シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

淑徳与野中学校

2015年02月掲載

淑徳与野中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.社会の課題に向き合えるものの見方や考え方を養う

インタビュー2/3

関連事項は『1つの物語』として覚える

味沢先生 社会科の学習にあたっては単なる暗記ではなく、ある事柄からそれに関連する事柄を連想できるように、知識をつなげて覚えてほしいと思います。そうすると、全体像をとらえられるようになります。例えば、織田信長→桶狭間の戦い→今川義元というように連想できれば、織田信長の天下統一の第一歩を押さえられたといえるでしょう。

中学受験で出る戦いは限られています。「応仁の乱」と答えるべきところを「桶狭間の戦い」と答えてしまうということは、関連事項をそれぞれバラバラに覚えてしまっているということです。出来事は「1つの物語」として理解するようにしましょう。歴史マンガなどを読んで歴史の流れを押さえるのも1つの方法です。

社会科/味沢先生

社会科/味沢先生

歴史、地理、公民の融合問題を出題

味沢先生 本校の社会科は大問3つの構成で、歴史、地理、公民を中心とした融合問題です。分野を融合させることで社会科らしい問題にしたいと考えています。この問題を含む大問は地理を主体としていますが、そこにグローバリゼーションという現代性を盛り込みました。融合問題の形式は、2005年の中学設立当初から採用しています。

これまで受験時間は理科と社会科が各30分でしたが、2012年度入試から理科と合わせて50分になりましたね。

味沢先生 はい。ですから解答時間はおよそ25分になりました。問題の傾向は変わっていませんが、論述問題を3題から2題に減らしました。ただし配点は1題4点となり、論述の比重が高くなりました。

またリード文が長くなりすぎないように、1ページ程度に押さえるようにしています。受験生には、文中下線部の前後だけでなく、リード文をしっかり読んでほしいと思って作成しています。

仏教行事「花まつり」

仏教行事「花まつり」

リード文は教科書の内容と現実社会とのつながりを意識

味沢先生 地理分野では福島県を取り上げました。私自身が福島県を訪れて、「これは日本の現実だ」ということを再認識したからです。東日本大震災から約3年、原発問題など様々な問題が未解決の段階で、福島県について出題するかどうかは相当議論しました。入試後、小学生新聞に取り上げられましたが、福島の問題はきちんと向き合わなければいけない問題だということを、小学生なりにとらえてほしいと思い、リード文を作成しました。

貴校のリード文を読まないのはもったいないですね。貴校のリード文、特に冒頭部分は、教科書の内容と現実社会のつながりや新たな視点を与えるものになっていて、作問する立場としても参考になります。

「なでしこ発表会」における自然科学部の公開実験

「なでしこ発表会」における自然科学部の公開実験

時代を自由に行き来する“ワープ”の思考を持とう

味沢先生 社会科では、生徒たちが将来直面すると思われる社会の課題にきちんと向き合うためのものの見方や考え方を身につけてもらいたいと思います。

現代の問題を他の問題と比較することで解決の糸口が見えてくることがあります。他の国や地域ではどうなのか、世代間ではどうなのかなど、多様な軸で見られるかどうか。その力を養えるのは社会科ならではだと思います。歴史を時間軸で見ると何が変わっているかつかむことができます。そうすることで、現代社会に置き換えて考えることができるようになると思います。

私は高校で日本史を教えていますが、歴史は深く考えるほど、自由に“ワープ”して考えるようになります。例えば、天保の改革など江戸時代の行政改革を習ったとき、現代の平成の改革はどうか、江戸時代より前ではどうだったか、自由に思考することができます。

最近の生徒を見るとあまりワープしなくなっています。思考が今習っている範囲で留まって、他の時代のことは「関係ない」と思うようです。柔軟な発想ができるようになると、社会科がもっとおもしろくなると思います。

インタビュー2/3

淑徳与野中学校
淑徳与野中学校1892(明治25)年に輪島聞声により淑徳女学校が開設。1946(昭和21)年に淑徳女学校第8代校長・長谷川良信により与野町に淑徳女子農芸専門学校と淑徳高等女学校与野分校が設立。48年に現校名となり、2005(平成17)年に中学校を開校。2015年高校校舎を中学隣接地に移転。
中学校舎は、「自然との共生」をテーマにしており、風力発電やエコガーデンを組み込むなど環境にも配慮。吹き抜けがある玄関、南向きの窓から太陽光がたくさん入る普通教室、和室や特別教室、体育館、運動場など最新鋭の設備が整う。
「仏教主義に基づく心の教育」「21世紀を生きていくための国際教育」「生徒の個性を伸ばし、難関大学進学の希望をかなえる進学指導」など、埼玉県トップレベルの女子進学校・淑徳与野高校で培われた指導方針を継承する。校訓は「清純・礼節・敬虔」。「淑徳の時間」の中での宗教の授業、宗教行事などを通じ「常に感謝の気持ちを忘れないで生きていく」という心の教育を実践する。
内進生は原則として外進生とは別クラスで国公立・難関大学現役合格を目指す。高2・高3では文系・理系に分かれ目標大学に応じた指導を展開。中1から夏季・冬季特別指導、進学講座など、塾に通わなくても大学受験に対応できる体制が整っている。また、学習サポートと呼ばれる指名制の面談は各教科で実施。論文作成など「書く」機会を多く設定し、思考力を育てている。英語のテキストは『ニュートレジャー』を使用。授業は週5日制、隔週土曜日は中国語入門などの土曜講座を開講する。
学期制でなく、1年間を5つに分けた「5ステージ通年制」で学校生活を進めるのが特色。「適応・挑戦・確立・変革・未来」と各ステージで目標を定め、学習も行事も集中して取り組む。行事はオリエンテーション合宿、文化祭、芸術鑑賞会、花まつり、み魂まつりなど各ステージに合わせて行われている。韓国、タイ、台湾、イギリス、アメリカ、オーストラリアに姉妹校・提携校をもち、中2全員参加の台湾海外研修、高2アメリカ・オレゴン修学旅行のほか、長期・短期の留学なども用意。中3の修学旅行は京都・奈良で、日本文化への理解も深める。クラブ活動は剣道、バトン、サッカー、吹奏楽などが活躍。