中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

海城中学校

2014年12月掲載

海城中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.初見の問題でもやることは同じ。問題文をしっかり読み、そこから可能な限り情報を引き出して考えよう。

インタビュー1/3

生物学の歴史から思考を深めてほしかった

この問題の出題意図から教えてください。

西森先生 生物を学ぶ上でもっとも大事なことは、学問としての歴史を学ぶことではないかと思っています。そこで、受験生にも歴史に触れてもらおうと思いました。おそらく今の子ども達は、血液は循環しているなどの「結果」しか知らないと思います。結果を得られるまでの過程を考えることが、思考力を養うことにつながるのではないかと考えて、こうした問題が出来上がりました。

先人の知恵に目を向けるのはおもしろいですよね。

西森先生 生物の担当が何人かいるので、年度初めに集まり、題材を共有して、かぶらないようにしています。その後、分担して作問するのですが、出題出来るレベルまでもっていくには毎年紆余曲折があります。この問題も最初は違う題材でした。おおまかなストーリーが出来、作問をしていくと、どの問題も必要で捨てられなくなります。するとテーマがぼやけてしまうというジレンマに陥りました。生物グループの中で意見交換するうちに方向性がまとまり、落ち着いたのですが…。理科全体の会議に持ち込むと、「受験生が問題に接した時に気持ち悪がるのではないか」という指摘をもらい、血管を縛ったり切ったりするというくだりについては、出来るだけ表現をぼやかすことにしました。

海城中学校

海城中学校

物理・化学・生物・地学、それぞれに作問し検討する

入試問題を作る時は、配点を4分割してそれぞれに作るのですか。

岩井先生 そうですね。今も話に出ましたが、そこで他の分野の先生から受ける指摘が重要です。この問題も、生物以外の教員は「えっ、どうなの!?」という反応でした。そういう感覚はお互いさまで、担当分野ではごく普通のことであっても、理科は専科性が強いので別の分野からすると別世界のこのように感じることもあるのです。ですからお互いに作った問題を見せて、感じたことを出し合っていく、その行程を大切にしています。

正答率は13%

出来はいかがでしたか。

西森先生 正答率は13%でした。

出来なかった受験生も、なにかしら書いていましたか。

西森先生 書いてはいましたが、的外れの答えが多かったですね。

例えばどんな誤答がありましたか。

西森先生 実験の結果をそのまま書くなど、考えていない解答が多かったです。また「血管の場所が違う」と言える子はいるのですが、動脈、静脈の位置関係がわからないという、惜しい解答も目立ちました。

血の巡り方など、流れのことまで突っ込んで書いている受験生はいましたか。

西森先生 流れの向きを書いている子はいました。

多くの受験生にとって、初見の問題ではなかったかと思います。

西森先生 そうですよね。試験中に上腕を押してみて、浮き上がる血管が静脈だとひらめく受験生もいるのではないかと思ったのですが…。試験監督に入ることが出来なかったので、確認は出来ませんでした。

そういう子がいたら、体験から考えることが出来る、ある意味頼もしい子ではありませんか。

西森先生 そうですね。

海城中学校

海城中学校

意外とわからなかったんだなという印象を受けた

西森先生 大人は健康診断などで採血される時に、上腕をしばられる経験をしているのでピンときますよね。子ども達にはそういう経験があまりないので、この程度だったのかなと、後になって思いました。

もう少し出来ると思っていましたか。

西森先生 私はそう思っていました。意外とわからなかったんだなという印象です。ただ、最後の問題の正答率としては上出来で、周りの先生には「(13%の正答率は)よかったんじゃないか」と言われました。

13%で上出来と言うと、最後の問題は毎年合否を分けるような問題になりうる可能性がありますね。

岩井先生 それはどうでしょうか。物化生地、4つの分野からまんべんなく、いろいろな設問を出していますので、この問題の出来が合否に直接かかわるかというと一概には言えないと思います。

4分野まんべんなく解ける子が減っている

ここ数年の解答を見ていて感じ取れる変化はありますか。

岩井先生 昔は4分野まんべんなく解ける子が多かったのですが、最近は、例えば生物、化学では点数が取れても、物理ではまったく点数が取れない、というような子が目立ってきました。記述問題にしても、正解している子は物理・化学・地学でも手堅く点数を取っていたので、「この問題が出来る=合格に手が届いていた」という発想でもよかったのかもしれませんが、最近は「生物がここまで出来ているのに、なぜ物理はこの程度しか出来ないの?」などと感じることが多く、必ずしも一つの分野でいい点を取ったからと言って、合格に手が届いているかというと、そうとも言えないという印象です。

入学後の生徒さんからもそういう印象を受けますか。

岩井先生 そもそもある分野に苦手意識を感じている生徒はいるかもしれませんが、それが目立っているかと言うと、そうではないと思います。入学後に別の刺激を受ければ興味・関心を抱く可能性もあるので、入試で感じた印象がずっと尾を引くと言うことはないと思います。

海城中学校

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考える問題、記述の問題のバランスを工夫

受験生が変わってきているから、入試問題も変えていこうという動きはありますか。

岩井先生 基本的なスタンスは変わっていないですね。機械的に暗記をし、それをはき出して点数を取れるような問題ばかりにはしていません。一方で、考える問題ばかりだとアップアップになってしまいますので、考える問題、記述問題の分量をどの程度にするかという、バランスを考えながら作ることは増えたかと思います。

ただ、初見的な要素があったとしても、問題文をしっかり読んで、そこから可能な限り情報を得て、考えて、答えを書くということをやれれば解けるように作ってはいるつもりです。とびきり難しくしているわけではありませんし、理系的センスを持っている子だけを取ろうとしているわけでもありません。

インタビュー1/3

海城中学校
海城中学校もともとは海軍予備校だった海城中学校。創立されたのは1891(明治24)年と、一世紀以上の歴史がある伝統校です。建学の精神は、「国家・社会に有為な人材を育成する」こと。そのために、「フェア-な精神」「思いやりの心」「民主主義を守る意思」「明確に意思を伝える能力」を身につけた、高い知性と豊かな情操を持つ人物を「新しい紳士」と名付け、その育成を目指しています。
生徒の学習意欲をかきたて、個性豊かに育てるためには、ふさわしい学習環境が必要と考え、全館の空調設備をはじめ各種の特別教室、ユニークな体育館(アリーナ)、カフェテリア(食堂)など、一人ひとりが、より良く、より深く学べるよう必要な施設や教育環境が整備されています。
個々の生徒の進路選択のために、豊富な情報、資料のそろった進路指導室が準備され、担当の先生による面談が随時行われ、学習や進学の悩みや迷いなどには、専門のカウンセラーも適切な助言を与えています。大学進学の状況は、それ自体を目的としたものではなく、生徒の希望と適性を伸ばす努力の結果なのです。