シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

海城中学校

2014年12月掲載

海城中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.持っている知識を体験と結びつけるために中学時代は実習、実験づくし。

インタビュー2/3

中学時代は実習や実験を重視

入学後の理科の学びについて教えてください。

岩井先生 理科という教科ではひとくくりに出来ないというか…。物理、化学、生物、地学それぞれで扱う対象も違いますし、考える時のスタンス、切り口も違います。たしかに自然科学を相手にしているという意味では理科ですが、理科としてこういうことをやっていきましょうという道筋は立てにくいと思います。ただ、子供達は入試の段階で、中学で学ぶ知識の多くを持って入ってくるので、中学時代は出来るだけ実習や実験を行い、知識と体験の結びつきを深めさせたいと考えています。

西森先生 化学では中1から実験づくしです。中2の生物も実験づくしで、ブタの肺を使った実験などもしています。

岩井先生 日曜日や長期休暇中に希望者を募り、日帰り出来る野外に連れて行き、実物を見せるような機会もつくっています。

例えばどんな体験ですか。

岩井先生 生物では磯の観察を行ったり、地学では、露頭という地層が見えているところに連れて行ったりしています。

西森先生 化石を採って来たら実験室で洗って、レプリカを作るということもしていますね。

岩井先生 そういうことが彼らの興味・関心を呼び起こすことにつながればいいと思います。

海城中学校

海城中学校

授業での積極性は高くなっている

西森先生 生徒の反応はよくなりましたよね。発言も増えています。

岩井先生 たしかに一昔前と比べれば、授業での積極性は高くなっていると思います。ただ、だからと言って勉強に熱心に取り組んでいるかと言うと、そうとは言い切れないような気がします。興味、関心をモチベーションにして勉強している生徒は、中1から高3までひたすらこつこつやっていますが、その一方で授業は楽しそうに聞いていながら、定期考査に全然反映されない生徒も少なからずいますので、海城の生徒がみんな熱心に勉強しているかと言うと、そうでもないかなと思います。

レポートなどを書く機会は多い

実習などに行ったらレポートも書くのですか。

岩井先生 感想文を書かせることもあります。

表現する力は差がありますか。

岩井先生 いろいろだと思います。きちんと書けている子もいますし、そうではない子もいますので。必ずしも出来る子ばかりが集まって授業をしているわけではないと思います。

表現力を上げる上で、先生方が工夫されているところはありますか。

岩井先生 どの分野も表現することを課しているのは間違いないと思います。中でも生物はよく書かせます。定期考査などはすごい解答用紙で、よくそれを教員は採点するなと思います。

西森先生 社会科でも書かせますので、生徒たちはかなり鍛えられていると思います。

海城中学校

海城中学校

物理嫌いを作らないよう工夫を心がけている

先生方の間で、物化生地が重なることはないのですか。

岩井先生 絶対ではありませんが、可能な限り、専科制をとっています。

ご自身の授業で大切にしていることがあれば教えてください。

岩井先生 私は物理が専門です。物理はどうしても苦手意識を持つ生徒が多くなるので、中高ともにハードルを下げる工夫を欠かさないようにしています。具体的には可能な限り実物を持っていき、見せて楽しませるであったり、身の回りで関連する話題を探して紹介するであったり。難しい内容を教える時は、出来るだけかみ砕いて、直感的に、感覚的にとらえさせるということも、意識的にやろうとしています。クラス全員がこちらの意図していることを受け取ってくれるかというとそうではないですし、私独自のスタイルといっていいかどうかはわからないですが、出来る限り物理嫌いを作らないようにしたい。点数には結びつかないけれど「あの授業はおもしろいね」と言ってもらえるようにはしたいなと思っています。

西森先生 私は生物を担当しています。中学生の授業を受け持つ時は、出来るだけ実物を見せたり、実験をしたりして興味・関心を引こうと努力していますが、ここ最近は高校生を担当することが多く授業時間が少ないので、どうしても座学が多くなってしまいます。知識の詰め込みだけにならないように、背景などを話しながら興味・関心を引くようにしています。高3では遺伝子の内容が主体なので、思い切って自分たちのDNAを扱う実験をしたら、彼らも楽しそうにやっていました。

情報収集は、どんなところからするのですか。

西森先生 新聞記事が多いです。気になるものは切り取って保存して、たまに読み返しています

海城中学校

海城中学校

インタビュー2/3

海城中学校
海城中学校もともとは海軍予備校だった海城中学校。創立されたのは1891(明治24)年と、一世紀以上の歴史がある伝統校です。建学の精神は、「国家・社会に有為な人材を育成する」こと。そのために、「フェアーな精神」「思いやりの心」「民主主義を守る意思」「明確に意思を伝える能力」を身につけた、高い知性と豊かな情操を持つ人物を「新しい紳士」と名付け、その育成を目指している。
生徒の学習意欲をかきたて、個性豊かに育てるためには、ふさわしい学習環境が必要と考え、2021年夏に完成したScience Center(新理科館)、ユニークな体育館(アリーナ)、カフェテリア(食堂)など、一人ひとりが、より良く、より深く学べるよう必要な施設や教育環境が整備されている。個々の生徒の進路選択のために、豊富な情報、資料のそろった進路指導室が準備され、担当の先生による面談が随時行われ、学習や進学の悩みや迷いなどには、専門のカウンセラーも適切な助言を与える。
習熟度別授業は行っていない。個人のブースにこもって勉強するのではなく、級友と切磋琢磨し、集団として成長してほしいと考える。6年間を通じて学習の中心にあるのは、それぞれの時期に応じた内容の濃い授業だ。授業は、大学入試そのものを目標として行うのではないが、結果として大学受験に十分対応できるものとなっている。教員もよりよい授業を追求すべく、相互の情報交換や外部の研究会への参加などを通じて研鑽を続ける。
入学後生徒たちは先ずはPAやDEといった体験学習を通して「新しい人間力」(コミュニケーション能力・コラボレーション能力)のイロハを学ぶ。文化祭などの学校行事やクラブ活動などは、そこで習得した基礎力を、実践活動を通して向上・発展させる場・機会として位置付けられる。と同時に、そうした場で力を出し切る経験を積み重ねることで生徒たちは自分に対する信頼(自己信頼)や「(多少の困難があっても)自分は出来る」といった感覚(自己効力・自信)を高める。ここぞという時にうろたえ・浮足立つことのない「新しい紳士」のエートス(行為態度)はこうした営みの中で培われる。
中学3年生を対象に、中学卒業時の3月下旬にアメリカ研修が実施される。バーモント州のセントジョンズベリーアカデミーという学校に通学する子女の家に1週間ほどホームステイをしながら同校に通学する。ボストン見学やマサチューセッツ工科大学も訪問します。高1・2年生では、7月下旬から8月かけてイギリス研修が実施される。モーバンという町に滞在し、ホームステイしながら英語の勉強をする。現地の先生やホームステイ先の家族をお招きし、スピーチの発表会を開く。また、国内での語学研修としてイングリッシュキャンプを校内で夏休みの3日間実施し、すべてネイティブの先生による授業が実施されている。