中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

淑徳与野中学校

2015年02月掲載

淑徳与野中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.社会科には生徒の個別体験を整理する役割がある

インタビュー3/3

『新聞ダイアリー』から生徒の問題意識が見える

味沢先生 新聞は、国内外の様々な出来事を知ることができ、その出来事に対する理解を深められます。昨今、社会に与える影響力は弱まっていますが、新聞は近代メディアとして確立されており、限られたスペースで大量の情報を瞬時につかむことができます。

新聞を教材に活用しようと、長期休暇中に高校生に「新聞ダイアリー」を課しています。これは20年くらい続けています。一覧表に日付と国内外のニュースのうち自分が気になる見出しを毎日記録します。さらにその中から生徒なりの「5大ニュース」を選び、感想を書いてもらいます。

新聞ダイアリーを見ると、その生徒の興味関心や視点がよくわかります。選んだニュースから、その生徒の問題意識だけでなく、日頃ご家族でどんな会話をしているのか家庭環境までも見えてきます。

1つのテーマを追い続けることで見えてくるものがあります。新聞でも大きなニュースは継続して追いかけますから、「点」ではなく1カ月間という「線」として見ると発見があります。その点は、どんどん更新されていく性質のインターネットとは違うのではないでしょうか。新聞ダイアリーは、知識の積み上げだけでは身につけにくい現代社会の問題を自分なりに理解する力を養うのに役立っていると思います。

社会科/味沢先生

社会科/味沢先生

論文作成力を養う『研究小論文』

味沢先生 また高校では「研究小論文」の課題もあります。テーマを各自で自由に設定し、約1年かけて調査・研究をし、その成果を原稿用紙10枚以上のレポートにまとめます。中には論文になるのかと思うようなテーマもあるのですが、筋道が通った論述になっています。教員全員で指導に当たりますが、作品を見ると、一貫生はユニークな視点を持っており、書く力があると感じます。

医学部への進学を目指す生徒は、理系科目だけでなく社会科も好きですね。学力の高い生徒はいろいろなことに興味関心が高いのでしょう。彼女たちの研究小論文を見ると、靖国問題についてきちんと議論が整理されているなど、論述力があると感じます。

長年、高校から入学してきた生徒を教えていたので、一貫生の多様さに初めは驚きました。公立中学校からの入学者はある意味“均質的”なのですが、一貫生は性格や立ち居振る舞い、勉強へのアプローチは千差万別です。そうした中高一貫校の個性をうまく伸ばしてあげたいと思います。

中学吹奏楽部の文化祭での発表風景

中学吹奏楽部の文化祭での発表風景

欧米、アジア、オセアニアの7カ国と交流

味沢先生 本校は世界に広く目を向け、国際的な視野で思考、行動できる人材の育成に力を入れています。日常的に英語教育に力を入れると同時に、世界7カ国に姉妹校、提携校を持ち、それぞれ長期・短期の国際交流プログラムを組んでいます。

国際交流プログラムの柱となるのが、1999年から実施している高2のアメリカ西海岸修学旅行で、生徒全員が3泊4日のホームステイを体験します。また、2008年度から「JHP・学校をつくる会」の活動に協力し、カンボジアに学校を建設する事業に取り組んでいます。本校の卒業生がこの団体の事務局に勤めています。2010年には「淑徳与野なでしこスクール」と名付けた校舎が完成し、隔年で生徒代表が現地を訪れるなど支援と交流を続けています。このように国際教育と実際の活動がうまくつながるようにしたいと思います。

「カンボジアなでしこスクール」にて現地の子供達との交流の様子

「カンボジアなでしこスクール」にて現地の子供達との交流の様子

総論と各論の視点を使い分ける

味沢先生 高校の海外の修学旅行のスタートは韓国でした。その当時、修学旅行先が韓国という高校はほとんどありませんでした。ソウルオリンピック前の、軍事政権時代のことです。

