出題校にインタビュー!
東洋英和女学院中学部
2014年10月掲載
東洋英和女学院中学部の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.わからない問題は、まず手を動かし、調べて、手がかりを探し出すことが大切。
インタビュー1/3
興味をもって解いてほしい問題
まずはこの問題の出題意図から教えてください。
塩田先生 端的にいうと、読解力と思考力を問うという意図で出題しました。約数は一般的に偶数が多いですが、奇数になるのはどういうときなのか。そこに立ち止まって考え「何かの数の二乗だったら奇数になるんだ」という発想をもって取り組むことを期待していました。ただ、奇数でも3回や7回ではあてはまりませんから「全部の奇数というわけではなさそうだ」ということに気づき、試行錯誤をしながら答えにたどりついてほしいと思っていました。
この問題は、どのように思いついたのですか。
塩田先生 夏休みあたりから、始終何かないかなと題材を探し、電車に乗っている間もいろいろと考えていた、まさにその中で突然ひらめきました。
ディズニーでナイフやフォークを擬人化したものが動くように、80個の直方体がくるくる回ったら楽しいですよね。ただ直方体を回すだけでは意味がないので、数の特徴と結びけることはできないかと考えました。
頭の中で先に擬人化があったのですか。
塩田先生 そうですね。たくさん立っている直方体が回っていったら楽しいなと思いました。最後の問題なので「興味をもって解いてほしい」「考える楽しさを味わってほしい」という思いもありましたから、全員とはいかないまでも、楽しんでもらえる問題にしようと思いました。

数学科/塩田先生
ごく少数の受験生が完全解答した
結果はいかがでしたか。
塩田先生 何もかいていない受験生もいましたが、完全解答の受験生もいました。10%にも満たない、ごく少数ですが…。その子たちは解答用紙に絵をたくさんかいていました。直方体がたくさんかいてあったり、☆○△がかいてあったり、倍数もいろいろ試していました。試行錯誤して奇数は二乗でなければとだめだということに気づいたのだと思います。試行錯誤してほしいという狙い通りのことをしてくれていたのでうれしかったですね。
完全解答は1割に満たないとおっしゃっていましたが、何らかの点数を得られた受験生はどのくらいいましたか。
塩田先生 1番は5割くらい、2割が4割で、3番が15%くらいでした。小学部の生徒の中にも、答えが1つ抜けてはいたものの、できた生徒がいました。その子も知識があったわけではなく、何だろうと考えていき、何かの二乗だろうということで、二乗の数を書いていました。
そのアイデアはすごいですね。
塩田先生 試している子が正解です。その場で解けなかったとしても、家に帰ってから「この問題は何だったのだろう」と、より深く考えてくれていたらうれしいですね。
解答用紙のスペースは考え方をくみ取りたいから
毎年、書くスペースを設けていますね。
塩田先生 完答できない受験生はたくさんいますから、考え方をある程度くんで点数をあげたいという思いでそのようにしています。
そうすると、1、16、36とあるうちの、どこまで書けていたら何点というのは決まっているのですか。
塩田先生 それは決まっていました。
昨年は1文程度の文章で答えさせる問題がありましたよね。
塩田先生 時折そういう問題も出題するのですが、採点が大変なので、なかなか出せません。文章はまだしも、式で答えさせると1つに絞れないことが多いので大変です。
採点は複数の先生で二重、三重に行うのですか。
塩田先生 そうです。間違っては困りますから。

東洋英和女学院中学部/先生
図やグラフも検討を重ねて作成する
この図は最初から入れる予定でしたか。
塩田先生 もともと入れようと思っていました。ないとわかりにくいですから。
井上先生 私が図の制作を担当しています。たたき台をもとにみんなで話し合って完成させています。
平面図形、立体、グラフは毎年必ず出題していますが、それも全部ですか。
井上先生 はい。
今年はカエル、去年はペンギン…。それも先生がかかれているのですか。
井上先生 そうです。wordで作っているので、マス目にカエルを描くよりも立体図形のほうが難しいです。
入試問題の作成は分担制ですか。
塩田先生 数学科の教師全員(9名)で作っています。
井上先生 私も作ります。
塩田先生 もちろん得意、不得意はありますが、全員でさまざまな問題を持ち寄り、選んで深めるというスタイルです。
まんべんなく力を問うのは中学校の学習でつまずかないでほしいから
毎年、速さや平面の問題を必ず出題されていますが、出題範囲のバランスには気を使われていますか。
塩田先生 ほぼ全般から出題するようにしています。中学生の勉強に入ってつまずくことがないように、速さ、単位、平均など、小学校時代にここだけは把握しておいてもらわないと困るという分野は、2番をはじめ、どこかの問題で必ず聞くようにしています。
1番の計算問題は順算ばかりですか。
塩田先生 はい。ここでは計算力と約束事が身についているかを見るために、順算を出すことが多いですね。( )や{ }などがついていても、順序を間違わずに計算できるかを確認しています。逆算の力を見たい時は、2番に入れています。

東洋英和女学院中学部
発想力を鍛えよう
平面図形の問題は、おもしろいけれど手間がかかる問題ですよね。
塩田先生 そうですね。一つひとつを計算したら大変ですが、うまく埋め込むと、正方形がかなりできるように考えていますので、発想力のある子は最低限の計算で解けます。そこを見たいと思って出題しています。
立体図形も毎年出ていると思いますが、立体を把握する能力をつけるのは難しいと思います。
塩田先生 立体の切断は、女子にとってもっとも高いハードルですが、避けていてはこれから先が大変なので、立体にトライする程度の問題を出題しています。誰でもわかる問題ではつまらないので、複雑そうに見えて、実は組み合わせると直方体や円柱になるというような出題に限定しています。
なぜ、女子は立体把握が苦手だと思いますか。
塩田先生 頭の中で思い描くことが難しいのだと思います。ですから、教えるときは平行線を取らせるなど、技術でカバーしています。
入試問題は1回目、2回目を同じように作ることを心がけている
2回入試がありますが、その上で気をつけていることはありますか。
塩田先生 できるだけ変わらないように作ることです。もし1日目に失敗しても、2日目に取り返せるようにしたい。英和に入りたいと思っているお嬢さんにとって、壁が高くならないようにしたいと思っています。
10番のような難しい問題に直面したら、どうすればいいのでしょうか。
塩田先生 何かに当てはめようとするのではなく、何だろうと考えて、自分なりの発想で糸口をつかみとってほしいですね。そのためにはかいて、調べて、その中から法則や約束を自分で探し当てることが大切だと思います。完全解答をした受験生の解答用紙を見ても、平方数を書いて、だめなものは消すという方法で、確実に吟味し尽くされていました。

東洋英和女学院中学部/先生
インタビュー1/3