中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

海城中学校

2014年12月掲載

海城中学校【理科】

2014年 海城中学校入試問題より

17世紀のはじめまで、血液が体内を循環(じゅんかん)しているという考えはなく、血液は腸から吸収した栄養分をもとに肝臓(かんぞう)でつくられ、静脈を通して全身に配られて消費されるという考え方でした。一方、イギリスの解剖(かいぼう)学者ハーヴェイは、ヒトの体内を流れる大量の血液が肝臓だけでつくられているはずはなく、さらに血液は体内を循環しているのではないだろうかと考えていました。そして多くの動物解剖から得た知見や、腕(うで)の各所を布でしばっては解くといった実験などから、1628年に「血液循環説」を発表しました。

ハーヴェイが行った実験の1つに、次のようなものがあります。

[i]ヒトの上腕部を布できつくしばった場合
しばったところから心臓側の動脈はふくれるが、反対側の動脈はふくれなかった。

[ii]ヒトの上腕部を布でゆるくしばった場合
しばったところの心臓側の静脈はふくれないが、反対側の静脈はふくれた。

ハーヴェイは、[ii]の反対側の静脈をふくらませた血液は動脈から送られてきたものに違いないと考え、血液循環という考えが確信に変わったといわれています。

(問)ヒトの上腕部のしばり方で血管の観察結果が異なる理由を簡潔に答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この海城中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、出題意図についてのインタビューを見てみましょう。

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

動脈は腕の深いところを通り、静脈は表面近くを通っているから。

解説

血管がふくれるという観察結果から、流れてきた血液が布でしばったところを境目として止まっていることが推測できます。このことを[i]、[ii]の実験にあてはめてそれぞれの観察結果を考察します。

[i]で上腕部をきつくしばった場合、しばったところから心臓側の動脈はふくれるが、反対側の動脈はふくれなかったので、動脈を流れている血液は、心臓から指先へ向かって流れていると推測できます。また、[ii]で上腕部をゆるくしばった場合、しばったところから心臓側の静脈はふくれないが、反対側の静脈はふくれたので、静脈を流れている血液は、指先から心臓へ向かって流れていると推測できます。

上腕部のしばり方によって、観察結果にこのようなちがいが生じたのは、ヒトの体内では動脈は深いところを通り、静脈は表面に近く浅いところを通っているからだと考えられます。

日能研がこの問題を選んだ理由

血液が肝臓で作られ、全身で消費されている、とした当時の考えに対して、イギリスの解剖学者ハーヴェイが抱いていた本当はちがうのではないだろうか、という疑問。また、血液は体内を循環しているのではないだろうか、という新たな仮説。これらを確かめるためにハーヴェイが行った実験と観察結果が問題文で示され、疑問→仮説→実験→考察という流れをつかむことができます。

この問題では、問題文で示されているハーヴェイの行った実験の方法と、「動脈は体内の深いところを通り、静脈は浅いところを通っている」という知識を結び付けて、なぜこのような観察結果のちがいが得られたのかを筋道立ててとらえていきます。

この問題を通して、未知の素材に対して、子どもたちが情報を読み取り、読み取った情報と関係する既知の知識を結び付けて考察していくことに目を向けることにつながると考え、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。