日本と韓国の決定的な違いは2つあります。1つは、外見は似ているけれど慣習や価値観が全く異なることです。このギャップの理解は異文化理解にプラスに働くと思いました。

もう1つは、過去の歴史、植民地支配の問題です。当時の日本人は、韓国人が反日教育を受けていることを知りませんでしたから、生徒はさぞ驚いたと思います。異なる価値観に対峙すると、物事をより深く考えるようになります。その後の歴史の学習にも影響したでしょう。生徒は個別にいろいろな体験をしていますが、それを整理するのが社会科という教科ではないかと思います。韓国との交流は現在も続いています。

韓国人と個人的にはわかりあえるけれど、国と国が向き合うと関係性が難しくなることがあります。日本と韓国では歴史認識が決定的に違いますが、だからといってケンカするのかというと、そうはなりませんよね。仲良くなることができる。社会科の学習を通して、向き合い方を使い分けられる思考を身につけてほしいですね。異文化理解の視点は、社会人になったときビジネスにおいても役に立つと思います。日本人が内向き志向になっている最近では、重要な視点ではないかと思います。

高校校舎移転を学校活性化のチャンスに

味沢先生 2015年4月に高校校舎が中学校舎の隣に移転し、通学が格段に便利になります。新校舎のコンセプトは中学校舎同様「エコ&スマート」で、環境にもやさしく省エネ設計のスマートキャンパスとなります。

離れていた中学・高校が隣同士になることで、部活動や行事以外でも接点が多くなるでしょう。高校の教員が中学生を教えるなど改めて中高6年間の教育を見直す機会にもなると思います。移転をチャンスととらえて学校の活性化につなげたいですね。

中学校舎内「メディアステップ」

中学校舎内「メディアステップ」

インタビュー3/3

淑徳与野中学校
淑徳与野中学校1892(明治25)年に輪島聞声により淑徳女学校が開設。1946(昭和21)年に淑徳女学校第8代校長・長谷川良信により与野町に淑徳女子農芸専門学校と淑徳高等女学校与野分校が設立。48年に現校名となり、63年に現在地へ移転。2005(平成17)年に中学校を開校。2015年高校校舎を中学隣接地に移転。
中学校舎は、「自然との共生」をテーマにしており、風力発電やエコガーデンを組み込むなど環境にも配慮。吹き抜けがある玄関、南向きの窓から太陽光がたくさん入る普通教室、メディアセンター、体育館、運動場など最新鋭の設備が整う。
「仏教主義に基づく心の教育」「21世紀を生きていくための国際教育」「生徒の個性を伸ばし、難関大学進学の希望をかなえる進学指導」など、埼玉県トップレベルの女子進学校・淑徳与野高校で培われた指導方針を継承する。校訓は「清純・礼節・敬虔」。「淑徳の時間」の中での宗教の授業、宗教行事などを通じ「常に感謝の気持ちを忘れないで生きていく」という心の教育を実践する。
内進生は原則として高校の「選抜類型」に進学し、外進生とは別クラスで国公立・難関大学現役合格を目指す。高2・高3では文系・理系に分かれ目標大学に応じた指導を展開。中1から夏季・冬季特別指導、進学講座など、塾に通わなくても大学受験に対応できる体制が整っている。また、学習サポートと呼ばれる指名制の面談は各教科で実施。論文作成など「書く」機会を多く設定し、思考力を育てている。英語のテキストは『ニュートレジャー』を使用。授業は週5日制、隔週土曜日は中国語入門などの土曜講座を開講する。
学期制でなく、1年間を5つに分けた「5ステージ通年制」で学校生活を進めるのが特色。「適応・挑戦・確立・変革・未来」と各ステージで目標を定め、学習も行事も集中して取り組む。行事はオリエンテーション合宿、文化祭、芸術鑑賞会、花まつり、み魂まつりなど各ステージに合わせて行われている。韓国、タイ、台湾、イギリス、アメリカ、オーストラリアに姉妹校をもち、中2全員参加の台湾研修旅行、高2アメリカ・オレゴン修学旅行のほか、長期・短期の留学なども用意。中3の修学旅行は京都・奈良で、日本文化への理解も深める。クラブ活動は剣道、バレーボール、サッカー、吹奏楽などが活躍。