが、理科に関しては、全般的に内進生(中高一貫生)のほうができます。特に実験に取り組む姿勢や器具の扱い方、実験後のレポートなどは差のつくところです。
外進生(高校から入学する生徒)の多くは、生物の授業で顕微鏡を使ったこともないようです。市川では単眼と双眼実体、どちらの顕微鏡も1クラス分の生徒全員に行き渡る数があります。公立中学校より授業時間数も多いので、その分、実験を行う機会も多く、経験の差が明らかになってしまうのです。
生徒の反応の中から出てくる発言や質問がおもしろい
高入生とは1年生から混ざるのですか。
日浦先生 高1は外進と内進に分かれてクラス編成をしていますが、高2から文理に分かれますので、そこから一緒になります。
授業をどう行うかは、個々の先生に任されているのですか。
日浦先生 教える内容や実験は共通ですが、スタイルはいろいろだと思います。
生徒に問いかけるのが、日浦先生のスタイルなのですね。
日浦先生 一方的に話す授業では、こちらもつまらないのです。リアクションがあったほうが盛り上がるし、リアクションの中から私が考えもしなかったような発言や質問が出てきたりするので、それがすごく刺激になります。そういう発言をする子もいるのだなと。一方的に与えるだけの授業ではもったいないなと思いますね。
対話スタイルの授業は、どんなふうに発展するかわからないので、先生のほうの準備も大変だと思いますが、そこは楽しんで取り組まれているのですね。
日浦先生 自分が知らないことを聞かれたら「ラッキー」と思うくらい、楽しんでいます。わからないことを聞かれることはそれほど多くないですが、もしわからないことを聞かれたら素直に「ごめんなさい」「調べてきます」と言います。
市川中学校
授業で大事にしているのは、実物に触れること、本質に迫ること
知識を教える上で、興味をもたせるために工夫していることはありますか。
日浦先生 やはり実験ですね。今年の入試で滑車の問題を出しましたが、すごく難しくしても解けるのです。ところが生徒に聞くと、動滑車を見たことがないらしいのです。理科Ⅰを担当している別の教員から聞いた話ですが、実物を見せると「滑車ってこういうものなんだ」と楽しそうに遊んでいたらしいのです。「なるほどな」と思いました。図は知っているけれど、実物は見たことないのです。ですから中1はなるべく外へ連れて行き、いろいろな種類の花が咲いていることに気づかせるということをしています。
知識でも、ただ教えるのではなくて、「どうしてこうなっていると思う?」と、必ず理由づけをするよう心がけています。生物では人が後づけしているものも多いのですが、彼らが知っている知識に至った過程や、本質的なところまで、できるだけ掘り下げながら話をするようにしています。
学校で行う体験と塾で学ぶ知識を結びつけることが大切
日浦先生 実験で生徒によく見られる傾向は、理想の値にならないと「すべて自分のミスだ」と思い込むことです。「この時にこういうふうにしたからこうなった」と説明するのですが、それは机上の学習しかしていないからなんですね。実際はスッキリする値にならないので戸惑ってしまうのです。こちらとしてはそこが踏み込みどころで「なぜそういう差が出たのかを考えてみよう」と投げかけます。重さや抵抗など、あらゆることを踏まえて、より深くデータを見ていくよう促すのですが、考えさせることの難しさを実感しています。
市川中学校
知識を組み合わせながら考える力をつけよう
日浦先生 トレーニングもある程度は必要だと思うんですよね。ただ、解き方を暗記して、こういう問題がきたらこう解くということにこだわりすぎると発展がないと思います。基礎の知識を固めたら、その後の発想は自由に、いろいろと知識を組み合わせながら考えられるというのが理想だと思います。
インタビュー2/3