シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

共立女子中学校

2014年09月掲載

共立女子中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.読書ノートの添削などで「書く力」を徹底指導

インタビュー2/3

入試では本文中の論旨を正確に読み取る力を試す

米津先生 入試では、本文中に書かれていることをきちんと読み取り、論理的に考える力を重視しています。中には「このテーマならこの結論にたどり着く」とパターン化した読解が見られます。環境問題がテーマの場合、リサイクルを取り上げると「リサイクルを推進しなければならない」という論旨に持っていこうとする傾向があります。ですからあえて「リサイクルにはこんな問題点がある」というアンチテーゼを唱えるような文章を出して、「なぜ問題なのか」を考えさせます。

先入観で判断したり、自分の型に無理矢理はめようとしては正確な読解はできません。持っている知識をただ出すのではなく、本文中の論旨を正確に読み取る力を試す出題を心がけています。

したがって読解の文章選択肢には、受験生が思い込みで判断しそうな、本文中にはない情報を加えた選択肢をあえて入れて、厳密な読み取りができているかどうかを見ます。自分がどう思うかではなく、著者や登場人物の考えを客観的にとらえることが大事です。

文章選択肢は5択ですが、すべてが判断に迷う際どい選択肢というわけではありません。絞り込んだ選択肢について、再度本文に立ち返って読むと正解を選べると思います。

国語科/米津先生

国語科/米津先生

詩は言葉が少ない分、類推力が求められる

小説や説明文だけでなく詩も出題されていますね。詩は言葉が少ない分、類推の度合いが高く、嫌がる子どもが少なくありません。

米津先生 本校ではいろいろなジャンルで読解力を試しています。

本校の生徒を見ると短詩型文学は結構人気があります。自分で俳句を作って見せてくれる生徒もいます。授業で自分の好きな歌詞を短歌にリメイクすることもあります。歌詞のどのフレーズを取り上げるか、自分の思いとフィットする言葉をどう紡ぐか、おもしろがって取り組んでいます。

高校ではそれまでの創作経験を活かすような課題を出します。教科書に載っている和歌の返歌を創作するとなかなか色っぽい和歌を作る生徒がいます。クラスで品評会をすると教員の作品より生徒の作品の方が評価が高いことも珍しくありません。

スモールステップをクリアしていく

表現力など、選択問題では計れない力を記述問題で試すことは考えていますか。

米津先生 記述の出題は考えていません。本校は入学後、表現指導に大変力を入れており、その指導には自信を持っています。正確に物事を読み取れる論理的思考力があれば、表現力については入学後にしっかり鍛えます。

入学後は、自分の考えを発信するための言語技術の獲得を目指します。「書く」表現指導の1つが、「読書ノート」です。毎月1冊以上の感想文を書いて提出、添削しています。1冊につき400字ですが、400字にまとめるのは結構難しいものです。ですから読書ノートではまとめる力を要求しています。

添削は生徒一人ひとりに合わせた指導を徹底しています。指定字数を埋めるので精一杯という生徒には、ワンステップずつクリアしていくように指導します。「字を丁寧に書きましょう」「漢字を使って書きましょう」といった初歩的なことから、「書き出しにこういうことを書きましょう」「段落構成を3つにしましょう」「最後にはこのようなことを書いて締めくくりましょう」など、具体的にアドバイスします。スモールステップを確実にクリアすることで、書く力をつけていきます。

共立女子中学校

共立女子中学校

読書感想文は主題の読み取りや構成力などを総合的に評価

米津先生 読書ノートの感想文とは別に、8月に読書感想文を課します。これは各自添削、評価し、最終的に各学年の1位〜3位を決めて、10月の校内読書感想文コンクールで1位の生徒がみんなの前で感想文を朗読します。模範の感想文を3学年揃って聞くことも教育の一環だからです。上位3名の感想文は年末発行の文集に掲載します。

読書感想文の評価は、主に論理的説明力や、図書の主題の読み取り、内容の読み込みの深さ、表現の工夫などを総合的に見ます。単にストーリーの順番を追って書くのではなく、どのように伝えればわかりやすいか構成力も問われます。書き出しのインパクトや引用の使い方、たたみかけるような表現にするのか、一歩引いた表現にするのか、自分が言いたいことに適した表現を選ぶことができているかも見ます。

読書感想文の郵送はその旨の手紙も添えて提出

米津先生 読書感想文はペン書きで清書します。字の美しさ、丁寧さも評価の対象です。夏休み中に郵送で提出するため、その旨の手紙も同封します。そのため夏休み前に手紙の書き方も指導します。最近は手書きの手紙を書く機会がなかなかありませんが、そうしたことがきちんとできる大人になってもらいたいと思っています。

6月の課題作文はテーマを設定することが多く、今年の中1は「説得作文」に取り組みました。自分が好きなことに対して否定的な相手に、その魅力を伝えて説得できるように、反論に対して反論で返せる材料を見つけてまとめます。その際、論理的に説得できるように文章の「型」を教えます。1月の課題作文は、自分の1年間の成長を振り返る自由作文です。このように中学では年3回、作文の課題に取り組んでいます。

共立女子中学校

共立女子中学校

インタビュー2/3

共立女子中学校
共立女子中学校1886(明治19)年、当時の先覚者たちが創立した共立女子職業学校が前身。2006(平成18)年に高等学校からの生徒募集を停止、中高の校舎も一体化した新校舎となり、完全中高一貫校に。「女性の自立」という建学の精神と「誠実・勤勉・友愛」の校訓に基づき、どのような場所・場面においても輝き、翔ばたくことができる女性を育成。比較的生徒数が多いこともあり、学校生活は活気に満ちていて、行事もとても盛ん。
2期制・週6日制により、主要教科に対する十分な授業時間を確保。早期から将来のビジョンを描かせる啓発を行い、高校2年生から3つのコースを設定し、進路に応じて指導。完全一貫体制後の卒業生が2012年から出ていますが、その成果も特筆もの。併設大学の合格を得たまま他大学受験も可能で、併設大学・短期大学へは例年10~15%が進学。補習や補講などのバックアップ体制も整備。英語は『ニュー・トレジャー』STAGE1~5を使用し、実践的な英語力を養成します。
心の教育も重視し、「礼法」の授業は中学3年間必修。小笠原流の形を基本に、落ち着きのある美しい振る舞いとともに、思いやりや気配りを身につけます。主要教科以外も手を抜くことなく、本格的な授業内容となっており、美大・音大に進学する生徒も少なくありません。クラブではバトン、吹奏楽、音楽、ソフトテニスなどが強く、太極拳、能楽、弦楽合奏など珍しい部も。