シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

東洋英和女学院中学部

2014年10月掲載

東洋英和女学院中学部の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.定義をしっかり理解しながら数学を学んでほしい。

インタビュー2/3

定義の構築が数学の始まり

小学部からも生徒さんが入ってきますが、中学数学はどんなことから入るのですか。

井上先生 正の数、負の数から始めます。小学校の算数では「整数は0から始まる数」でしたが、負の数が増えることにより、定義が変わるので、算数でやってきたことを基本に、数学としての理屈を構築してもらいます。

しっかり言葉も覚えてもらいますし、偶数、奇数の話も中2の文字式のところでやりますが、「偶数+偶数は?」「奇数+奇数は?」という、小学校の算数で学んだところから文字式に発展させています。

素数の話もそこでします。生徒は「素数は2以上の自然数」だと思っていますが、2だけが偶数で、それ以外の素数は奇数です。2を除くと3が一番小さな数になり、その他の素数は「3で割ると1余るか2余る数」といえます。そういうことも含めて「素数は1と自分自身以外の数では割り切れない数」、「約数を持たない数」という話もした上でいろいろなことを考えていこうとしています。

本校の生徒が弱いのは「円周率とは何ですか」と聞かれたときに、ハッキリ答えられないところなんですね。なぜ0はいろいろな数で割れるのに0では割れないのか。そういうことをきちんとわかった上で進んできていないので、理屈をもう一度確認しながら数学を学んでほしいと思っています。

数学科/井上先生

数学科/井上先生

算数は、中学校で学ぶ数学を意識して学ぼう

井上先生 文字をいやがらないようにすることも心がけていることの一つです。どうしても、入試のための勉強をしていると、文字よりも線分図や面積図に執着しようとします。連立方程式までは解けても、文字を使うことをいやがってしまっては数学になりません。その考え方は否定しませんが、上のステージを見てほしいですね。

余りの話も、「余りがない」というのは本来、「余りは0」ということです。そういう話をしないと、生徒は3で割った時の余りは「1」と「2」と「ない」と言ったりするのです。「0」と「1」と「2」という余りの関係は算数でもできる話ですが、それができていないことが多いように感じています。

定義の構築に対する生徒さんの反応はいかがですか。

井上先生 今、中2を担当していて、整数をやっていますが、数の話を楽しいと感じて聞いている子はいますね。聞いたことを式で表すことができるようになっている子は、「なぜ、偶数+偶数=偶数なのか」を説明できます。大学の入試問題も「中2の知識で解ける」など、数の話をしたときのほうが、関数などよりも乗ってくる子は多いと思います。

解けなかった問題は、再び解くことが大事

生徒さんがわからない問題にぶつかったときに、どうアドバイスしますか。

塩田先生 高校生では1問に膨大な時間はかけられないので、思考する時間を決めます。時間内に答えを導き出せなければ解答を見ることになりますが、そこでわかったつもりになると力はつきません。数日間、期間を置いて、再びその問題と向き合い、新しい考えを取り込むことが大切です。発想を確認するということですね。自分が弱いところ、気づけなかったところを蓄積していくことが大切だと思います。

生徒さんがわかったかどうかは、どこで判断していますか。

塩田先生 自分の頭の中にあること、つまり覚えていることだけで解いている時と、わかって解いているときとでは、解く速度や感じが違うような気がします。

井上先生 私は高校生を教える機会が多いので、知識を整理し、順序立てて解くことを意識させています。知識がなければ解くことはできませんが、ただ覚えているだけでは役に立ちません。知識の量により、順序も変わるので、授業でそういうことを意識させながら解かせて、蓄えた知識をどれだけ整理した上で問題を解いているかを見るようにしています。模範解答やこちらの考えている解答に即して「これでいけるのか」「これでいけるのか」というタスクが出てくれば、きちんと理解できていることがわかります。

東洋英和女学院中学部

東洋英和女学院中学部

インタビュー2/3

東洋英和女学院中学部
東洋英和女学院中学部1884(明治17)年にカナダ・メソジスト派の宣教師カートメル女史によって設立された。第二次大戦中には校名を東洋永和女学校と改称したが、宗教を棄てろという圧力には断固抵抗した。その後校名を復し、1989(平成1)年に大学、93年に大学院が開学。96年に高校募集を再開したが、2003年には再停止。
「敬神・奉仕(神への敬い・隣人への愛)」を基本精神として、キリスト教の精神に基づいた豊かな人間形成を目指し、一人ひとりを大切にした教育を行う。130年前の創立以来、自由な学風とのびのびとした雰囲気を今なお継承しているが、その長い歴史に最新鋭の設備を誇るハイテク校舎が加わり、英和生一人ひとりの成長とともに、21世紀にふさわしい校風がさらに刻まれている。
六本木に隣接しながらも、学校周辺は閑静な一帯。校舎は、創立当時のスパニッシュ・ミッション・スタイルの面影を残している。チャペル、記念講堂、コンピュータ教室2室、メディア教室、体育館、図書室など充実。校外施設として軽井沢追分寮、野尻キャンプサイトがある。学院全体が使う「総合校舎」が誕生、大学の教授が中高生の教育に参加する計画も。
中学では偏りのない学習プログラムで基礎学力の習得に力を入れ、高校では個性に合った進路選択ができるような指導が特色。英語の指導には定評があり、中学では1クラスを2分割、中3から習熟度別授業を行っている。もちろんネイティブによる英会話の授業もあり、「使える英語」を養成。数学は中2・中3で1クラスを2分割、高1・高2は3段階の習熟度別。高2からは多様な科目選択制を導入し、生徒のニーズに応えている。音楽・宗教教育にも力を入れる。他大学合格実績の躍進。高い現役進学率を誇り、東大、早慶上智大など難関大学への合格者も多い。進学先が社会科学系、理工系、医学系、芸術系など幅広いのも特徴。
東洋英和の朝は20分間の礼拝から始まる。クラブ活動は全員参加で、文化系22、体育系8が中高合同で活動。卓球、バスケットボール部が強い。中1では全員が車椅子、点字など、奉仕活動のための基本を学習(ギリシャ語で隣人に仕えるという意味のディアコニア学習活動)する。一方、有志によるYWCA活動は、手話・点字を習ったり、年に数回、養護施設や老人ホームを訪問し、子供たちやお年寄りとの交流をもつ。ピアノ科、オルガン科、器楽科、英会話、日本舞踊、華道などの課外教室も行われている。球技会、文化祭、野尻キャンプ、クリスマス礼拝、夏休みのカナダ語学研修旅行(中3・高1・高2)など行事も多種多彩。